300年 吸血 鬼ごっこ
第2話 〜変わってゆく日常〜
私は昨日のことを思い出し、ベッドから降りられもしなかった。
座れるけど、ここから出て行ったら再びアイツと会うことになるのが怖いんだ。
先日、300年の時を経て王女ミルフィの生まれ変わりである私を探しにこの町へやって来、私と同じ高校、クラスに転校して来た吸血鬼ヴォルフ。
昨日私は奴と『鬼ごっこ』をし、捕まり、血を1リットル分飲まれてしまった。頭がクラクラして、だるい感じがする。
人は体重の13分の1の血がなくなると死ぬらしいが、私の体重は51キロなため、1リットルじゃギリギリ死なない。
だが動ける気もしない……今日は学校休もうか……。
スマホの連絡アプリで幼馴染の近衛由奈に休むと報告し、ヴォルフが置いていった鉄剤などを不本意ながら口にした。
来週、またアイツは『鬼ごっこ』を始める。そして捕まればまた1リットルの血を飲まれる。 
そんなことを続けていたらいつか絶対に死ぬ。
頑張って血を増やさなきゃ何も出来ずにくたばっちまう。それは嫌だ。
少し休んだ後、私はベッドから降り着替えをして外に出た。
着替えたと言っても制服にではなく、外出用の服にだ。
 「血を増やさないと」
ふらつきながらも歩みを止めず薬局に向かう。
そこでなるべく多く血を増やすのに必要なモノを買い、家へ戻る……だが私は家付近で電柱の陰に隠れた。
ヴォルフ……アイツが居たんだ。
『何で家の前に……』
口を右側に釣り上げ、まるでニヤけているような表情で立ち尽くしていた奴は、呼び鈴を鳴らし始めたが私が居ないことに気づいたのか、腕組みをしながら自身の顎を手で触れる。
少し経つと急に悪魔のような笑顔となり、消えた。
テレポートをしたのだ。恐らく家の中へ。
2分ちょっと経つと、表情はなくなり、感情のないような冷たい目つきをしたヴォルフがテレポートをして出てきた。
居なかったからだろうが……私はただ恐ろしかった。
ひとまず安心、と思い、奴が完全に離れたことを確認し、出来るだけ物音を立てず家の中へ入っていく。
問題は私の体力と戦闘力だ。
肺が悪いが為、運動は殆どしたことなくて、体力がない。
応戦しながら逃げても……いや、応戦しないで逃げても私は1時間も逃げることが出来なく、詰むだろう。
恐らく奴はそれを分かっていてわざと遊んでいるんだと思う。
ホント、性根の腐った奴だ
そんなことを考えながらも、私は先日使用した杭付きバットを用意し、ノートにトラップなどの設定を描く。
そうこうして正午になった。
ブー、ブー
スマホがメール時の振動をしたので手を伸ばして取る。
由奈からのメールだった。
要件は、私の体調の心配だった。
 「優しい奴だな、相変わらず昔から」
私の微笑みも束の間、直後に自分の目を疑う衝撃的な文が送られて来た。
ーー今からヴォルフ君とお見舞い行くねーー
 「嘘だろ ︎ 何でアイツと来るんだよ…… ︎」
私が警戒するように言ったのも虚しく、幼馴染は体調不良の原因となる者を連れてくるらしい。
大方ヴォルフの方から見舞いに行きたいと言って、由奈は優しい人だとでも思いこんだのだろう……最悪だ。
私はノートをベッドの下に隠し、彼女達が来る前に部屋中を片付けた。
……正直ヴォルフを家に入れたくはないが、由奈には教えられないからな……我慢するしかない。
あ、また身体が震えてきた……。
数分程すると、烏が怒っているように怒鳴り叫びだした。この表現の仕方はおかしくないかな、まあいいや。
そして、いつもよりやや低音に感じるくらいの音で呼び鈴が鳴る。
 「りょーちゃーん、 お見舞い来たよー!」
とりあえずコイツは本当に頭が良いのか? 体調不良だと言ってるし近所迷惑なのも考える事なく大声で叫ぶ。
私の名前を。アホか。
恐る恐るドアを開けてみるとそこに居た色黒の男が扉を支える。
 「凌菜ちゃん、 大丈夫かい? お見舞いに来たよ」
白々しい上に名前で呼ばれて気色悪い。
そう思ってる事を気付かれないように
 「いらっしゃい」
と家の中へ入れる。バレたら即殺されるんじゃないかと思って。
部屋へ入ると、 由奈は急に立ち上がり、 お粥を作ってくると言い出した。
ヴォルフは料理は苦手と言い、部屋に居座る。
お前も行けよ、出来れば2人きりは嫌だった。
ヴォルフはいつもみたいな気味の悪い笑みではなく、子猫を愛でるような優しい微笑みでこちらを見てくる。
そして隣に座って何故か私の髪に触れる……キメェ。
 「お前、 よくのこのこと来れたな。 私が今お前から逃げたいと思ってる事なんて百も承知だろ?」
 「だとしたら来週、 必死に逃げ回ると良い」
とてつもなく腹が立つ。
『鬼ごっこ』で逃げろとさ、人の気も知らないで。
 「私が病弱なことくらい、 血ぃ飲んでんだからもう分かってんだろ。 お前はズルすぎる」
 「鬼ごっこにズルいも何もないさ。 それに君の血は、 例え身体が弱くても綺麗で美味だ」
吐き気がする。
絶対もう、どこも噛まれたくない、逃げたい、逃げ切りたい。てかもう帰れ変態。
ヴォルフは部屋の中を見渡し始めた。
もしかして私が用意したトラップなどに気付き始めたのか ︎ ヤバい……。
 「ど、どうかしたのかよ?」
思わず声が裏返る。
最悪な場面で気持ちを装えなかった、もうバレてんなこりゃ。
ため息をついた直後、私は彼の顔をチラ見すると、想像もしてないような台詞が聞こえてきた。
 「いやぁ、 ここが女の子の部屋かぁ。 うん、 良い匂いがする。 君みたいなコでも、 やっぱ縫いぐるみは好きなのかな?」
縫いぐるみのことは多分ベッドの上の兎の縫いぐるみを見て思ったんだろうが、その手前の言葉がキモすぎる。
何だよ良い匂いって……そもそも、匂いフェチの私が嫌な臭いがする物を置くわけがないだろ。
まあ、知らないか。
そんな事を考えていると、彼は私の首元、牙の刺した痕のあるところに顔を近付けて来た。
 「ひゃあっ!」
変な声が出てしまい、恥ずかしくて腕で顔を隠す。
……仕方ないじゃんか、首なんて舐められたらくすぐったいし……
でも昨日噛まれてる時は全然何も……あ、恐怖が勝ったのか。
ヴォルフは『はははっ』と笑ったあと、私達の後ろにあるベッドに寄りかかって少し真剣な表情をした。
 「でもまさか、 顔一緒なのが別人で生まれ変わりの方が病弱で……まるで2人に分かれたみたいだねぇ」
何の話……っていうのは何となくわかる、恐らく300年前にヴォルフが血をもらう約束をしたらしいミルフィのことだ。
やっぱり私じゃ全く似てないからショックなんだろうな……。
 「病弱なら、 一応由奈もだから、 どっちかって言うと由奈の方が近いと思うけどな」
私は何故か寂しい気持ちになり、体育座りをする。
すると隣のクソ吸血鬼は髪の毛の跳ねた私の頭に手を置き、優しく撫でてきた。
触んなよ。
 「根本的に違うさ。 彼女の前世はミルフィと繋がりは有っても彼女とは別、 君は直接彼女の後世として生きてるんだから」
 「まあ、 そのせいでお前に血ぃ抜かれてくんだけどな」
確かに、と笑うヴォルフを見てると何故だか私の心は安らぐ。
前世に出会ってるからなのだろうか、それは考えないようにして目を閉じた。
ヴォルフは頭を掻いて照れ臭そうにしながらこちらを覗いて顔を近づけてきた。
 「何だよ」
 「いやぁ、 僕さ? ミルフィの後世の女の子と出会えたら、 結ばれるつもりでいたんだ。 心も身体も……」
 「帰れ」
ちょっと気を許した瞬間何だこのケダモノは、バカなのか? いやもういっそゲテモノでいいやコイツなんか。
……でも300年もずっと待ってたんだもんな、そりゃちょっとくらい……って、何考えてんだ私は。 
私もゲテモノか、一緒はヤダな。
 「あ、 そうだ、 凌菜ちゃん髪の毛伸ばしなよ。 じゃなきゃ首元の傷、 見えちゃうよ?」
 「興味ないからいい」
口ではそう言ったが、確かに見られるのは色々嫌だな……バンソーコ貼っときゃいいか。
首元を気にしてる間にお粥を作り終えた由奈が部屋に戻ってきた。
良かった、見た目は全然普通だ、
うん、味も平気だ。よくある下手くそなやつじゃなくて良かった。
ふと気づくと、私の手からスプーンが消えていた。
右側を見ると、ヴォルフがスプーンにお粥を乗せ、スタンバイしていた。
もしかしてお前はアレか? アレがやりたいのか?
 「凌菜ちゃん、 はい、 あ〜ん♪ 」
あ、マジでそれか、嫌だな、人前でってのを除いても相手が吸血鬼ってのが特に。
でも、自分で持つのもソコソコ辛いんだよなぁ……仕方ない。
 「んっ」
私はヴォルフの持つスプーンを咥え、お粥を食べた。
 「……ん、 サンキュ」
何だろう、ヴォルフがキモい動きをしてる。
身体が震え顔を手の平で覆って悶えてる、キモ……。
 「はい、 もっと食べて」
 「もうヤダ。 お前キモいから」
そうやって断ると彼はこの世の終わりのような絶望した表情を見せた。
何なんだお前は本当に。
そのやり取りをしてる途中、スプーンを由奈が取り上げた。
 「りょーちゃん! はい!」
お前も『あーん』かよ、そんなに楽しいですか? 私は恥ずかしさがもう限界に近いんですが。
一回やっただけで、超照れるんですが?
 「自分でやるからいいし」
由奈からスプーンをとり、自分で食べ始めると、2人はまた絶望的な表情となってこちらを見てくる。
お前ら頭は大丈夫か?
食べ終えて由奈を見ると、あろうことか寝てやがった。
良かったな、授業サボれてよ。
……何やらお腹の辺りに違和感を感じる。
 「……っ ︎」
ヴォルフが私のパジャマの中に手を突っ込んで……寝てる。
お前らは私が食べ終わるまでそんなに退屈だったのか? 恥ずかしさより苛立ちの方が勝ったらしく、私は2人ははたいて起こした。
 「ん、 じゃあそろそろ僕らは戻らないとな」
 「もうすぐ授業終わるけどな」
 「え ︎ じゃあ行かなきゃ! またねりょーちゃん!」
 「いやだから今行っても意味ねーし」
私はそんなバカ2人を見送った。
今まで、そんなこともしなかったなぁ……て、いやいやいやいや、何でクソ吸血鬼とも親しくやってんだ私は。バカか ︎
……でも、元々有った恐怖心は消えていた。
こうやってまた私の日々は変わっていくんだろうな……。
 「いや、だから私の日常が狂っていってるのはあのクソ吸血鬼のせいだろーが」
自分にツッコミをいれた後、私は何となく首の傷をさすった。
 「これから大変そうだな……てかいつまで続けんだ? あのクソ変態」
ヴォルフのアダ名は、私の中で『クソ変態』となった。
第2話でした。読んでくれた方ありがとうございます。
えーと、 読んでいただいた方はわかるかも知れませんが、私はタイトルをつけるのが苦手でして、内容とあまり合っていないものが多いと思います。
『300年    吸血 鬼ごっこ』はまだまだ続きます。
引き続きよろしくお願い致します。
更新は時間があればですが、結構頻繁にしたいと思ってます、よろしくです。
☆夢愛
座れるけど、ここから出て行ったら再びアイツと会うことになるのが怖いんだ。
先日、300年の時を経て王女ミルフィの生まれ変わりである私を探しにこの町へやって来、私と同じ高校、クラスに転校して来た吸血鬼ヴォルフ。
昨日私は奴と『鬼ごっこ』をし、捕まり、血を1リットル分飲まれてしまった。頭がクラクラして、だるい感じがする。
人は体重の13分の1の血がなくなると死ぬらしいが、私の体重は51キロなため、1リットルじゃギリギリ死なない。
だが動ける気もしない……今日は学校休もうか……。
スマホの連絡アプリで幼馴染の近衛由奈に休むと報告し、ヴォルフが置いていった鉄剤などを不本意ながら口にした。
来週、またアイツは『鬼ごっこ』を始める。そして捕まればまた1リットルの血を飲まれる。 
そんなことを続けていたらいつか絶対に死ぬ。
頑張って血を増やさなきゃ何も出来ずにくたばっちまう。それは嫌だ。
少し休んだ後、私はベッドから降り着替えをして外に出た。
着替えたと言っても制服にではなく、外出用の服にだ。
 「血を増やさないと」
ふらつきながらも歩みを止めず薬局に向かう。
そこでなるべく多く血を増やすのに必要なモノを買い、家へ戻る……だが私は家付近で電柱の陰に隠れた。
ヴォルフ……アイツが居たんだ。
『何で家の前に……』
口を右側に釣り上げ、まるでニヤけているような表情で立ち尽くしていた奴は、呼び鈴を鳴らし始めたが私が居ないことに気づいたのか、腕組みをしながら自身の顎を手で触れる。
少し経つと急に悪魔のような笑顔となり、消えた。
テレポートをしたのだ。恐らく家の中へ。
2分ちょっと経つと、表情はなくなり、感情のないような冷たい目つきをしたヴォルフがテレポートをして出てきた。
居なかったからだろうが……私はただ恐ろしかった。
ひとまず安心、と思い、奴が完全に離れたことを確認し、出来るだけ物音を立てず家の中へ入っていく。
問題は私の体力と戦闘力だ。
肺が悪いが為、運動は殆どしたことなくて、体力がない。
応戦しながら逃げても……いや、応戦しないで逃げても私は1時間も逃げることが出来なく、詰むだろう。
恐らく奴はそれを分かっていてわざと遊んでいるんだと思う。
ホント、性根の腐った奴だ
そんなことを考えながらも、私は先日使用した杭付きバットを用意し、ノートにトラップなどの設定を描く。
そうこうして正午になった。
ブー、ブー
スマホがメール時の振動をしたので手を伸ばして取る。
由奈からのメールだった。
要件は、私の体調の心配だった。
 「優しい奴だな、相変わらず昔から」
私の微笑みも束の間、直後に自分の目を疑う衝撃的な文が送られて来た。
ーー今からヴォルフ君とお見舞い行くねーー
 「嘘だろ ︎ 何でアイツと来るんだよ…… ︎」
私が警戒するように言ったのも虚しく、幼馴染は体調不良の原因となる者を連れてくるらしい。
大方ヴォルフの方から見舞いに行きたいと言って、由奈は優しい人だとでも思いこんだのだろう……最悪だ。
私はノートをベッドの下に隠し、彼女達が来る前に部屋中を片付けた。
……正直ヴォルフを家に入れたくはないが、由奈には教えられないからな……我慢するしかない。
あ、また身体が震えてきた……。
数分程すると、烏が怒っているように怒鳴り叫びだした。この表現の仕方はおかしくないかな、まあいいや。
そして、いつもよりやや低音に感じるくらいの音で呼び鈴が鳴る。
 「りょーちゃーん、 お見舞い来たよー!」
とりあえずコイツは本当に頭が良いのか? 体調不良だと言ってるし近所迷惑なのも考える事なく大声で叫ぶ。
私の名前を。アホか。
恐る恐るドアを開けてみるとそこに居た色黒の男が扉を支える。
 「凌菜ちゃん、 大丈夫かい? お見舞いに来たよ」
白々しい上に名前で呼ばれて気色悪い。
そう思ってる事を気付かれないように
 「いらっしゃい」
と家の中へ入れる。バレたら即殺されるんじゃないかと思って。
部屋へ入ると、 由奈は急に立ち上がり、 お粥を作ってくると言い出した。
ヴォルフは料理は苦手と言い、部屋に居座る。
お前も行けよ、出来れば2人きりは嫌だった。
ヴォルフはいつもみたいな気味の悪い笑みではなく、子猫を愛でるような優しい微笑みでこちらを見てくる。
そして隣に座って何故か私の髪に触れる……キメェ。
 「お前、 よくのこのこと来れたな。 私が今お前から逃げたいと思ってる事なんて百も承知だろ?」
 「だとしたら来週、 必死に逃げ回ると良い」
とてつもなく腹が立つ。
『鬼ごっこ』で逃げろとさ、人の気も知らないで。
 「私が病弱なことくらい、 血ぃ飲んでんだからもう分かってんだろ。 お前はズルすぎる」
 「鬼ごっこにズルいも何もないさ。 それに君の血は、 例え身体が弱くても綺麗で美味だ」
吐き気がする。
絶対もう、どこも噛まれたくない、逃げたい、逃げ切りたい。てかもう帰れ変態。
ヴォルフは部屋の中を見渡し始めた。
もしかして私が用意したトラップなどに気付き始めたのか ︎ ヤバい……。
 「ど、どうかしたのかよ?」
思わず声が裏返る。
最悪な場面で気持ちを装えなかった、もうバレてんなこりゃ。
ため息をついた直後、私は彼の顔をチラ見すると、想像もしてないような台詞が聞こえてきた。
 「いやぁ、 ここが女の子の部屋かぁ。 うん、 良い匂いがする。 君みたいなコでも、 やっぱ縫いぐるみは好きなのかな?」
縫いぐるみのことは多分ベッドの上の兎の縫いぐるみを見て思ったんだろうが、その手前の言葉がキモすぎる。
何だよ良い匂いって……そもそも、匂いフェチの私が嫌な臭いがする物を置くわけがないだろ。
まあ、知らないか。
そんな事を考えていると、彼は私の首元、牙の刺した痕のあるところに顔を近付けて来た。
 「ひゃあっ!」
変な声が出てしまい、恥ずかしくて腕で顔を隠す。
……仕方ないじゃんか、首なんて舐められたらくすぐったいし……
でも昨日噛まれてる時は全然何も……あ、恐怖が勝ったのか。
ヴォルフは『はははっ』と笑ったあと、私達の後ろにあるベッドに寄りかかって少し真剣な表情をした。
 「でもまさか、 顔一緒なのが別人で生まれ変わりの方が病弱で……まるで2人に分かれたみたいだねぇ」
何の話……っていうのは何となくわかる、恐らく300年前にヴォルフが血をもらう約束をしたらしいミルフィのことだ。
やっぱり私じゃ全く似てないからショックなんだろうな……。
 「病弱なら、 一応由奈もだから、 どっちかって言うと由奈の方が近いと思うけどな」
私は何故か寂しい気持ちになり、体育座りをする。
すると隣のクソ吸血鬼は髪の毛の跳ねた私の頭に手を置き、優しく撫でてきた。
触んなよ。
 「根本的に違うさ。 彼女の前世はミルフィと繋がりは有っても彼女とは別、 君は直接彼女の後世として生きてるんだから」
 「まあ、 そのせいでお前に血ぃ抜かれてくんだけどな」
確かに、と笑うヴォルフを見てると何故だか私の心は安らぐ。
前世に出会ってるからなのだろうか、それは考えないようにして目を閉じた。
ヴォルフは頭を掻いて照れ臭そうにしながらこちらを覗いて顔を近づけてきた。
 「何だよ」
 「いやぁ、 僕さ? ミルフィの後世の女の子と出会えたら、 結ばれるつもりでいたんだ。 心も身体も……」
 「帰れ」
ちょっと気を許した瞬間何だこのケダモノは、バカなのか? いやもういっそゲテモノでいいやコイツなんか。
……でも300年もずっと待ってたんだもんな、そりゃちょっとくらい……って、何考えてんだ私は。 
私もゲテモノか、一緒はヤダな。
 「あ、 そうだ、 凌菜ちゃん髪の毛伸ばしなよ。 じゃなきゃ首元の傷、 見えちゃうよ?」
 「興味ないからいい」
口ではそう言ったが、確かに見られるのは色々嫌だな……バンソーコ貼っときゃいいか。
首元を気にしてる間にお粥を作り終えた由奈が部屋に戻ってきた。
良かった、見た目は全然普通だ、
うん、味も平気だ。よくある下手くそなやつじゃなくて良かった。
ふと気づくと、私の手からスプーンが消えていた。
右側を見ると、ヴォルフがスプーンにお粥を乗せ、スタンバイしていた。
もしかしてお前はアレか? アレがやりたいのか?
 「凌菜ちゃん、 はい、 あ〜ん♪ 」
あ、マジでそれか、嫌だな、人前でってのを除いても相手が吸血鬼ってのが特に。
でも、自分で持つのもソコソコ辛いんだよなぁ……仕方ない。
 「んっ」
私はヴォルフの持つスプーンを咥え、お粥を食べた。
 「……ん、 サンキュ」
何だろう、ヴォルフがキモい動きをしてる。
身体が震え顔を手の平で覆って悶えてる、キモ……。
 「はい、 もっと食べて」
 「もうヤダ。 お前キモいから」
そうやって断ると彼はこの世の終わりのような絶望した表情を見せた。
何なんだお前は本当に。
そのやり取りをしてる途中、スプーンを由奈が取り上げた。
 「りょーちゃん! はい!」
お前も『あーん』かよ、そんなに楽しいですか? 私は恥ずかしさがもう限界に近いんですが。
一回やっただけで、超照れるんですが?
 「自分でやるからいいし」
由奈からスプーンをとり、自分で食べ始めると、2人はまた絶望的な表情となってこちらを見てくる。
お前ら頭は大丈夫か?
食べ終えて由奈を見ると、あろうことか寝てやがった。
良かったな、授業サボれてよ。
……何やらお腹の辺りに違和感を感じる。
 「……っ ︎」
ヴォルフが私のパジャマの中に手を突っ込んで……寝てる。
お前らは私が食べ終わるまでそんなに退屈だったのか? 恥ずかしさより苛立ちの方が勝ったらしく、私は2人ははたいて起こした。
 「ん、 じゃあそろそろ僕らは戻らないとな」
 「もうすぐ授業終わるけどな」
 「え ︎ じゃあ行かなきゃ! またねりょーちゃん!」
 「いやだから今行っても意味ねーし」
私はそんなバカ2人を見送った。
今まで、そんなこともしなかったなぁ……て、いやいやいやいや、何でクソ吸血鬼とも親しくやってんだ私は。バカか ︎
……でも、元々有った恐怖心は消えていた。
こうやってまた私の日々は変わっていくんだろうな……。
 「いや、だから私の日常が狂っていってるのはあのクソ吸血鬼のせいだろーが」
自分にツッコミをいれた後、私は何となく首の傷をさすった。
 「これから大変そうだな……てかいつまで続けんだ? あのクソ変態」
ヴォルフのアダ名は、私の中で『クソ変態』となった。
第2話でした。読んでくれた方ありがとうございます。
えーと、 読んでいただいた方はわかるかも知れませんが、私はタイトルをつけるのが苦手でして、内容とあまり合っていないものが多いと思います。
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引き続きよろしくお願い致します。
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