俺の異世界転生はチートスキルが無のようです

松竹梅の松茸

第6話 初クエスト

 振り返った先には筋骨隆々でスキンヘッドの強面で背中に大剣を背負った男が立っていた。

「冒険者になったばかりのお前に、先輩冒険者様であるこの俺が直々に指導してやろうじゃねえか。なんたって俺は緑ランクだからな」

 一見、親切のように思えるが、男の口もとは明らかにニヤついている。
はぁ、異世界にもこんなことする輩がいるのか、と内心大きなため息をついてしまった。

「いやー、そういうの間に合ってるんでいいです」
「ほう、先輩冒険者様に逆らうっつうのか?」
「いや別にそういうわけじゃって、うわっと!?」

 男は突然殴りかかってきた。それをすんでのところでかわす。

「……少しはやるじゃねえか」
「いやいやいや、町中で危ないですって」
「これならどうだっ」
「話を聞いてくれない!?」

 もはや、男には俺と会話をするつもりなど無いようで、ひたすらに俺へと殴りかかってくる。俺はステータスのおかげもあるのか、殴られまいと必死になっているので、まだ一発も食らうことなくかわし続けている。そんな状態がしばらく続き

「はぁ、はぁ、はぁ……ちょこまかと…。避けるのは上手いじゃねえか」

 男は肩で呼吸をし、額には大量の汗が浮かんでいる。

ピコンッ!
『スキル《近接格闘術・上級》ヲ習得』

 おっと、新しいスキルか…
これがあれば、今の疲れきった男の状態なら倒せそうな気がする。話を聞いてくれそうな感じでもないし、やられっぱなしなのも癪だし反撃しちゃおうかな……。
この間にも男は俺に殴りかかってきている。
はぁ、クエストにもそろそろ向かわないといけないし。ため息をつきながら男に向き合う。

「おらぁぁぁぁ!」

 先ほどまでは、避けるのがぎりぎりだったが、スキルを得た俺には男の動きが別物に見えた。マンガ風に言うなら、お前の動きが止まって見えるぜ、状態なのである。はじ〇の一歩の板垣と星との試合での板垣のような気分を味わっていると言えば分かってもらえるだろうか。
俺に向かって伸びてくる右拳をかわし、男のあごにアッパーをくらわせる。
バキッと変な音がした後に男は後方に10メートルほど飛んでいった。

「え……?」

 あれ?こんなに簡単に人って吹っ飛ぶんだっけ?うーん……まあ、異世界だしな。と俺は深く考えるのをやめて街の外へと向かった。

 スキルを得てから、男をふき飛ばすまでの成清の一連の動きは一流の冒険者に匹敵するものであったことをこのときの成清は知るよしもなかった。


  ◇


 都市を出て2時間ほど歩くと草原地帯に着いた。どうやら俺が最初にいた草原はゴブリンの出没数が多いことで有名なようだ。門をでるときに衛衛兵からそう聞いた。

「えーと、たしか10体倒すんだっけか。急がないと日が暮れるまでに戻れないな」

 そう呟きながらゴブリンを探し回る。マルスティアに行く前に倒しまくった自信からか、時間を気にするほどの余裕が俺にはあった。
しばらく歩き回ると、見覚えのあるシルエットを発見した。そして、すぐにゴブリンの元へと走り始める。短剣術に加え、近接格闘術を習得した俺に近接戦への不安は微塵もない。
ゴブリンがこちらに気づき、構えようとする。だがしかし

「遅い!」

 俺は、ゴブリンの頸動脈を的確に切り裂き、その勢いのまま2、3、4と近くにいたゴブリンも倒した。近接格闘術を手に入れたからか、この前倒した時よりもさらに簡単に倒せた気がする。

 倒したモンスターの体の一部をギルドに持ち帰ることでクエストの達成となる。ゴブリンの場合は右耳のため、倒した4匹の右耳を切り取ろうとしたとき、俺は衝撃的な事実に気がついた。

「あれ?色違くね?」

 そう、俺がゴブリンだと思って倒したモンスターは姿形はまったくゴブリンと同じなのだが、肌の色が緑色ではなく、灰色だった。

「あー、まじか。違うの倒しちゃったよ……」

 4匹倒したからあと6匹だなー、なんて思ってたが違うのでノーカンだ。最初に喜んでいた分、違うと気づいた時のショックが大きい。

「ま、まあ、違ってても体の一部持ち帰れば換金できるじゃん?それに、俺のよりいい感じのナイフ持ってるし……」

 そう自分を納得させて、とりあえずゴブリンと同じく右耳を4匹分切り取る。そして、最初に倒したやつが持っていた刀身まで真っ黒なナイフを手に取り、バックが無いので耳をズボンのポケットにいれるが、正直気持ち悪い。帰ったらバック買わないとな、と考えながらゴブリンを探しに再び歩き回る。


 ◇


「これで最後だっ!」

 俺は10匹目にあたるゴブリンにナイフをズブリと突き刺す。あれから灰色のゴブリンもどきみたいなやつとは、遭遇せず順調に倒すことができた。
俺のポケットは10匹+4匹分の耳でパンパンになっている。

 そして、目的を達成した俺は草原地帯をあとにした。早く帰ってポケットを空にしたい、その一心で……


 ◇


 空が茜色に染まった頃に俺は門へと到着し、都市へと帰って来ることができた。都市を出た時と同じ衛兵に、膨らんだ両ポケットを不審に思われ、中身を調べられてそれがゴブリンの耳だと分かると可哀想なものを見るような目で見られた。少しショックだった。
そして、門をくぐり中に入るとそこには俺がすっかり失念していたものが俺の気分をさらに落とした。
そう、異常に人のいる大通りだ。

 肩を落としながらも、何とか人をかき分けてようやくギルドへとたどり着く。ギルドに行く道は大通りしか無いので、正直めちゃくちゃしんどかった。

「……帰ってくる時間にはきをつけよう……」

 俺は固く決心した。絶対に夕方には帰ってくるものか、と。
そして、ギルドに入り受付嬢の元へ報告に行くと

「いらっしゃいませ!冒険者ギルドセレファイス国マルスティア支部へようこそ!ご用はなんでしょうか?」

 そこには、まるで血を思わせるような真紅の艶のある髪を肩口までおろし、健康的に日焼けをしたようなきれいな肌の俺と同じくらいの年の女の子がいた。




やっと、投稿することができました。お待たせしてすみません……
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