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夢日記

日々谷紺

奇妙なホテルとツボ押し名人

 最近で一番恐怖し不快だった夢の話。今では何に恐怖したのか分からない。

 温泉・温水プール付きホテルにて見知らぬ組み合わせと宿泊。
 今風優イケメン・無免許ツボ押し名人・ママ友会代表と会の面々・その他多数の人がいたが、それら全てが団体として訪れたのか、それぞれ面識のないグループ同士がたまたま居合わせたのかは分からない。自分には20代そこらの大人しい少女(20歳を越えて少女といえるのか分からないが夢の中では疑うことなく少女という認識)という設定があった。
 夢の序盤にも何か行動はあったが記憶にない。ホテル共同休憩スペースと泊まり部屋の境界辺りで展開は進行を続ける。
 廊下に人間の死骸がある。殺されたらしい。どこかにまだ殺人者がいるから気楽に出歩くなよ、と死骸を横切る面々。死骸は硬質感ある黒のフォーマルスーツをよれよれにしたまま寝ころんでいる。
 ホテル内に渡り廊下がある。渡り廊下の右手側は中庭になっている。中庭といっても、雑草の生い茂る田舎の裏道のような、とても中庭と呼べない景色。小学生が通学路を外れて寄り道したくなるような空間だった。
 大きな毛虫の大量発生、毛が生えて頭の茶色いうねうねが草陰から見えたり見えなかったりする。それだけで辟易するが、優イケメンがその中庭へどんどん足を踏み入れる。何かそこへ行く理由があったはずだがそれも忘れた。
 中庭にコンクリートの塀のようなものがある。小さい丘を半分に切って断面を固めたような塀で、いかにも人工ブロックらしいでこぼこがあって登りやすい。登れば登るで頂上はまた草むら。優イケメンが登るので自分も登るが、いざ頂上へ足を乗せる際に目前を蝶が横切り、すぐさま飛び降りる。蝶や蛾などひらひらと羽根のでかい虫が大の苦手の自分は夢でさえ余程蝶を見たくなかったのか、蝶だけがその世界でデフォルメされている。それでも詳細までリアルな毛虫より、デフォルメの蝶の方が気持ちが悪い。
 渡り廊下を引き返す道に、鹿のようで鹿でない珍妙な生物の死骸が寝ころんでいた。決まり事でそれに触れてはいけないと誰かが言った。ここではいつも死骸は転がしたままだ。
 プールに迷惑ババア発生の噂を耳にする。プールの水にアカカスが浮かんでいたという話だ。アカカスとは、説明したくもない不潔なアレを意味していた(実態は定かでないが不潔だという共通認識だけがその場にある)。ママ友会の面々がババアを机上でひたすら扱き下ろしていた。顔見なきゃ分からん、と誰かが呟いた。悪意があってプールを汚しているのか、その態度を見なければ扱き下ろしていい迷惑行為だったのか分からないという意味合いだった。
 20代少女の腹が痛みだす。無免許ツボ押し名人が「腹痛に効くツボを押してやろう」と言って、指2本を少女のみぞおちに鈍く深く突き刺した。少女の腹痛は確かに消えたが、名人が手を離しても尚みぞおちを圧迫され続けている様な苦しみにすり替わっただけだった。肺にまで影響したらしく、まともに呼吸できずにずっと引き笑いの様な音を立てて酸素を求めた。
 少女とはつまり自分である。目前に死を見るほどに苦しかった。無免許ツボ押し名人は「無免許だっていったろ」「あんたがそれを軽く流してオレの腕を信用するから」「逃げないから」とネチネチ吐いている。長びく引き笑い呼吸が彼には大袈裟で皮肉じみて見えたらしい。
 プールの迷惑ババアが撃退されたと微かに噂された。ババアがプールから飛び出し、古いアニメのように走り去るビジョンだけが浮かぶ。
 無免許ツボ押し名人があんまりしつこく少女を責める。引き笑い呼吸は止まず。
「違うんです、ほんとに、こうしないと、息が、」

自分の寝言で目が覚める。 




20151021

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