俺の異世界転生はチートスキルが無のようです

松竹梅の松茸

第3話 初遭遇

ザシュッッッ!

「っと、これで何体目だろ…」

 そう呟きながら、俺は緑色の肌の異形の者。つまり最初に戦った奴と同じと思われるモンスターから慣れた手つきでナイフを抜き取る。ぼたぼたと紫色の液体が滴る。どうやら、モンスターには紫色の血が流れているようだが、何度見ても慣れないな。
奴と戦ったあとからひたすらモンスターと戦い、倒し続けてきたが、倒せば倒すほど戦闘が楽になっていくのが感じられる。

「そういえば、ステータスってどうなったのかな?1回確認してみるか」
「《能力表示ステータスオープン》」

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橘 成清 17歳 男 Lv 10→50

職業:無
称号:ゴブリンの天敵

〈基本能力〉
  体力:1000→5000
  筋力:10→4500
  防御力:10→4500
  敏捷力:10→4500
  魔力:10→4500
  魔法耐性:10→4500
〈スキル〉
  無
  短剣術・超級
  暗殺術・上級
  回避術・上級
  胆力・上級
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 おぉぉ、なんか色々増えてる…。スキルも3つ増えてるな。しかし、暗殺術なんて物騒なもんも覚えちゃってるなぁ、そのおかげで効率的に倒せてるのはあるんだろうけど。ただ、新しく覚えたのは3つとも上級か、短剣術は超級なんだが……。
あぁ、これが本気度による差ってことなのかな?短剣術を覚えたときは命を落とす覚悟だったからな。
それにしても、ゴブリンの天敵って…。俺が倒しまくってきた緑色の肌のモンスターってば、RPGの序盤モンスターとして定番のゴブリンだったのか。
それにしても、天敵かぁ、倒しすぎちゃったかもな……



 現在、太陽は真上を過ぎて視界に入るくらい傾いている。モンスターを見つけては倒し、見つけては倒す、いわサーチアンドデス状態の俺だったが、気づいたら相当な時間が経っていたようだ。
見渡す限りの草原の中で俺は1人立っている。夜をどこで明かそうか、寝ている間に襲われやしないか。先ほどまでは考えもしていなかったが、1度冷静に考えてみると不安が一気に襲ってきた。

 目覚めてからこれまで人っ子1人見ていない。これは非常にまずい、戦闘によってかいていた汗が一気に冷たいものへと変わる。何も思いつかないという焦りが不安を呼び、不安がさらなる焦りを生みだすという最悪の悪循環に陥りかけた、その時。

「ん?あれは……なんだ?」

 この林と草原以外になにも無い中、たった1本だけある道の遥か向こうで何やら土煙があがっている。そしてそれは、こちらへと近付いて来ているようだ。

「馬が数頭、それに何かを引いている、のか?」

 ぼんやりと見えていたシルエットが次第にはっきりと見えるようになってくる。

「————っ!そうか!あれは馬車ってやつか!!」

 日本では目にする機会がほとんどない。俺自身見たことはない、が、あれは馬車だ、そう確信できる。数等の馬が荷車を引いて走っている、これを馬車と呼ばずしてなんと呼ぶだろうか。

「こうしちゃいられない、何とか気づいてもらわないと」

 馬車がある、つまり人間がいる。異世界において初の人との遭遇。これを逃さない手はない。
一目散に道へと走り出す、ステータスのおかげだろうか、今までよりも随分と足が速くなっている。
そして俺は馬車の目の前へと飛び出した。

「止まってくださーーーーーーい!!!!」

 俺はこちらへ走ってくる馬車へと、大声で叫び、呼びかけた。
ッ!!御者と思しき男性と目があった!
彼が急ブレーキをかけたのが見えた!

ズザザザザーーーーーッッ

土煙をあげながら馬車は俺からわずか1mほど前方で急に停止する。

「おい!!危ねぇじゃねぇか!いきなり何してやがる!」

御者の男性がものすごい剣幕で怒鳴ってくる。
目つきは鋭く、口ひげをたくわえ、体格もゆうに俺の倍以上の厚みがある。そんな男性に怒鳴られたら、以前の俺なら縮まみあがっただろう。しかし、《胆力》のおかげだろうか俺は一切動じることなく

「すみません!馬車が見えたので、思わず飛び出してしまいました!」
「お、おう」

むしろ男性の方が俺の勢いに押されている。
そのまま立て続けに

「日も傾いてきて、ここには夜を明かせるような場所がないんです。どうか人がいる町か村まで乗せていって貰えませんでしょうか?」

『スキル《交渉術・上級》ヲ習得』
この日4度目のピコンッという音とともに脳内に響く機械的な声。

「なるほどなぁ……、しっかしお前さんはなんでこんなとこにいたんだい?」
「それはですね……」
「んん?」

 どうしよう、考えて無かった…1度死んで転生してこの世界にやって来て、目覚めたらここにいました、なんて絶対信じてくれないだろうしなぁ……

「どうした?言えないのか?」

 まずい、どうしようどうしようどうしよう。
ッ!閃いた!!これならいけるはずだ!

「おい、黙ってないで何とか言ったら「実はですね!!」」
「俺は旅をしていたんです。ところがある日の夜に、ゴブリンの集団に襲われましてね、命からがらなんとか逃げ切ったんですよ。ですが、夜で周りが良く見えていなかったようで、向こうの林の中の木に頭からぶつかってしまったようなんですよ。そして、今日目が覚めてみたら自分の名前以外何かもかも忘れてしまっていたんです」

 よくもまぁ、こんなに嘘を並べられたものだ。我ながら関心してしまう。

『スキル《詐称術・上級》、《隠蔽術・上級》ヲ習得』

 おいおい、まじかよ、なんともグレーなスキルだな

「…………」

 あれ?どうしたんだろ?

「あの、どうしたんですか?」 
「うぐっ、」
「???」
「うぐっ、大変だったなぁ、ぐすっ」

 どういうことだいきなり泣き始めちゃったぞ!?
そんだけ、いかつい顔の男性に泣かれると対応に困ってしまう

「ズズっ、安心しろよ、もう大丈夫だ!お前さんのことはこの俺がきっちり町まで送り届けてやるからな!」
「!!本当ですか!ありがとうございます!!」
「いいってことよ、困った時はお互い様だ。俺はしがない商人のライルっつうもんだ、お前さんは?」
「成清、橘 成清です」
「タチバナ ナリキヨか、東国の人間っぽい名前だな。お前さんは東国の出身かもしれんぞ?」
「は、はぁ」

 東国か、俺みたいな名前の人間ってことは日本風の名前が多い国なのかな?日本も東の国だしな
などと、物思いに耽っていると

「おい、まずは乗り込めや」
「はい!」

ふたつ返事で彼の隣に座る

「俺のことはライルって呼んでくれや」
「分かりました、俺のことも成清でお願いします」
「おう!んじゃ、行くぜ成清。中心都市、マルスティアへ」

 馬車がゆっくりと走りはじめた。



投稿が遅くなってしまってすみません!
そのぶん、少し長めになっています。
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