118話もう一度、あの言葉を

程なくして、俺らはリビングに入った。喧嘩けんかの理由を聞くと、父さんが母さんのプリンを食べてしまったかららしい。子供か。

･･･その後なんだが･･･その、なんていうか、とっても空気が重い。

まぁ、自殺して目の前から消えた人との再会が原因なのは分かるが、もう少しどうにかならないのだろうか？

めっちゃ気まずかった。

その気まずさを例えるなら、俺と理子が小学生の頃、俺の父さんと理子の父さんが、俺たちが付き合っていると勘違かんちがいし、予行練習と題だいして「娘さんを僕にください！」と理子の父さんに言わされた時くらい気まずかった。

小学生に何やらせてんだって話だよ、ほんと。

しかもその時、理子は付き合っていることの否定もせず、ただ顔を赤くして、くねくねとしていただけだった。

･･･と、話がそれすぎてしまったな。はよ戻そう。全く、誰だよ脱線だっせんさせたの。

沈黙ちんもくが始まって5分後、やっと母さんが口を開いた。

佳穂「ち、千名美ちゃん。なにか飲む？」

千名美「あ、いや、私、半透明はんとうめいな霊れいだから、何かを口にすると、すり抜けちゃう･･･。」

佳穂「そ、そっか･･･。」

千名美「うん･･･。」

･･･また沈黙。

仕方ねぇな･･･。

大和「･･･父さん達、話したいこととか、言いたかったこととか、色々あんだろ？俺らの前で言いにくいんだったら、俺らは自室にでも籠こもるからさ、ちゃんと話せよ。」

蒼龍「大和･･･そ、そうだよな。佳穂、千名美、ちゃんと話そうか。大和、小鈴、ジェリーちゃん。スマンが、上に行っててくれ。」

大和「あいよ。行くぞお前ら。」

小鈴「はーい」

ジェリー「はいっ！」

俺らは自室へ向かった。

千名美「大和くん、凄いね。私なら、あんなこと言えないや･･･。」

蒼龍「はは、まぁ、あいつは昔からああいう所があってな。行動力が高いんだか、沈黙が嫌いなだけなのか･･･それは知らんが。」

大和･･･ありがとうな。俺はそう、心で唱となえた。

佳穂「･･･で、さ。これ、聞いていいのか分からないけど･･･その。」

千名美「いいよ、なんでも聞いて。もう私、死んじゃってるし。」

佳穂「･･･そっか。じゃあ聞くけどさ。･･･なんで、自殺なんかしたの？」

千名美「･･･それは。」

佳穂「そしてもう1つ。なんで強がったの？苦しいはずなのに、なんで苦しいって言ってくれなかったの？」

千名美「･･･。」

佳穂「答えてよ。」

蒼龍「佳穂、お前なぁ･･･。」

千名美「･･･いいの。やっぱ、気になるよね、それ。･･･簡単に言うと、自殺したのは〝もうみんなの前で、笑顔でいられる自信と力がなかったから〟。笑顔でいたのは･･･皆に、心配けたくなかったから･･･。」

蒼龍「･･･だろうとは思ったけどよ。お前はいつもそうだった。俺らのことを、第一優先で考えてくれた。」

千名美「･･･蒼くん。今だから、もう遅いから言うけど･･･私ね、蒼くんのことが好きなの。」

蒼龍「･･･あぁ、知ってる。」

千名美「･･･そっか。そうだよね。･･･私ね、卒業する日に、気持ちを伝えようと思ったんだよ？なのに･･･っ。」

蒼龍「･･･なんで、病院で2人きりになった時に言ってくれなかったんだよ。」

千名美「言ったでしょ？もう遅いから。」

蒼龍「っ･･･。」

千名美「佳穂ちゃん。今、幸せ？」

佳穂「･･･うん。もちろんだよ。」

千名美「そっか。子供可愛いもんね。蒼くんと一緒にいれるもんね。･･･私も、蒼くんとずっと一緒にいたかった･･･。」

蒼龍「･･･千名美。」

千名美「･･･っと、そろそろだね。」

蒼龍「な、なにが？」

千名美「私が成仏じょうぶつするのが。どんどん薄うすくなってるでしょ？」

佳穂「あ･･･。」

そういう千名美は、本当にどんどん体が透けていっていた。

千名美「･･･どうやら、私が天国に行けなかったのは、未練があったから、みたいだね。･･･蒼くん。佳穂ちゃん。また会えてよかった。」ｼｭﾜﾜﾜ…

蒼龍「っ･･･俺もっ･･･会えてよかった･･･！」

佳穂「千名美、ちゃん･･･！」

千名美「ありがとう。本当に。･･･最後くらい、わがまましてもいいよね。」

そう言うと、千名美は近づいてきた。

千名美「へへ･･･デジャブだね。じゃあ、もう一度。」

千名美は、こう言った。

千名美「さよなら･･･大好きです。」ﾁｭｯ

キスをしてすぐに、千名美は消えた。

暗い話ですみません。

コメント来たんで
☆コメント返信のコーナー☆

・ノヘルバユーザー179171さん
「頑張って」

→はい！頑張ります！(`・ω・´)ゞ

・ノベルバユーザー179171さん
「頑張ってください、応援しています」

→応援ありがとうございます！これからも頑張りますので、ノベルバユーザー179171さん、そしてこの作品を見てくださってる皆様、応援のほど、よろしくお願いします！

・ずっと一緒だよさん
「お疲れ様です」

→コメントありがとうございます。ずっと一緒だよさんも、お疲れ様です。