異世界英雄のレイン (旧題:異世界英雄の創造主)

Noct@Kirusu

公爵家の家に泊まろう3


 僕はテルシアとニーナに連れられて訓練場に来た。訓練場にはセリスとディーストニア家の兵士達がいた。

 セリスと兵士の一人が闘っていたがテルシアが来たことに気づいた兵士達が二人の闘いを止めた。


「どうしてお母様がここに来たんですか?」


「自分の娘に会いに来るのに理由なんているかしら?」


 テルシアが冗談?を言い兵士は「また、用が無いのにきたのか」などと言っているのが聞こえる。僕に気付いてないようだ。

 それより、こんな親馬鹿で大丈夫なのか心配になりニーナの方を見ると彼女は僕の視線に気付き首を横に振った。この人がカレン家の親馬鹿の親友だと良く分かる。


「何の用も無いのでしたら模擬戦の続けたいのですが・・・」


「さっきのは冗談で、用事はあるわ。その前に皆に紹介するわ。この子が前に話していたレイン君よ。仲良くしてあげてね」


「紹介してもらったレイン・クロスフォードです。鍛錬の為に来ることがあると思いますので、悪い点があったらよろしくお願いします」


 僕が丁寧な挨拶をすると兵士達がざわめき始めた。「あれがカレン様の子供だと!?」「なんて丁寧な挨拶なんだ!」「あの方と違うぞ!」「親馬鹿の子供は真面目になるのか?」などなど

 お母様が何をしたのか気になったが聞いたら後悔しそうなので止めといた。


「何でレインがいるんですか?・・・・・・もしかして、兵士の人達に訓練して貰う為ですか?」


「ざんねーん。レイン君にはセリスと模擬戦をして貰うのよ」


 この言葉にまた兵士達がざわめいた。

 セリスがすぐに反論を唱えてきた。


「失礼ですがレインと私が模擬戦をしたらすぐに私が勝ちます。だって・・・レインにはステータス値は低いですし、スキルと加護無しです。それに称号だって・・・いえ、何でもありません」


 セリスの言葉に耳を疑う。セリスはまるで僕のステータスを見たような確信を持って言っているように見えた。

(あれ?僕のステータスは教えていないのに。アイリが教え、てはないか。アイリはしっかり考えているから人のステータスでも簡単に教えないだろうし)


「鑑定で見たのね。・・・あれ?それならおかしいわ。ニーナが見つかるはずがないわ」


 どうやら相手のステータスを見るスキル『鑑定』があるらしい。

(鑑定があるなら隠蔽もあるのかな?)

 前世で少しだけ読んだラノベの内容を思いだして思ったがアレは所詮想像で作った物だから実際にあるかわからない。そんなどうでもいい事を考えているうちにテルシアは僕に聞いてきた。


「レイン君、さっきの模擬戦を見て勝てると思う?」


「うーん、どうですかね?セリスさん、さっきは大体何割の力でやっていたんですか?」


 セリスは僕の問に「五割ぐらいです」と答えてくれた。そして僕が「あれで五割か・・・」と呟いたのがテルシアに聞こえ残念がっている。


「やっぱり無理よね。武神の加護を持っているのに年下の子供が勝てる訳ないわよね」


「えっ、何を言ってるんですか?勝てるに決まってるじゃないですか?」


 この言葉に僕以外の人全員が驚いている。そして一番早くに声をかけてきたのはセリスだ。なぜか怒りながら。


「あなたは本気で言っているんですか。それなら模擬戦をしましょう。あなたの目がいかに節穴か教えてあげます」


「レ、レイン君。今すぐ謝った方がいいわよ。今のセリス、かなり怒っているから模擬戦で何されるかわからないわよ」


「何で慌ててるんですか?ニーナさん、テルシアさんが変になったんですが」


「レイン様、テルシア様が変なのはいつもですが今は正しいと思います。私も今すぐ謝った方がいいと思います。セリス様のステータスはレイン様の約三倍です。しかもスキルが無いのでしたら尚更です」


 僕は困惑した。テルシアが変なのは分かっていたけどニーナまで変な事を言うとは思っていなかった。


「まあ、模擬戦をしたら分かる事だし良いか。セリスさん、模擬戦のルールはどうしますか?」


 この無神経な言葉によってセリスは少し怒った。セリスは今まで馬鹿にされたり、馬鹿にする事にちかい事をされた事がなかった。それ故に戦闘は大人と同じぐらいでも精神は七歳の子供より少し大人になっている子供の精神だ。だからここまで侮辱された事にキレた。

 しかしセリスは相手は、私の実力がわからないだろう、と思い冷静に答えた。

「ルールは武器は刃を潰した剣。相手が降参するか審判が危険だと思い勝敗を決めるかのどちらかです。魔法の使用無しでいいです」


「ん?魔法は有りの方が有り難いだけど」


 またレインの無神経な言葉によってセリスの中で何かが完全にキレた。それもそのはずまだ精神は七歳の子供より成長していると言っても十歳ぐらいの子供と同じ程度だ。更に公爵家の長女。セリスを馬鹿に出来る人は両手で数えられるほどしかいない。しかもセリスは今よりも小さい頃から優秀だったので怒られた事がない。そんなセリスが急に馬鹿にされ侮辱を感じたらどうなるかなんて容易に予想できる。


「あなたは魔法が有りがいいと言いますか・・・。ふざけるのも大概にして下さい。私は真剣に鍛錬をしています。だから剣術スキルが3もあります。それにくらべてあなたはどうですか。魔法のスキル才能もないのに武術のスキル才能もないんです。武術のスキルは努力すれば手に入ります。それなのにあなたは何もない。これはあなたが努力していない証拠です。更に称号最弱を持っているじゃあないですか。あなたは、あなたは無能・・なんです!!」


 セリスが最後まで言い切るとテルシアがセリスの頬を叩いた。


「セリス!言って良いことと悪いことぐらい分かるでしょ!あとレイン君も!何であんな事を言うのよ、あなたは賢い子だから分かるでしょ!」


 僕はテルシアが何故怒ってくるか分からなかった。ただ思った事を口に出しただけなのに。助けを求める為にニーナの方を見るが、助けは無理だな、と、思った。

 僕が悩んでいるとある言葉を思い出す。


「ーーのバカ。私がどんな気持ちで書いたか分かってないよ。私の気持ちを少しは考えてよ」


「ーー君はバカだね。そんなんだから敵がたくさん出来るんだよ」


 彼女達の言葉を思い出し笑ってしまう。その通りだと。こちらに来てからアイリ達に賢いと褒められるばかり忘れてしまっていた。僕がバカなのは前世からの事だった。


「テルシアさん、僕は僕の大切な二人からバカだと言われてたんです。僕は自分の意見や意志を尊重します。だから相手の気持ちなんて知りませんし考えようとしません。セリスさん、ルールに勝者は敗者に一つだけ命令出来る、を加えて欲しいです」


「いいでしょう。ニーナさん、審判をお願い出来ますか?世間知らずのお嬢様に真実を教えないといけないので」


「・・・わかりました。ではルールの確認をします。武器は刃を潰した剣で魔法の使用は有りです。相手が降参、または私が負けだと判断したらそこで終了です。セリス様、レイン様このルールでよろしいでしょうか」


「私はいいです」


「体術を使うのはもちろんいいよね?」


「はい、問題ありません」


「じゃあ僕もいいよ」


 一人の兵士から刃の潰された剣が僕とセリスに渡され、お互いが離れた事を確認したニーナは模擬戦の開始の合図をした。


「では、模擬戦、始め!」




 セリスは剣を構えて、レインは剣を構えずにただ立っている。どちらも動かずに静寂になっているなかまわりで見ている人達はだた静かに見ていた。

 この静寂がずっと続くと思ったとき、セリスがレインに尋ねた。


「先手は譲ってあげますから、はやくどうぞ」


「僕的にはカウンターを狙っているから先に攻撃して欲しいけど」


「そうですか。では、いきます。頑張って下さい」


 セリスはそう言うと、消えた。セリスは高速で移動しながらスキル隠密を発動しながらレインの背後にまわり剣を振り下ろした。

 セリスが今取った行動は兵士の人でも一撃で倒す為に考えた方法だ。子供が普通受け止める、いや避けることだって無理だろう。相手が普通なら・・・・・・・

 レインはセリスの剣を受け止めた。先ほどと全く変わらない表情で。


「ッ!・・・何で分かったのですか」


「何で、って普通に目で追えるでしょ?」


 レインは「何を言ってるんだ?)と言いたげな顔で返事をした。その事で更にセリスが怒った。

 セリスは一回、ゆっくり下がってから速くレインに接近して心臓、腕、顔、足といろんな所に高速攻撃を仕掛けた。

 しかし、レインにあっさり弾かれてしまう。

 それでもセリスは何度も何度も攻撃を仕掛けた。けれど、そのたびにレインはセリスの剣を弾いたり受け流したりしている。そのたびに苛立ちが溜まり、ついに爆発した。


「なんで、なんで、なんで!なんであなたは私の剣を弾けるの!受け流せるの!なんで私はステータスが低く、スキルが何も無い人に勝てないの!」


 セリスが叫んだ途端、攻撃が雑になった。レインはこんな状態の人にも優しくなかった。いや、違う。レインは手を抜いてあげてる。その証拠に、まだ一度も攻撃をしていない。


「なんであなたはそんなに強いのよ!なんの才能も無いあなたがなんで私より強いのよーー!」


 僕はセリスを過大評価していたらしい。ただの七歳児がスキルと加護のおかげで背伸びしていることがバレなかっただけだ。

 その点、テルシアが僕にセリスを負かすように頼んだのは正解だった。今のうちに負けとかないと将来、立ち直れないかもしれなかった。


(もう、終わりにするか)


 セリスは自分がいかにちっぽけな存在なのか理解しただろう。どれだけ自分が甘やかされていたかわかっただろう。

 セリスと兵士の模擬戦を見て感じた事は兵士達が本来の力をだせていないことだった。兵士達は無意識に、セリスに怪我をつけることを躊躇い、躊躇していた。だから命に関わる戦いなら十戦中八勝は兵士達がとれる。無意識に兵士達はセリスを甘やかしていたんだろう。



 レインは手に持っていた剣を上に投げた。まわりはその意図を読みとれず首を捻っている。それに対してセリスは剣を離した今がチャンスだと思い渾身の一撃を放った。

 しかし、セリスの剣がレインに振り下ろされる事はなかった。

 セリスの剣は何かに当たったように弾かれた。いつもなら疑問に思い一度下がるが、残念ながら今のセリスは頭に血が昇っている。さっき、何が起こったか考えずにまた攻撃する。けれどレインにセリスの剣が届く事がなかった。



 セリスの剣が当たりそうになったらインパクトで弾いた。インパクトは見えない魔法なのでそう簡単にはわからない。それ故、レイン以外現状が理解出来ていない。

 僕が勝利するまでの時間があと数十秒になったので最後の仕上げをする。

 セリスに一気に近づいた僕はセリスの足を引っ掛け倒し身体を押さえた。急に倒されたセリスはすぐに理解出来なかったけど、理解をすると逃げ出そうと思い逃げ出そうと顔を
動かーーーーーーーーーーせなかった。

 僕が投げた剣が偶々・・僕の手の近くにきて、その剣をセリスの首にあてた。


「ニーナさん、これで僕の勝ちですよね」


 僕はニコッと笑い、呆気にとられていたニーナに声をかけた。ニーナはすぐに勝負の終わりを告げた。


「そこまで。勝者、レイン様」


 セリスが呆気なく負けたことに皆がまだ固まっている間、僕はセリスに命令を出した。


「じゃあ約束通りセリスさん、あなたに命令します。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」




 戦闘、難しい(´д`) 
 他の作者の方々、心から尊敬します!

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