俺の異世界転生はチートスキルが無のようです

松竹梅の松茸

第5話 冒険者ギルド

 ふと、目が覚めた。仰向けに寝たまま天井をぼんやりと眺めていたら、ありきたりだが思ってしまった。知らない天井だ、と。
しばらくしてむくりと体を起こし、部屋を見渡して改めて異世界に来たのだと実感した。そして、体の調子が快調であることに気づき、驚いてしまった。昨日は1日のほとんどを戦闘につかっていたというのに筋肉痛やら疲労が全くないのだ。


ドンドンドン


 突然、部屋のドアを叩く音がした。

「おーい、成清。起きてるか?朝飯いこうぜ」

 あぁ、ライルさんか

「はい、起きてますよ!今出ますね」

 そう答えて、ベッドからでてドアを開ける。そういえば今日は冒険者ギルドに行くんだっけか。





「ふぅー、食った食った。そろそろ行くか」
「そうですね」

 俺たちは朝食を食べ、宿をあとにした。それにしても、昨日の夕食もだったが今朝の朝食もものすごく美味しかった。ライルさんおすすめのこの宿はほんとうに当たりのようだ。

「そういえば、ギルドってどこにあるんですか?」
「ん?あぁ、大通りを真っ直ぐ行ったところだ」

 大通りか……昨日歩くの大変だったんだよなあ、と昨日を思い出しげんなりしていると、あれ?人が全然いない。昨日歩くのも大変だった大通りにはぽつりぽつりと歩いている人がいるだけだった。

「ライルさん!なんで人が全然いないんです?」
「ここの都市はな、午後にならんと全然人が出歩かねえんだ」

 不思議に思って隣を歩くライルさんに尋ねると、そんな答えがかえってきた。

「まあ、習慣みたいなもんだな。1日中こうなら歩きやすくて助かるんだけどな」

 ハッハッハと軽く笑いながらライルさんはそう言いう。あぁ、慣れてる人でもあの人混みは歩きづらいんだな、と俺も軽く笑った。
しばらく談笑しつつ歩いていると

「おっと、ここがギルドだ」

 そこには、5階建てぐらいの非常に大きな建物か建っていた。正直、想像してたよりもかなり大きい。

「中に入ると、カウンターに受付嬢がいるからそこで登録できるぜ。あとの話はそこで聞きな」
「ライルさんは来ないんですか?」
「おいおい、俺は商人だぜ?次の都市に向かう準備をせにゃならん。ここには寄るだけのつもりだったからな」
「そうだったんですか!すみません、俺の面倒をみてもらっちゃって……」
「いいってことよ!お前さんには期待してるからな、そんだけステータス高けりゃ有名な冒険者になれるぜ」
「ありがとうございます!お世話になりました」

 ライルさんは大通りを戻っていった。ライルさんにはほんとうにお世話になっちゃったな……。今度あった時はなにかお返しをしないと。

 ライルさんと別れ、俺はギルドへと足を踏み入れる。外からは想像できなかったが、中は多くの人でごった返していた。冒険者はこの都市でも朝から活動するんだな、なんて思いつつ受付嬢の元へと向かう。

「いらっしゃいませ!冒険者ギルドセレファイス国マルスティア支部へようこそ!ご用はなんでしょうか?」

 へぇ、支部なのか。てことは他の国や都市にもギルドがあるってことなんだろうか。

「あの、冒険者に登録したいのですが」
「はい、新規登録ということですね。それではこちらの紙に名前と記入してください」

 名前だけでいいのか、楽チンだな。そう思いながら俺は差し出された紙にさらさらっと名前を書いて、受付嬢へと渡す。

「えーと、橘 成清さんですね。はい、登録しました。こちらがギルドカードになります。身分証明書にもなりますので無くさないでくださいね?」

 そう言って渡してきた白いカードを受け取った。

「ギルドに関して説明は必要ですか?」
「はい!是非お願いします」

 聞いておかないとな、この世界に関して全然知らないんだし。

「まず、ギルドに登録してある冒険者は9段階にランク分けされています。下から白、黄、緑、青、赤、銅、銀、金、黒となっていて、基本的にはクエストをこなすことでランクがあがります。高いランクになればなるほどそれだけ報酬額の大きいクエストに挑めます。
クエストは、ボードに貼られているものを受付に持ってきて受注し、報告も受付ですることになります。
自分のランクの1つ上のクエストまで受注が可能ですが、失敗すると違約金が発生するので注意してください。
どの国や都市でもランクは同じものが適用されるのでその点はあんしんしてください。
最後になりますが、冒険者ギルドは冒険者同士の争いには一切干渉しませんが、一般市民に危害があれば冒険者を処分します。
この他に質問はありますか?」
「なるほど……分かりました。大丈夫です!丁寧にありがとうございました」

 そう言って、お辞儀をして俺はボードへと向かう。とりあえずは、クエストをこなしてお金を稼ぎつつ、ランクを上げていこうかな。昨日、馬車でライルさんから聞いた話だと、この世界には3つの大陸があってそれぞれ人間領、魔国領、エルフ領と呼ばれるらしい。
俺がいるここは、人間領で人間領には大きく分けて4つの国があり、南の大国セレファイス、北の帝国カダス、西の獣人国ルルイエ、東国インスマスのうちのセレファイスのようだ。
いずれ、他の都市や国にも訪れてみたいものだ。

 昨日の話を思い出しながらボードの前までくると、ボードには所せましとクエストの紙が貼られていた。

「うーん……こんだけあると迷うな……」

 全体を見渡していると

「おっ!これいけそうじゃん!」

 そこには見た事のある文字があった。
《ゴブリン10体討伐  黄ランク》

「ゴブリンならここに来る前に勝ってるからな、最初はこれにしよう」

 そう決めるや否や、ボードから剥がし受付へと足早に向かう。先ほどと同じ受付嬢の元へと行くと

「これ受けます!」 

 と、紙をだした

「えーっと、ゴブリン10体討伐の黄ランクのクエストですね。はい、受注完了です」
「ありがとうございます!」

 そう言って、早速行こうと出口へ向かおうとしたら、遠慮がちに尋ねる声がした。

「あのー、お節介かもしれないんですが大丈夫でしょうか?」
「え?」

 そんなに弱そうに見えたのだろうか?不思議に思って振り返ると

「見たところ防具を着てないので……」
「……あぁ!!忘れてた…………」
「よかった。武器や防具をちゃんと揃えてから行かないと危険ですよ。大通りに武器・防具店があるのでそこに寄ればあらかた揃えられます」
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ、気をつけてくださいね」

 危ない危ない、たしかに防具はつけてないときけんだよな。あー、でもお金がないんだった……。せっかく忠告してもらったけど今回はこのまま行くしかないか。

 そして、ギルドからでてあるきはじめると

「おい、そこのお前!ちょっと顔貸しな」

 後から声がかけられる。
何だか物騒な香りがぷんぷんするんだが……




投稿が少し遅くなってしまいました。ほんとうにすみません……
気づけば70にもフォローが伸びていて、多くの方々に読んでいただいて感激しています。
皆様の期待に添えるよう、成長していく所存ですのでこれからも評価やコメントなどよろしくお願いします。

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