夢日記

日々谷紺

天才大学生田中くん

 確か月曜の夜、夢を見まして、その夢が頭から離れません。

 田中くんって人が出てきました。田中くんは大学生で、フニャッと笑って、天才発明家で、世界平和を常に望んでいました。私は田中くんとはご近所仲で、割と頻繁に田中くんと会っていて、そのたびに研究の話を聞かされていました。田中くんはいつもフニャッと笑っていて、みんなに好かれていました。
 ある日突然、田中くんが消えました。私の所に、田中くんの友達だというお兄さんが訪ねてきて、一緒に車に乗って田中くんを探しに行きました。
 一歩私の住む街を出れば、景色はなんとも異常で、廃墟のような灰色の建物ばかりが並び、上に細長く奇妙な形の焦げ茶色い山が連なり、でも異常なほどに燃え上がった夕焼けは今までのどの空より綺麗でした。
 灰色の更地で車を停めて、私はお兄さんからこう聞かされました。田中くんは、とうとう世界平和の研究の結論を出したのです。絵を描いていたときに、失敗した部分を下手に修復するより初めから描き直した方が早いと気付いたんだそうです。そして田中くんは、すぐにそのための装置を造ってしまいました。
 私たちは田中くん探しをやめ、ただ二人たたずんで、待っていました。
 燃え上がったあの空が、夕焼けと言える現象なのかは知らないけれど、とにかく美しくて喉が詰まりました。

 そこで私は目を覚まし、どこか気持ち良いような苦しいような感覚に捕らわれながら再び眠りに飲まれていきました。

 次の世界で私は、コンビニなのかスーパーなのか、はたまたレストランなのかよく分からないお店で、ひたすらトマトを食べていました。一個まるまるトマト、ミニトマト、カットされたトマト、調理されたトマト、とにかくトマトだけをひたすら食べていました。すごく、甘くて、おいしかったです。
 目を覚ました私はこう思いました。あんなにおいしいトマトを、私はまだ現実世界で食べたことがない。

 今でも月曜の夜の出来事を忘れる事が出来ません。 


20080206

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