300年 吸血 鬼ごっこ
第20話 〜守ってくれるんでしょ?〜
ロンドミゲルとの恐らく最後の戦場となるスタジアムは、石化した何もかもが音を跳ね返し尚静まり返る。そのフィールド上には私を含めた四人が突っ立っている。
変異体なんだか真の姿なんだかは良く分からないけど、揺れる蛇髪をヴォルフに向けるロンドミゲルはいつまでも不気味な笑顔を浮かべている。正直気持ち悪い。
スタジアムの観客席からは私は銃口を向け、正反対の席では香恋が鉄杭金属バットを構えている。
因みに言うと、二度も吹き飛ばされたヴォルフは私の血の補給をしても大ダメージで、私と香恋は走り過ぎてスタミナ切れ寸前にもなった。対するロンドミゲルは銃撃隊から受けた擦り傷などが結構目立つけど、息を荒くしてもいない。余裕そうだ。
そんな余裕な表情されたらかなり絶望しそうになるからやめて欲しい。
ヴォルフの攻撃が完全に当たらない限りロンドミゲルを倒す事は不可能だ。その為には私が残り四発の弾を正確に当てる、又はそれで気を散らせなければならない。超むずいぞ。
ん? 何で五発あった筈なのに四発かって? それは練習に使ったからだよ。何してんだ私。
「やたらと真剣っぽいけど、これが最終決戦なのかな?」
「僕はそのつもりだよ。お前が死ぬか、僕らが死ぬかの二択だ!」
「良いねぇ、死ぬか生きるか……楽しそう」
死の恐怖すら感じない、むしろ楽しみと取れるなんてやっぱりアイツいかれてる。人間も狂ったならああなるかも知れないけど、精神が安定してるならあんなのあり得ないな。
思ったんだけど私が偶に撃ってヴォルフが戦うんだとしたら香恋は何やるの? バット構えて居るだけ? まあ自分守ってくれればそれで良いけどさ。
問題はアイツが普通の吸血鬼達と同様に死んでくれるかどうかなんだよな。不安だ。
「僕の可愛い可愛い蛇達が早く君達の首に噛みつきたいんだって。だからもう、始めよう?」
「お前の事情なんて知らないけど、僕らは絶対にやられない。蛇に言っときな、飲むならママのおっぱい飲んどけって!」
「エッチ〜」
「…………」
ロンドミゲルのノリは普通……ではないけど人間でもいる感じだよな。だから人間ならもっともっと、マシに学校生活過ごせた筈なのに。
空は曇り、太陽なんか少しも見えない。光なんか一筋も入り込む隙間も無い。だからサングラスは見えにくい、つまり不利。だけどそんなのずっとだよ。私は人間でヴォルフは吸血鬼……私達がやって来たのはいつも不利な鬼ごっこだった。だから今回も、今度は追う側でロンドミゲルを仕留めるだけだ。
300年の時を経て、間違った吸血鬼をルールを改変するんだ。終わりにするぞ。
「「「行くぞ!!」」」
ノリ悪いな香恋、お前も言えよ。
まずはヴォルフとロンドミゲルの攻防で、これは前回と全く同じ。蛇の量でヴォルフが押され気味になる。
私の仕事は一瞬、瞬きをする暇も無い程一瞬の隙を狙うこと。その隙は、蛇が一列に並ぶ時。
そんな時が来るのかどうかって言われたら、確証は無いけど多分来る。あんな休み無く連打し続けてたらいつかほんの一瞬だけ一列になる筈だ。その時を見た瞬間じゃなくて計算して撃つ。だからそれまで動きを確認するんだ。クソ難しいぞ。
皆忘れてるかも知れないけど、私の特殊能力は『匂いを記憶すること』と『視覚的絶対記憶』で、とにかく一度見れれば忘れない。
その二つを組み合わせて集中すればその瞬間を計算して見極められるんだ。ただ、問題は私の銃の腕前かな。さっき下手くそだったの。
ヴォルフの突きを蛇で受け流して、翼でガードして、その隙に腹部にパンチ。そして崩しかかる様に蛇と拳の連打。
連打がバラバラに続くのは永遠じゃない。リズムが整い始めた、その瞬間────
「今だああああいっけぇえええ!!!」
「あっ……」
完全横一列とはいかなかったけど、殆どの蛇が揃った瞬間を逃さず放たれた弾丸は、蛇達を散らしロンドミゲルに弱々しい声を出させた。
蛇がやられたショックからなのか、ダメージからなのか分からないが、よろめいたロンドミゲルをヴォルフが執拗に殴り続ける。
これならいける!
「ヴォルフ! 爪だ!!」
「分かってる!!」
ヴォルフの吸血爪がロンドミゲルの心臓部を突き刺す。これならもう、あとは血を吸い尽くされて死ぬだけだ! 死ぬだけの、筈だ。
だけどロンドミゲルは、死ななかった。
「うふふふ……ふふふ。凌菜ちゃん、痛いなぁ、痛いなぁって、言ってるよ? 僕の蛇達がさ」
「嘘だろ……!?」
ヴォルフを爪ごと引き剥がしたロンドミゲルは、覚束ない足取りでゆらりと私に向かってくる。消えた蛇は復活はしないものの三匹残ってしまっている。下手したのか、成功なのかは分からないけど恐らく──限りなく失敗に近いと思う。
たった数分だったけど、練りに練った作戦が効かなかった。それどころか怒らせた。
私は、どうしたらいい?
「凌菜さん逃げて!」
「ちっ……!」
逃げようとは思ったんだけど、殺意を剥き出しにしたロンドミゲルから逃げ切れる気がしない。それどころかこのままスタジアムを駆け回ったら香恋の近くも通る事になる。それじゃダメだ。
ヴォルフは壁に叩きつけられたけど大丈夫かな。まあ人間と違って脆くないから大丈夫だとは思うけどさ。
そうこう考えてる内に、ロンドミゲルは私の二、三席前の椅子に立っている。
グリーンの瞳が曇りながら充血している。あんな明るめの話し方をする奴でもこんな恐ろしい顔になれるもんなんだな。
「凌菜ちゃん、血は要らないから──死んでよ」
「おわぁっ!?」
2メートルを超える翼の羽ばたきで後方のフェンスに激突。超いってぇんだけど。
思い切り足首捻っちったから歩けないし、ロンドミゲルは近づいて来るしで絶対絶命じゃねぇか。
最後の抵抗のつもりで二発撃ってみたけど、羽で弾かれ一つは軽く避けられた。通じねぇな本当。
「凌菜さん!!」
近づく掌に怯えながらも、私は生と死の境で出会ったミルフィの言葉を思い出していた。
『貴女は一人じゃないのよ? 助けが欲しければ願えばいい、祈ればいい、呼べば良いんじゃない。きっと助けてくれるわ』
今、何でこんなセリフを思い出す? 助けが欲しいから? でも私を助けられる奴なんて何処にいるの? もしかしてミルフィの言う悪魔様にでも頼めば良いの? もうやられてんだけど。
呼べば助けてくれるんだったら、私幸せ者だよね。本当、何を暫く我が儘になっていたんだか……呆れてくるよね。
そうだよ、助けて欲しいんだ。だから願えばいい、祈ればいい、呼べば良いんだ。そうしたらアイツが助けてくれるんだからな。
間違えて消しちゃったので内容変更です(泣)倍の文字書いてたのに(泣)
何を願う? 『助けてほしい』。何を祈る? 『皆を助けたい』。誰を呼ぶ? 一人だけだ。
「ヴォルフ……」
「ん? どうしたの凌菜ちゃん。気を失ったのかと思ってたぁ」
「私を……守ってくれるんでしょ?」
「もちろん!!」
「……!!」
音速で飛行したヴォルフはロンドミゲルの残りの蛇を切り落とし、翼を切り裂いた。
やっぱり来てくれた。私の前世は嘘をつかない奴だったよ、ありがとう。
「ううぅ……!! 邪魔だよヴォルフ君!!」
「えっ!」
ロンドミゲルの姿は怪物、人間とは言えない姿に変化していっている。蛇で全身を覆われた何か。
「ああああ!!」
「ぐっ……!!」
真の姿同士で激突する二人はやはりロンドミゲルに分があるようだ。ロンドミゲルの体格は先程までの三倍ほどで、ヴォルフのひと回り大きい。このままじゃ力負けする。
なら、私がやるしかないな。私が今度はヴォルフを助けるんだ!
踏ん張り、立ち上がった私は前回終盤で偶然拾った石化していない鏡の破片を向ける。
「こっちだ! もう終わりだ化け物が!!」
「ええ!?」
「だからおめぇじゃねーよ」
何で最後の最後までふざけてねぇといらんねぇの!? お前!? 私が折角主人公っぽく決めようとしてたのによ!? 何の話してんだ私は。はい、ふざけました。
「ふんっ!」
「おらぁっ!!!」
こういう時漫画とかなら映った自分を見て自分が石化して行くんだけど、そう簡単にはいかないか!? これしか手がねぇ!
漫画のようになるのは、正解だったみたいだ。
ロンドミゲルの身体は見る見るうちに石化していっている。最期まで私の事を睨みつけながら。
そしてその私も動けずにいた。何せ目を見ちゃったからね。
心配してくれてる二人には悪いけど、私は暫くの間眠りに就きますわ。ごめんねおやすみ。
私の視界はここまでで途切れ、再び瞳を開けると何処かしらの部屋の天井が見えた。ここは多分病院だと思う。背中痛めたから連れて来てくれたんだろうね。
それで解ったのは、ロンドミゲルは死んだって事だ。ヴォルフか香恋か、とにかくあの二人がやってくれたんだろう。ありがとう。
その言葉を伝えるなら、心の内ではなくて本人達に直接言いに行く方が良いと思う。だから病院内を捜したけど二人は居なかった。
まあ香恋は今回大した怪我をしてないし病院内にはいる訳ないか。ヴォルフも吸血鬼が入院なんて出来るわけないしな。
病院内の人の話を聞く限り、皆何があったのか分かってないみたいだ。気付く暇も無く石にされてたんだもんな。仕方ないよ。
つまり変わった事は何一つ無くて……あ、あったわ。建物何箇所か思い切りぶっ壊れてる。
それよりどうしようなぁ、アイツら何処に居るんだろうな。病院出ようとしたら看護師に止められたし。そりゃそうだわな、入院中だもん。
入院中と言えば、怪我か病気とかだろうな? SPの人達とかは入院してなさそうだけど大丈夫なのかな。
あ! そうだそうだ。メールしてみよう、アイツらに。この手があったわ。
メールで何処にいるのか聞いたら、香恋は家で休憩やSP達の手当て、ヴォルフは自分の故郷へテレポートで向かっているとの事。なるほど。
でもヴォルフ、急に何で故郷に行ったんだ?
────ヴォルフの故郷は、300年の時を経て全壊したガラクタの街から人で賑わう農作物豊かな地と変化していた。
「王女ミルフィ、貴女の生まれ変わりである凌菜さんを狙う吸血鬼は、これからもまだまだ襲って来るでしょう」
ミルフィの墓はヴォルフ達貴族吸血鬼達の城跡に残されているが、それはヴォルフが移動させた為だった。
ヴォルフが心より愛し、心から求めた血は今や別の人間へと受け継がれた。もう、未練も何も無くなったのだ。
愛する人も全てを、忘れるように彼はその墓を後にした。
「どんな事が起きても、僕は彼女を最期まで守り抜きます」
どうも☆夢愛です!
いやぁ、途中まさか通信エラーが出て2000文字分消えてしまうとは思いませんでしたはい。絶望しましたはい。
今回は4,500文字くらいでしたが、お楽しみいただけたでしょうか?
このストーリーも残り僅かとなりました。私の初の小説なので勝手が分かりませんでしたが、本当自分的には好きな作品なので楽しかったです。
皆様、最後までお付き合い下さいませ!
完結カウントダウン!【3】
変異体なんだか真の姿なんだかは良く分からないけど、揺れる蛇髪をヴォルフに向けるロンドミゲルはいつまでも不気味な笑顔を浮かべている。正直気持ち悪い。
スタジアムの観客席からは私は銃口を向け、正反対の席では香恋が鉄杭金属バットを構えている。
因みに言うと、二度も吹き飛ばされたヴォルフは私の血の補給をしても大ダメージで、私と香恋は走り過ぎてスタミナ切れ寸前にもなった。対するロンドミゲルは銃撃隊から受けた擦り傷などが結構目立つけど、息を荒くしてもいない。余裕そうだ。
そんな余裕な表情されたらかなり絶望しそうになるからやめて欲しい。
ヴォルフの攻撃が完全に当たらない限りロンドミゲルを倒す事は不可能だ。その為には私が残り四発の弾を正確に当てる、又はそれで気を散らせなければならない。超むずいぞ。
ん? 何で五発あった筈なのに四発かって? それは練習に使ったからだよ。何してんだ私。
「やたらと真剣っぽいけど、これが最終決戦なのかな?」
「僕はそのつもりだよ。お前が死ぬか、僕らが死ぬかの二択だ!」
「良いねぇ、死ぬか生きるか……楽しそう」
死の恐怖すら感じない、むしろ楽しみと取れるなんてやっぱりアイツいかれてる。人間も狂ったならああなるかも知れないけど、精神が安定してるならあんなのあり得ないな。
思ったんだけど私が偶に撃ってヴォルフが戦うんだとしたら香恋は何やるの? バット構えて居るだけ? まあ自分守ってくれればそれで良いけどさ。
問題はアイツが普通の吸血鬼達と同様に死んでくれるかどうかなんだよな。不安だ。
「僕の可愛い可愛い蛇達が早く君達の首に噛みつきたいんだって。だからもう、始めよう?」
「お前の事情なんて知らないけど、僕らは絶対にやられない。蛇に言っときな、飲むならママのおっぱい飲んどけって!」
「エッチ〜」
「…………」
ロンドミゲルのノリは普通……ではないけど人間でもいる感じだよな。だから人間ならもっともっと、マシに学校生活過ごせた筈なのに。
空は曇り、太陽なんか少しも見えない。光なんか一筋も入り込む隙間も無い。だからサングラスは見えにくい、つまり不利。だけどそんなのずっとだよ。私は人間でヴォルフは吸血鬼……私達がやって来たのはいつも不利な鬼ごっこだった。だから今回も、今度は追う側でロンドミゲルを仕留めるだけだ。
300年の時を経て、間違った吸血鬼をルールを改変するんだ。終わりにするぞ。
「「「行くぞ!!」」」
ノリ悪いな香恋、お前も言えよ。
まずはヴォルフとロンドミゲルの攻防で、これは前回と全く同じ。蛇の量でヴォルフが押され気味になる。
私の仕事は一瞬、瞬きをする暇も無い程一瞬の隙を狙うこと。その隙は、蛇が一列に並ぶ時。
そんな時が来るのかどうかって言われたら、確証は無いけど多分来る。あんな休み無く連打し続けてたらいつかほんの一瞬だけ一列になる筈だ。その時を見た瞬間じゃなくて計算して撃つ。だからそれまで動きを確認するんだ。クソ難しいぞ。
皆忘れてるかも知れないけど、私の特殊能力は『匂いを記憶すること』と『視覚的絶対記憶』で、とにかく一度見れれば忘れない。
その二つを組み合わせて集中すればその瞬間を計算して見極められるんだ。ただ、問題は私の銃の腕前かな。さっき下手くそだったの。
ヴォルフの突きを蛇で受け流して、翼でガードして、その隙に腹部にパンチ。そして崩しかかる様に蛇と拳の連打。
連打がバラバラに続くのは永遠じゃない。リズムが整い始めた、その瞬間────
「今だああああいっけぇえええ!!!」
「あっ……」
完全横一列とはいかなかったけど、殆どの蛇が揃った瞬間を逃さず放たれた弾丸は、蛇達を散らしロンドミゲルに弱々しい声を出させた。
蛇がやられたショックからなのか、ダメージからなのか分からないが、よろめいたロンドミゲルをヴォルフが執拗に殴り続ける。
これならいける!
「ヴォルフ! 爪だ!!」
「分かってる!!」
ヴォルフの吸血爪がロンドミゲルの心臓部を突き刺す。これならもう、あとは血を吸い尽くされて死ぬだけだ! 死ぬだけの、筈だ。
だけどロンドミゲルは、死ななかった。
「うふふふ……ふふふ。凌菜ちゃん、痛いなぁ、痛いなぁって、言ってるよ? 僕の蛇達がさ」
「嘘だろ……!?」
ヴォルフを爪ごと引き剥がしたロンドミゲルは、覚束ない足取りでゆらりと私に向かってくる。消えた蛇は復活はしないものの三匹残ってしまっている。下手したのか、成功なのかは分からないけど恐らく──限りなく失敗に近いと思う。
たった数分だったけど、練りに練った作戦が効かなかった。それどころか怒らせた。
私は、どうしたらいい?
「凌菜さん逃げて!」
「ちっ……!」
逃げようとは思ったんだけど、殺意を剥き出しにしたロンドミゲルから逃げ切れる気がしない。それどころかこのままスタジアムを駆け回ったら香恋の近くも通る事になる。それじゃダメだ。
ヴォルフは壁に叩きつけられたけど大丈夫かな。まあ人間と違って脆くないから大丈夫だとは思うけどさ。
そうこう考えてる内に、ロンドミゲルは私の二、三席前の椅子に立っている。
グリーンの瞳が曇りながら充血している。あんな明るめの話し方をする奴でもこんな恐ろしい顔になれるもんなんだな。
「凌菜ちゃん、血は要らないから──死んでよ」
「おわぁっ!?」
2メートルを超える翼の羽ばたきで後方のフェンスに激突。超いってぇんだけど。
思い切り足首捻っちったから歩けないし、ロンドミゲルは近づいて来るしで絶対絶命じゃねぇか。
最後の抵抗のつもりで二発撃ってみたけど、羽で弾かれ一つは軽く避けられた。通じねぇな本当。
「凌菜さん!!」
近づく掌に怯えながらも、私は生と死の境で出会ったミルフィの言葉を思い出していた。
『貴女は一人じゃないのよ? 助けが欲しければ願えばいい、祈ればいい、呼べば良いんじゃない。きっと助けてくれるわ』
今、何でこんなセリフを思い出す? 助けが欲しいから? でも私を助けられる奴なんて何処にいるの? もしかしてミルフィの言う悪魔様にでも頼めば良いの? もうやられてんだけど。
呼べば助けてくれるんだったら、私幸せ者だよね。本当、何を暫く我が儘になっていたんだか……呆れてくるよね。
そうだよ、助けて欲しいんだ。だから願えばいい、祈ればいい、呼べば良いんだ。そうしたらアイツが助けてくれるんだからな。
間違えて消しちゃったので内容変更です(泣)倍の文字書いてたのに(泣)
何を願う? 『助けてほしい』。何を祈る? 『皆を助けたい』。誰を呼ぶ? 一人だけだ。
「ヴォルフ……」
「ん? どうしたの凌菜ちゃん。気を失ったのかと思ってたぁ」
「私を……守ってくれるんでしょ?」
「もちろん!!」
「……!!」
音速で飛行したヴォルフはロンドミゲルの残りの蛇を切り落とし、翼を切り裂いた。
やっぱり来てくれた。私の前世は嘘をつかない奴だったよ、ありがとう。
「ううぅ……!! 邪魔だよヴォルフ君!!」
「えっ!」
ロンドミゲルの姿は怪物、人間とは言えない姿に変化していっている。蛇で全身を覆われた何か。
「ああああ!!」
「ぐっ……!!」
真の姿同士で激突する二人はやはりロンドミゲルに分があるようだ。ロンドミゲルの体格は先程までの三倍ほどで、ヴォルフのひと回り大きい。このままじゃ力負けする。
なら、私がやるしかないな。私が今度はヴォルフを助けるんだ!
踏ん張り、立ち上がった私は前回終盤で偶然拾った石化していない鏡の破片を向ける。
「こっちだ! もう終わりだ化け物が!!」
「ええ!?」
「だからおめぇじゃねーよ」
何で最後の最後までふざけてねぇといらんねぇの!? お前!? 私が折角主人公っぽく決めようとしてたのによ!? 何の話してんだ私は。はい、ふざけました。
「ふんっ!」
「おらぁっ!!!」
こういう時漫画とかなら映った自分を見て自分が石化して行くんだけど、そう簡単にはいかないか!? これしか手がねぇ!
漫画のようになるのは、正解だったみたいだ。
ロンドミゲルの身体は見る見るうちに石化していっている。最期まで私の事を睨みつけながら。
そしてその私も動けずにいた。何せ目を見ちゃったからね。
心配してくれてる二人には悪いけど、私は暫くの間眠りに就きますわ。ごめんねおやすみ。
私の視界はここまでで途切れ、再び瞳を開けると何処かしらの部屋の天井が見えた。ここは多分病院だと思う。背中痛めたから連れて来てくれたんだろうね。
それで解ったのは、ロンドミゲルは死んだって事だ。ヴォルフか香恋か、とにかくあの二人がやってくれたんだろう。ありがとう。
その言葉を伝えるなら、心の内ではなくて本人達に直接言いに行く方が良いと思う。だから病院内を捜したけど二人は居なかった。
まあ香恋は今回大した怪我をしてないし病院内にはいる訳ないか。ヴォルフも吸血鬼が入院なんて出来るわけないしな。
病院内の人の話を聞く限り、皆何があったのか分かってないみたいだ。気付く暇も無く石にされてたんだもんな。仕方ないよ。
つまり変わった事は何一つ無くて……あ、あったわ。建物何箇所か思い切りぶっ壊れてる。
それよりどうしようなぁ、アイツら何処に居るんだろうな。病院出ようとしたら看護師に止められたし。そりゃそうだわな、入院中だもん。
入院中と言えば、怪我か病気とかだろうな? SPの人達とかは入院してなさそうだけど大丈夫なのかな。
あ! そうだそうだ。メールしてみよう、アイツらに。この手があったわ。
メールで何処にいるのか聞いたら、香恋は家で休憩やSP達の手当て、ヴォルフは自分の故郷へテレポートで向かっているとの事。なるほど。
でもヴォルフ、急に何で故郷に行ったんだ?
────ヴォルフの故郷は、300年の時を経て全壊したガラクタの街から人で賑わう農作物豊かな地と変化していた。
「王女ミルフィ、貴女の生まれ変わりである凌菜さんを狙う吸血鬼は、これからもまだまだ襲って来るでしょう」
ミルフィの墓はヴォルフ達貴族吸血鬼達の城跡に残されているが、それはヴォルフが移動させた為だった。
ヴォルフが心より愛し、心から求めた血は今や別の人間へと受け継がれた。もう、未練も何も無くなったのだ。
愛する人も全てを、忘れるように彼はその墓を後にした。
「どんな事が起きても、僕は彼女を最期まで守り抜きます」
どうも☆夢愛です!
いやぁ、途中まさか通信エラーが出て2000文字分消えてしまうとは思いませんでしたはい。絶望しましたはい。
今回は4,500文字くらいでしたが、お楽しみいただけたでしょうか?
このストーリーも残り僅かとなりました。私の初の小説なので勝手が分かりませんでしたが、本当自分的には好きな作品なので楽しかったです。
皆様、最後までお付き合い下さいませ!
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