異世界は現実だ!

竹華 彗美

昔の記憶で未来なのだ!

 第五章
 第93話、昔の記憶で未来なのだ!


「おい、クソあきら!帰ってきたなら挨拶ぐらいできねぇのか!おいこの扉開けろ!ぶっ殺すぞ!」
「……。」
「無視かよ!おい!フザケンナよ!ードン!
あれ?いねえじゃねえか。あいつこんな時間にも帰ってこねーとは。ふざけやがって!」

 父はあの日も酒を飲んでいた。ビール瓶三本。口の中だけではなく体の周りには酒の匂いを漂わせる。あの時は前日に暴力を不機嫌になった父から振るわれ帰らず公園の土管の中で過ごすつもりだった。
 ーだけど無理だった。父は公園に来て土管の中にいる僕を見つけ出した。なんでも学校のいじめっ子に電話したら土管の中に入るところを目撃されていたらしい。僕は土管の中から引っ張り出され、そのまま公園のトイレにひきずりこまれた。そのあとは"ごめんなさい"と500回言うまで汚いペンキに顔を突っ込まれながら腹や下半身を蹴られた。夜だから人も来ない。助けは来ない。そして言い終わった時にはもう声は枯れ立てない状況だった。日の出が始まり明るくなってきた時、家まで引きずられこう言われた。

「どこにも逃げるんじゃねーぞ!お前は俺のものなんだ。逃げたら死なない程度に毎日可愛がってやるよ。クソ野郎が!」

 そのあとも父からの暴力を受けた。その言葉はこの世界にきた今でも鮮明に覚えている。
 そして今、精鋭兵の会話を聞いてこの世界と父の言葉が重なったように思えた。あの時、あいつから僕は逃げられないと本気で思った。自由なんて無縁だった。そしてその全ての原因は"自信がなかった"ことだと僕は思う。あの時自信を持てれば父に抗えたのかもしれない、逃げることもできたかもしれない。今更の後悔だ。僕は最終的に自由など諦めて死ぬことを選んだ。自信がなかったから、生きている意味を見出せないから。自分の命を絶つことを決めた。
 この世界にきてから自信を持たなければ生きていけないことがわかる。と言うよりも自信を持って生きると言うことがどういうことなのかがわかってきた気がする。なんとも言えないこの気持ちを伝えようと無意識のうちに僕の足は動き精鋭兵たちのいる部屋に入っていた。

「あ!あきら様、先程はありがとうございました。色々学ばせて頂いてありがとうございます。魔族戦お願いします。」
「ああ。君たちは強くなれると思う。でも今のままでは上達はしない。ー今君たちには自信、自分の能力を信じきれていない。誰にだって得意・不得意はあるけど自分の能力を信じ、それを磨いてけば強く逞しくなれるんじゃないかな?親も見返すことができるんじゃないかな?自由になれるためのなにかも見えてくるんじゃないかな?ーそれが僕が今回君たちと戦っての助言です。」

『メンメル帝国の未来を支える子供達、頑張
れ!』


 

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