最弱最強の破壊者

うらら

襲撃Part2

今日は体育祭当日。天気は快晴であり、気温も程よく暖かい。そんな中、グランドの校舎側で開会式が行われる。生徒会長の氷麻里先輩が綺麗な声で全校生徒に挨拶を告げる。
「今日は天候にも恵まれ、体育祭を無事開催できることを」
そこまで言いかけた時だった。ドゴーン!と爆発音が校門の方から響いた。それとともに、拡声器のようなものから、ある1人の男の声が聞こえてきた。
「やあ、ビクトリアの家畜諸君!俺は<カオ・オロール>の総帥、ライアン・カイザーだっ!お前らの体育祭を見学しに来てやったぜぇ?」
虫唾が走るようなその声は、ライアン・カイザーと名乗った。ライアンっ!俺の両親を奪った組織の主犯格っ!その名前を聞いた瞬間、俺の心にとてつもない怒りと憎しみが生まれた。遠くの方で銃声が聞こえ、爆発音もなっている。そんな時、来賓席にいた、うちの学園長である黒髪で短髪の美人、日向光(ひむかいひかり)が声を発した。
「みんな、落ち着いて!今、分かっていると思いますが、テロ組織が攻めてきています!ですが、私たちもそう易々と負けるわけにもいきません!そこで、私を含め、教員の人たちはテロの相手をします!ですから皆さんは魔法障壁を張りながら、講堂まで逃げてください!また、教育者がこのようなことを言うのはあってはならないことかもしれませんが、手を貸していただける生徒がいたら、私とともに来てください!」
と、述べた。それにより、逃げる生徒と、数人の残る生徒が出てきた。だが、俺は光の行動など待っていられる筈もなく、皆が集まる前に身体加速魔法をかけ、校門の方へ飛び出した。それに気づいた舞は、
「待って!いくらあんたが強いとはいえ、単独で乗り込むのは無茶よっ!」
と声をかけ、追いかけようとしたが、百合に止められ、舞は遠ざかる新九郎の背中を見ることしかできなかった。


誰よりも先に飛び出した新九郎は、校舎の方へ向かった。校舎側から沢山の銃声がしたため、とりあえず情報を得るべくそちらへ向かうのだ。多分校舎に残っていた教員がテロと戦っているのだろう。爆発音や銃声が鳴り止まない。まあ、そう簡単に教員がやられるとは考えにくい。なぜなら、教員は皆、ランクはA以上なのだから。
そして、校舎付近に着いた時、黒い仮面をつけて、黒い服に赤黒い二つの蛇の模様が入った集団を目にした。間違いない、<混沌の夜明けカオ・オロール>の模様である。そう確信した時、俺はこみ上げてくる怒りが抑えきれなくなり、右手に濃密な魔力のオーラをため、闘気に変えた。そして、
「穿てっ!ウロボロスっ!」
と言う声とともに正拳突きの要領で突き出した拳から放たれた闘気がドラゴンの形となり、前方のテロ組織の集団を飲み込んだ。集団を飲み込んだ後も威力が失われず、ドゴォォォォオォオンッ!と言う爆音と共に、校舎にぶつかったが、魔力障壁が幾重にも張っていたおかげで、校舎は壊れずに済んだ。一瞬にして吹き飛んだ構成員達を見て教員達も驚いていたが、教員達は皆俺の素性を知っているようで、俺を見ると合点がいったと言う顔をしていた。俺のウロボロスで大半の敵を消しとばしだが、数人がかすった程度で倒れていたため、その1人に駆け寄り、叩き起こし、胸ぐらを掴むと、
「おいっ!お前らのボスはどこにいるっ!吐けっ!」
と、怒りの口調で問いただした。しかし、構成員は、
「へっ!お前ごときに言うわけがないだろ!」
と吐き捨てるように言ったため、俺は構成員の足元の土に拳圧を飛ばし、地面を抉ると、
「ひぃ!わ、分かった、分かったよ!話すから!ライアン様は今、講堂に向かってらっしゃるっ!ほ、ほら、教えたから助けてくれよっ!」
と、簡単に教えてくれた。だが、俺はその構成員を助ける気はさらさらないため、
「分かった。だが、助ける?人の親を殺しておいて、自分は生き延びるのか?」
というと、構成員は半泣きで、
「ま、まま、待ってくれ!やったのは俺じゃない!他のやつだ!だから、俺は見逃してくれっ!」
と言った。だが、俺は何も言わずに闘気を込めた拳をふりかざそうとした。しかし当たる直前で、腕が凍ったのだ。
「新九郎君、殺してはいけません。その人は私が責任を持って警察に送ります。ですからどうか、殺さないでください。」
聞き覚えのある、優しい声がかけられ、それと同時に腕の氷が砕けた。振り向くと、生徒会長の東条氷麻里がそこにいた。
「ですが会長!こいつは、こいつらは俺の親をっ!」
「分かっています。でも、貴方には他にやることがあるのでしょう?ここは私に任せて、そちらに向かいなさい、ね?」
微笑みながら言われたため、返す言葉が見つからず、俺は手を離した。それと同時に、逃げようとした構成員だったが、氷麻里の氷の手錠によって、捕まった。それを見ていた他の構成員も逃げようとしたが、氷麻里は手元に魔力を貯めると、
氷獄コキュートス
と発するとともに、氷麻里の前方に氷の要塞ができ、中に凍った構成員達が閉じ込められていた。氷麻里が言う。
「私の能力は氷系最上級魔法<氷河の檻グラシエ・アルム>その中でも最強の拘束魔法、氷獄コキュートスを使用したため、囚われたものは絶対に出ては来られません。なので、安心して主犯格の元へ行ってください。それに、他にもいらっしゃるようですから。」
氷麻里が視線を向けた先にさっきまでの構成員とは違った黒い服装の男が2人立っていた。武器を持っていないことから多分能力者だろう。だが、氷麻里は堂々としていて、
「新九郎君、ここは私に任せて、貴方は貴方の決着をつけに行ってっ!」
そう新九郎に言ったのだった。俺はその言葉に、
「ありがとうございますっ!ではよろしくお願いします!ただ、死なないでくださいっ!」
というと、氷麻里は微笑みながら、
「大丈夫よ、私結構強いんだからっ。」
と述べたため、俺は「では」と一言述べると、その場を離れて、講堂へ向かった。早く行かないと集まった生徒も危ないため、さらに加速したのだった。その後ろから光の矢が飛んできたがその矢を氷の矢が撃ち落とし、
「貴方達の相手はこの私です。覚悟はよろしいでしょうか?」
と聞こえてきた。それと同時に、魔法のぶつかる音がしたが、俺は構わず講堂を目指したのだった。

〜襲撃Part3へ続く〜


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