最弱最強の破壊者

うらら

模擬戦Part2

「少しは攻撃したらどうなの?逃げてばかりではなくて?でも、驚いたわ。少量の力で作った炎とは言え、いとも簡単に捌くなんて。わかったわ、私は全力であなたを倒す。今までの相手とは強さが違うもの。敬意を込めて、全力で倒してあげる。」
「舞さんの攻撃が凄すぎて避けるが大変だよ。よくわかる、沢山の努力の賜物だってことが。でも、こっちもそう簡単にやられるわけにはいかないのでね。全力で来るなら、こっちも全力でやらせてもらうよ。」
再び対面して、構えた。
するとすぐに、舞の体から濃密な魔力のオーラが滲み出てきた。かなり本気で来るらしい。闘技場のガラスが壊れないか心配だが、あの魔力量から察するにかなりの大技を放つ気だろう。そんなことを考えてるうちに舞が言った。
「私の能力は炎系最上級魔法である<爆裂の業火エクスプローシブ・フレイム>よ。その中でも最上級の技、<滅びの炎ペアリッシュフレイム>はその名の通り滅びの炎。その余波でも受ければ灰燼と化すわっ!」
「待って待って!それ人に使う技じゃないよねっ?俺消えるよ?大丈夫?その技?」
と反論してみるが、舞には既に聞こえてはいなかった。流石にまずい。あれを相殺するには相当な力を使うなぁ、どうしよう。<ルシフェル>を使用しないのはもちろんのこと、それより少し弱いのでも、このガラスが壊れそうだ。だが、それくらいでないと相殺できないと思ったため、俺は仕方なく魔力を闘気に変換し、可視化できるように濃密にため、体に纏い始めた。これは<ルシフェル>の魔力を抑えたバージョン。<デビルズサーバント>。
身体能力の上昇はもちろん、対魔法や治癒なども備えた万能形態。これの攻撃性と対魔法性だけを特化させ、防御性と治癒性などを捨てたのが<ルシフェル>である。舞はドス黒い炎を鎧の形にし、身に纏い、ドス黒い炎の剣を2本作り出した。それに対峙するように俺は可視化できる闘気のオーラを鎧のように身に纏い、背中から2つのオーラが羽のように流れ出す。身体能力は普段の100倍はこえており、大抵の魔法は効かない。お互いに視線を交差させると同時に、二人とも消えた。そして爆音とともに二人の攻撃が交差する。俺は舞の剣を一撃で殴り壊すが、舞は構わず剣を作り攻撃する。そして、剣撃に混ぜてドス黒い火柱を俺の足元から生み出してきた。並の人間なら即死級である。俺がたまらず、
「いくらなんでも本気過ぎやしませんか?」
と震える声で言うと、舞が、
「うるさいっ!そんなこと言っても易々と避けるじゃない!」
と言いながらさらに攻撃を増してきた。
攻防がいくつか繰り返された後、舞が後ろに下がり距離をとった。明らかに遠距離攻撃の布石である。俺はそれを相殺するために、右手に濃密なオーラを込めて、ため始めた。舞が両手を前に出し、漆黒の業火の塊を2つ生み出しながら言った。
「これで終わりよ!本気を出すのはひさびさね。くらいなさいっ!サラマンダーイグニスっ!」
そう言うとともに、2つの業火が伸びて渦を巻き、莫大な熱量とともにこちらへ飛んできた。
俺は、
「終わるのはごめんだなっ!こちらも対抗策があるのでねっ!穿て、ウロボロスっ!」
そう叫ぶともに正拳突きの要領で突き出した右手から莫大な量の闘気がドラゴンの形となり、飛び出した。その直後、二人の攻撃がぶつかり、ドゴォォォォオォオンという爆音とともにお互いの攻撃がかき消え、それと同時に俺は飛び出し、舞との距離を一気に詰める。舞の顔の前に正拳突きを打ち出し、当たる直前で、寸止めした。だが、拳圧で闘技場の床と壁が吹き飛び、ドンっ!という風きり音が鳴り響いた。自分の本気の技をランクEの人間に相殺され、即死判定まで取られた舞は、信じられないという顔で、立ち尽くしたままだった。その直後、スピーカーから百合の声で「そこまで」と聞こえてきたため、俺は<デビルズサーバント>を解除した。


模擬戦が終わると我に帰った舞に話しかけられた。
「あなた本当にランクEなの?」
「俺はランクEだよ、本当に。」
俺は微笑みながら返答すると、
「私の<滅びの炎ペアリッシュフレイム>を纏った<サラマンダーイグニス>を正面から打ち破ったのはあなたが初めてよ。認めるわ。あなたは強い、他とは違う。でもそれほどの人がどうしてランクEなの?」
俺は少し悩んでから、答えた。
「うーん、本人の力量より、能力の強さを見られるからだよ、俺の師匠も言ってた。」
そういった後、俺は肝心なことを思い出して口にした。
「ところで舞さん、負けた時の条件は撤廃していただけるのでしょうか?」
「するわよ、私が負けたし。あと、これからは私のことを舞って呼び捨てで呼んで。私も新九郎って呼ぶから。」
意外なことに少し驚いたが、俺は断る理由もないため、
「うん、よろしく、舞!」
と返すと、舞は、
「よろしく、新九郎っ!」
と、嬉しそうに笑顔で返してきた。その笑顔には何が隠されているのか、よくわからないが、まぁ、よしとしよう。汚名も挽回出来たことだし!
舞と話していると、クラスの人たちが舞に話しかけていく。
「舞ちゃん、大丈夫?魔力の暴発でもしたの?」とか、
「ランクEの人に舞ちゃんが負けるわけないから、手を抜いたんでしょ?」などと。舞はそれらを否定したが、ランクEの人間にランクSの人間が負けるわけがないという概念が皆にあり、結論として俺がズルをしたということになったらしい。なんとも理不尽なことだ。ま、慣れてるから問題はないが。そんなやりとりをしながらみんなで教室に戻っていく。俺も戻ろうとした時、ニヤニヤしながら近づいてきた百合に止められた。
「流石に強いですなぁ、覗き魔くん?ランクSの相手の攻撃を相殺し、あまつさえ即死判定まで取るとは。やはり興味深い」
「待ってください、俺、覗き魔ではないんですが?」
「そうか?覗きが好きそうな顔してるぞ?」
「なんすかそれ ︎どんな顔ですかっ ︎」
「お前みたいな顔だよ」
そう笑いながら言うと、百合は教室に戻って言った。俺は急いでその後をついていったのだった。

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