Alice in the Darkness~闇の国のアリス~

闇狐

最終夜[英雄の叙事詩]

【メルスケルク路地裏の廃屋内】

「イカれた帽子屋のお茶会へようこそ!!」

外壁が湿気で朽ち、今にでも崩れ落ちそうな木造の廃屋。
そこに居合わせた一人の青年と二人の少女。
廃屋内(小屋)には一つの小さな円卓が無造作に置かれており、こちらもまた湿気で朽ち果てボロボロだ。
また、その円卓上にはお洒落な花柄のティーポットとティーカップが二つ、何やら怪し気な物が入った小袋が三つ置いてある。

「まあ、そんな所で突っ立ってないで入りたまえ!二人とも風邪を引くぞ?」

ハッタの良心的な計らいにより、アリスとカモミールはそそくさと廃屋の中に入っていった。

「あんさんどうしたんすか?ハッタさんと顔を合わせてから何やら顔が赤いですよ?あ、もしかして、林檎病にでも掛かったんすか?」

カモミールは目を細めてクスリと笑いながらアリスの方を一瞥した。

「ち、違うわよ!こ、これはその‥‥」

言葉を詰まらせ、顔中を赤面させて慌てて両手で顔を隠すアリス。

「ははーん、さてはあんさん。ハッタさんに『一目惚れ』したんすね!!」

「ば、バカ、何言ってんの!ぶち殺すわよ!!」

咄嗟に腰に身に付けているナイフポーチに手を付けようとするアリス。

「お嬢さん達、お茶会はまだ始まったばかりだ。さあ、これからの夜を存分に楽しもうではないか!ヒャッハー!!ハハハハハ!!!」

そう言うと、ハッタは自らが被っているシルクハットを脱ぐと、そこから何と『ヘリクリサム』の花を発現させたではないか。
その花は淡い紅色でとても美麗だ。

「知ってたかい?ヘリクリサムの花言葉は『永遠の思い出』。詰まり、僕が君達と会えた事は終わりのない、『不滅の思い出』って事さ!そう、僕の悲愴な過去を忘れさせてくれる様な素晴らしい思い出‥‥。」

「ハッタさん、中々オシャンティーな事をしますね!」

「‥‥」

「‥‥?どうしたんすかあんさん。そんな俯いちゃって‥‥」

徐に顔を上げ、ハッタの顔を見詰めるアリス。

「貴方、ハッタと言ったわね」

「そうだよ?♪急にどうしたんだいお嬢さん?♪」

「‥‥わ、私の奴隷となりなさい!」

「ファッ!?此奴は魂消た!!幼げなお嬢さんからの絶対命令発言だ!」

「う、五月蝿い!は、早く私に忠誠を誓いなさい!じゃじゃじゃ、じゃないと、こ、このナイフで切り刻むわよ!!」

「WOW!あんさんおそろすぃ!」

「まさかこんな唐突に来るものとは思わなかったけど‥‥受けて立とう!楽しいパーティーはこれからだ!!」

‥‥‥‥

「‥‥それは、世界一不器用で鉄面皮な少女の不思議でダークな物語。その不器用な愛はいつになっても変わる事なく健在で、こうして『貴女』という『特別』な存在が生まれてきた。この話はこれでお仕舞い。ウフフ‥‥」

「えー、もうお仕舞い?ねえ、お母さん。続きが気になるよ!」

少女は椅子に腰掛けている母親に強くせがみ、エプロンドレスの裾にしがみついた。

「ウフフ‥‥この続きは貴女の『想像力』に任せるわ。それと、この『白紙の本』と私の『宝物』も‥‥。アナタ、ご飯にしましょ」

「見てくれアリス!素晴らしいデザインの帽子を思い付いたんだ!!鍔に百合の花をあしらった何とも優美で可愛らしい帽子だ!!!素晴らしい!!さっそく『あの子』に試着して貰おう!!」

「ウフフ‥‥アナタが楽しそうで何よりだわ。アイリス、お父さんの元へ行ってきなさい。きっと貴女にぴったりの綺麗な帽子よ」

「はーい!お母さん!」

この子は私の希望の花。
絶対に枯れさせはしない。
この白紙の本と私のマミーから譲り受けた宝物と共に‥‥

最終夜[英雄の叙事詩]

『Alice in the Darkness~闇の国のアリス~』

【完】
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【キャラクターズメモ】

【バードック・ハッタ】

・17歳

・サリオスの村(スピルス国)出身

・孤児

・天真爛漫な性格

・カモミールと同じくメルスケルク街の孤児院に在住

・幼少期に両親から虐待を受け、10歳の時に耐えきれず家出。首元には焼き鏝で『服従奴隷』と記された文字を焼印されている。尚それも両親からの虐待の証拠の模様。

・メルスケルク中央通りの帽子屋でアルバイトをしている

・夜中にこっそりと孤児院を抜け出し、メルスケルク中央通りの路地裏の廃屋でカモミールと共にお茶会を開いている

・バードック→[意味]ゴボウ→ゴボウの花言葉→「私に触らないで」「しつこくせがむ」「用心」『「私を虐めないで」』

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