異世界は現実だ!

竹華 彗美

フルカス戦⑤で死の恐怖なのだ!

 第3章
 第64話、フルカス戦⑤で死の恐怖なのだ!


「あきらくん……やめてください、一人で……行かないで……ください。」
「カルナさん?大丈夫ですか?」
「わ、私の指示を聞いて、く、ください。」

 カルナさんは小さな声であきらが戦っている姿を見ながらそう言う。メリダルさんとアドメラさんはバリルさんが倒れていてカルナさんが呟く横で悲しみと怒りをあらわにしながらも膝をガクガクさせて立っていた。この二人もまた死が怖い。怒りよりもそちらの方が勝っていた。
 アドメラさんは五百年前、エルフ領での魔族侵入の際見学のような形ではあったが戦っている大人たちが何人も死んで行くところを目の当たりにしていた。それが今少し歳をとり魔族を倒すパーティーに入った。オファーが来た時正直嬉しかった。自分も魔族を倒せる時が来たんだと。忘れていたわけではなかった。でも脳の片隅にあった記憶が今、目の前で再現されてしまった。もしかしたら一歩間違えていれば自分も死んでいたかもしれない。そう思うと戦えなかった。
 メリダルさんは冒険者の時も現在の軍にいる時にも一回も同じパーティーや同じ隊で他者に殺される姿に遭遇しなかった。死など覚悟してるなど自分勝手な妄想だったのだと気づいた。斬撃の雨が降って来て必死に逃げた。横にいた、バリルさんも一緒に逃げていた。バリルさんが声をあげた。悲鳴のようなものだった。それを聞きメリダルさんは横を振り向いた。しかしもうそこにはバリルさんの姿をなかった。少し後ろを見てみる。すると砂埃の中、手を必死に伸ばしているバリルさんの姿があった。自分がもし数ミリ違っていれば死んでいただろう。そう思うと足が震えてしょうがなかった。怖くてしょうがなかった。目線を少し上に向ければあきらが戦っている。その姿を見て自分がとても情けなく感じられた。自分よりも若い子が戦う姿を見てとても惨めだった。

「もう、鬱陶しいの〜!ちょっと黙らんか!!」

 そうフルカスは言うとあきらが剣を槍にぶつけた後、あきらの剣を受け止め、後ろに吹き飛ばした。
 あきらは自分に"ライズグラビティ"を少しかけフルカスから十五メートル程度離れたところで地に足をつける。

「何回もうざったらしいわい!少しそこで黙っておれ!お前はたしかに人間とは思えん力を持っているのー。でもそれではまだわしには勝てんわ!何度切りつけてもな!!」
「うるさい!!お前は絶対許さない!殺してやる!」
「そうかそうか。お前はそう強く思っているらしい。しかしあちらの三人はさっきから固まったままじゃなー?……フフフ。いいこと考えたぞ!」

 そうフルカスは言うとその場からカルナさんたちの方向にジャンプした。そしてまたあの雨を降らそうとしていた。あきらはフルカスがジャンプしようとした時、止めに入ろうとしたが速度に追いつけなかったのだ。
 フルカスはカルナさんの上空で止まり槍を構える。その時の三人はフルカスを見てその場から離れなければと頭では思ったが体が動いてはくれず、フルカスはニヤッと笑うと槍を何回もカルナさんたちの方向に振り落とし斬撃の雨を降らせ始めていた。

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