治療説明で優しいのだ！

　第三章
　第41話、治療説明で優しいのだ！

　男性は自己紹介を終えると僕の頭に向けて魔法を発動させる。

「まだ睡眠が必要だからね〜！強制的にでも寝てもらうよ！＂スリープアウト＂。」

　その言葉を最後に僕はまた暗闇の中に入っていった。

ーーー

「うん！完治したようだね。じゃあ解除するとしよう。マジックキャンセル。」

　僕は目を開けた。眩しいな〜。からだを動かす。手を足を首を。首を右横に向けると若い男性が立っていた。あれ？この人どっかで。

「あなたは誰ですか？」
「ああ〜やっぱりそうか〜！」
「何がそうなんじゃ？」

　左横を見るとガガさんが椅子に座っている。ガガさん生きてたんだなー。ピンピンじゃないか！

「ん？ああ。スリープアウトをかけるとかける前の数分の間の記憶がなくなる場合があるんです。それが今回起こっただけです。」
「なんじゃと！？なぜそんな魔法かけたんじゃ！わしの名前覚えてるか？あきらよ？」
「ガガさんですよね。」
「覚えとった。良かったわ。これでわしの記憶まで飛んでたらお前を殺していたわ！わしの気に入った子だからの〜。」
「怖いこと言わないでください！まあガガさんは僕は殺せまんけど。」
「なんじゃと？今この場で試しても……」
「バインド。口封じ、待機！」

　その魔法を言われた瞬間ガガさんは止まり、何も喋らなくなった。

「もうこうなるとうるさいんです。なので少し拘束しました。やっとこれでお話ができますね。僕の名前はアバット。あなたの体の完全な治療をしました。あなた、いやあきらくんはとても危ない状態でした。ガガさんから聞きましたがあきらくんはここに来る前に、強魔族と戦ったらしいですね。その時はヒールなどで回復したのでしょうがヒールなどの回復魔法は形だけの魔法であって完全な回復にはならない。だから今までの傷が蓄積した上での今回のガガさんとの模擬戦闘。本当に危ない状態でした。僕がたまたまこの町に来てなくてガガさんがポーションだけで回復させていたのなら、あなたはもうこの世にはいなかったでしょう。脅しではありません。でももう大丈夫です。今までの傷はふさぎましたから。で、謝らなければいけないことが一つ。睡眠魔法をかける時あきらくんに一番合う詠唱が見つからず一応のものでやってしまって、一部記憶が欠陥してるかもしれませんが二、三日すれば戻ると思うのでそこだけは謝っておこうと思います。」
「いえいえありがとうこざいます！僕の治療を完全に行ってくれて感謝します。ありがとうございました！」
「うん、ちゃんと喋れるね。良かった、良かった。」

　アバットさんは真剣な顔で説明した後は僕の無事を本気で喜んでくれていた。優しい人だと確信した。
　僕はひとつ顔を見て気になっていたことがあった。言っていいものかと思って顔を見つめているとアバットさんから話しはじめた。

「あ、ああ。僕の顔を眺めてるからなんだと思えばこの耳ですか？」
「ええ、まあ。」
「この地域では珍しいですからね。そう御察しの通り僕はエルフ族です！耳がとんがって長いのが特徴ですね。あきらくんはエルフを見るのが初めてなのかな？」
「はい！」

　僕は大きな声で返事してしまった。だって異世界といえばエルフじゃん！エルフってやっぱいるんだ！
　僕は一人興奮の渦に飲み込まれていた。

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