異世界英雄のレイン (旧題:異世界英雄の創造主)

Noct@Kirusu

魔法の勉強2


 僕が思っている魔法をアイリに説明するのが終わると、話の内容をまとめてくれた。


「兄様の話をまとめると魔法そのものに優劣は無く、使い手の工夫によって魔法に優劣ができる。・・・こんなところでいいですか?」


「うん、僕の言いたいことを上手くまとめたね。それじゃあ、魔法の練習をしようか」




 魔法の練習を始めるために外に出ようとするとお母様が一緒に行くと言って、駄々をこね始めてきた。

 僕は呆れて、アイリは困っている。アイリはどうしたら良いかわからず僕に助けを求めてきた。

 こんなお母様でも、やるときはやる(僕やアイリに良いところをみせようとするとき)から不思議だ。

「お母様、何で駄々をこねるんですか?そんなに急いでいるんですか、エイナから逃げるのを」


「そ、そ、そんな訳ないじゃない。私がエイナから逃げてる間、レイン達と遊ぼうなんて考えてないからね、考えてないからね」


「ふーん。じゃ、エイナを呼んでも大丈夫だよね」


 僕は聞こえてない。お母様がすぐに「それは、ちょっと・・・」が「お願い、言わないで~」に変わったりしたなんて知らないし聞こえてなーい。


「エイナー。此処にお母様がいるよー」


 僕が呼び始めるとお母様は走ってどこかに行こうとするが、手をつないでいるため動けない。そのときのお母様の表情がコロコロ変わって面白い。


「レイン様、ありがとうございます。カレン様、まだまだ仕事は残っていますよ」


 僕にお礼を言ったとき笑顔だった。お母様に話しかけているときも笑顔だった。同じ笑顔のはずなのに違うように見えてしまう。


「ではレイン様、アイリ様。あまり遅くならないようにお願いします」


「わかっているよ、エイナ。お母様をよろしくね」


 エイナは終始、真面目な対応をとっていたが内心はお母様と同じで“魔力暴走”が起きないか心配したんだろうな。そんな必要ないけど。





 魔法の練習をする場所は家から五十メートルぐらい離れた所にある森の入り口でする。

 道中ずっと考えていたが、やはり水魔法の練習をしよう。水魔法は攻守ともに優れているから水魔法が上達すると将来役にたつだろう。


「じゃあ早速、水魔法『ウォーターボール』の練習をしようか」


「普通、魔力操作の練習からじゃあないですか?」


「えっ?」


「えっ??」


「何で?魔力操作なんてほとんど出来てるし、その証拠に『インパクト』を撃ってたよね?」


「っっ!・・・見ていたんですか」


 吃驚した。なんで、そんなに驚いたんだろう。・・・もしかして、怒られると思ったのかな?
別に怒ったりしないのに。それよりあの時は驚いたな。まさかあんなに早く覚えたなんて思ってもみなかったな~。


『インパクト』とは、無魔法の使える魔法の一つ。自分の魔力を塊にして撃つ魔法だ。この魔法の利点は普通、視認させないから奇襲に向いている。

“魔力暴走”とは、MPや魔力が高い者が魔力操作を制御できなくなり暴走してしまう状況の事だ。魔力暴走を起こすと身体にダメージがいき、最悪死んでしまう。



「アイリは凄いよ。5歳になってすぐに『インパクト』を覚えるなんて」


「私なんて全然凄くありません。兄様の方が凄いです。兄様は4歳の時に『インパクト』を使えてました。それに比べて私は・・・・・・」


「はいはい。その話はお終い。アイリはあまり謙遜しないこと。謙遜し過ぎると嫌味に聞こえるよ。だからアイリはもっと自分に自信をもって。それじゃあ、『ウォーターボール』をやってみて」


 アイリは小さくごめんなさいと言い、『ウォーターボール』の詠唱を始めた。


「《水よ、集まれ》ウォーターボール」


 アイリの詠唱が終わり発動したウォーターボールは直径一メートルで、普通の大きさより少し大きめなサイズ。『ウォーターボール』は揺れているが丸い形をためっている。一発で成功した事を褒めようとしたら、水がはじけ散った。


「最初は良かったよ。けど『ウォーターボール』の維持が途中でできなくなったね。その原因は分かる?」


「多分、最初は『ウォーターボール』のイメージができていたけど途中から『ウォーターボール』のイメージをしなかったからです」


「正解だよ。今度は最後までイメージして『ウォーターボール』を維持してみて」


「わかりました。《水よ、集まれ》ウォーターボール」




「だいたい一分かな」


「たったの一分ですか。あれだけ頑張ったのに・・・」


「大丈夫だよ。そのうち慣れてくるらしいから」


 アイリは本当に優秀だ。僕が居ても居なくても変わりないと思ってしまうほど優秀だ。それ故に困ってしまう。此処に移動した意味がなくなってしまった。
わざわざ庭でやらなかった理由は、魔力暴走をおこさなくても魔法を制御出来ない可能性があったからだ。それなのに問題がなく、庭でやっても大丈夫な程優秀だ。

 けど、こんな気持ちはほんの少ししか感じてない。だって、そんな事よりアイリの事が誇らしい。僕が兄であることを申し訳なく思うぐらい誇らしい。


~~閑話休題~~



「アイリ、家に帰るよ」


「えっ!?もうですか。まだ、三十分もたってないですよ」


「三十分もたったら遅いんだよ。お母様達にとっては」


 僕の返事にアイリは苦笑するしかない。アイリもお母様達が親馬鹿だと十分理解している。

 帰り道の途中、(家の前だけど)アイリの練習メニューが決まったので、アイリに伝えた。「『ウォーターボール』が十分間、維持出来るようになるまで庭で練習しといて。それが出来るようになったら僕に見せて。勿論、無理はしないでよ」




 ★ ☆ ★


 アイリが魔法の練習を始めてから二日後

 アイリが『ウォーターボール』を十分間維持出来るようになった。当然完璧な球体で。

 ここで常識を確認するが普通の人は『ウォーターボール』の習得に一週間かかる。しかも習得したと言っても維持出来るのは二、三分ぐらいで形もアイリより汚い。アイリのようにするには、だいたい二週間前後ぐらいだ。

 もう、おわかり頂けましたか。アイリがどれだけ天才であることか。


「ふざけながらアイリを褒めるのやめるか・・・」


「兄様?どうしましたか?」


「ん。何でもないよ。ところでアイリは将来どんなことをしたり、どんな職業になりたいの?」


「将来の夢ですか・・・・・・私が兄様のことを守り、養うこと、ですかね」


「あはは、コメントしにくいね。とりあえず、その夢のため魔法の練習をしないとね」


「もちろんです。それより次は何をするんですか」


「それはね、水魔法『ウォーターショット』と光魔法『ライト』の練習だよ。あと出来れば『ライト』の発動中『ウォーターボール』のイメージもしといて」


「わかりましたけど、『ウォーターボール』のイメージをする事の意味があるんですか?もう、『ウォーターボール』は出来るようになりましたけど」


「人生の先輩として良いことを教えてあげるよ。“現状に満足しないこと、日々努力すること”」


「人生の先輩と言っても一つ違いじゃないですか」


「そうだけど、さっき言った事は大切だよ。なんならお母様達に聞いてみたら?」


「ちゃんとわかっていますから大丈夫ですよ」


 アイリはしっかり理解出来てそうで良かった。アイリには僕と同じ過ちを起こしてない。あんな悲しくて、世界に絶望することを経験してほしくない。

「君に言われたことをしっかり覚えているよ。もう二度と同じ過ちをおこさないから」

 僕は今でも思い出すよ、あの日の事を。君が居なくなったあの日の事を。
 そして今ならわかる。君が僕をバカだと言った事が。けど、君も馬鹿だよ。こんな僕を助けるなんて。


「兄様、どうかしましたか。急に涙を流してしまって・・・」


「えっ。ああ、本当だ。何でだろうね」


 僕は涙を拭いて、笑ってアイリに話しかけるが、どこかアイリの顔が暗く見える。

 話題を変えるため魔法の話をしてもアイリの顔は暗いままだ。

「『ウォーターショット』の練習は前に行ったあの森の入り口でするよ。これは僕と一緒のときね。『ライト』の練習は自由にしていいよ。目標としては二十分間維持ぐらいかな。『ウォーターショット』は多分すぐに出来るから、出来次第水魔法『ウォーターカッター』の練習を始めるよ」










 アイリはこれから本を読み始めるから、鍛錬でもするか。最近はアイリに魔法を教えたり、本を読んだりでなかなか出来なかったし。今日は久しぶりに『インパクト』を使った鍛錬をするか。

 僕はこんな事を考えながら、剣を持ちながら森の奥までいく。




「ここまでくれば、大丈夫かな。お母様達が近くにいると僕の事を心配してすぐに鍛錬を中止させるからなー」


 もちろん僕が鍛錬をするとすぐに中止させる理由はわかっている。僕のステータスが原因だ。


「ステータスオール1なんてどれだけ低いんだよ。それに比べてアイリのステータスはたかいなー。どんな感じなんだろ」


 ステータスについて疑問しか思い浮かばない。例えば、筋力について。アイリが持てない物を僕は持てる。この事から、ステータスは絶対でないのか、僕のステータスが成長したか、異世界転生者は例外であるかのどれかに当てはまるだろう。

一番目は多分間違ってないだろ。この世界にいる人は神の存在を認めていて、ステータスを与えるのは神だと認識しているから。
三番目を検証する方法なんてないから諦めるしかない。
最後に残った二番目が正しいかすぐに調べられる。


「ステータスオープン」


 ステータスを見ると、僕の仮説が正しいと証明出来た。





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