あえて鈍感のふりをしてみた

山田太郎

第2話

〈春視点〉


 今日は兄さんの入学式で、兄さんは新しく行く高校の制服に着替えてました。
制服を着た兄さんは少し「服に着られてる」感があって、あどけない感じもして、でも私より大人に見えました。

「あ!ねえ裕太、今日母さん着物着ていい?」

「いや、やめてほんとに。卒業式に母さんが着物着てきたせいで最後の最後にネタにされたんだからね!」

兄さんの卒業式は最後少しげっそりしてましたね。でも母さんはすごい若く見えるのでけっこう似合ってたんですがね。

「むー、仕方ない。スーツで行くか…」

むーって…母さん、子供じゃないんですから…
でも、私も兄さんの入学式行きたいですね。私学校明日からですし。

「兄さん兄さん、私も行っていいですか?」

「え?いや、いいけどどうして?」

「春は大好きな裕太の晴れ姿が見たいのよ。」

ななな、何言ってるんですか母さん!!!

「そそそ、そんなことないですから!あれです!来年行く予定の学校の入学式見るだけですから!!」

うぅ、母さんのばかぁ…

「春、そもそも俺の行く学校行けんの?もちろん学力的に。」

うっ、痛いところを…ニヤニヤして言わないでくださいよ…

「それは…大丈夫…です…多分。」

英語を除けば私そこそこいけますから。英語が壊滅的ですが。

「ねえ知ってる?春、うちの入試、英語のスピーキングあるよ。しかも配点高め。」

「な!うぅ…あ、兄さん、お願いします!」

完全に忘れてました…でもでも、これを理由に兄さんと一緒に勉強できます!我ながらいいアイディアです!

「春はそうやって裕太と2人っきりで勉強したいだけじゃないの?2人っきりで」

「そ、そんなことないですから!あくまでも受験のためですから!別に兄さんと一緒に勉強するためじゃないですから!!というか、2人っきりを強調しないでくださいよ!!」

「ねぇ、時間そろそろないんだけど。父さんすごい待ってるよ。1人で。」

少し兄さんが不機嫌そうに言いました。あ、父さんのこと忘れてましたごめんなさい。

「やっと準備できたか?早く車乗るぞ。」

父さんなんか少しだけ仲間外れにされていじけてる感じですね。

「いや、俺の準備はとっくに終わってたんだけどね。あれらがアレなだけで。」

「あれは裕太がまとめろ。」

ひどいです。父さんと兄さんにあれ扱いされました。
まあこんなこと思ってても仕方ないので私も着替えましょう。とりあえず制服でいいですかね。

「じゃあ俺たちは先行くから。あとで裕太送ってから迎えに行くから着替えておけよ。」

「はい。いってらっしゃいです。」

朝からいじられましたが、今日の主役は兄さんなので、さすがにもう大丈夫ですよね。ということでもう部屋に戻って着替えましょう。何か兄さんの視線が気になりますが無視です。

「じゃあ、父さん帰ってくるまで私は裕太の分まで春いじってるからゆっくりしてっていいよ!」

「よろしく頼んだ!」

大丈夫ですよね!?







〈裕太視点〉

今日は俺の高校の入学式だ。新しい制服を着て入学式の準備をしていた。そこになんと愛しのmy sister春が手伝ってくれた。もうほんとかわいすぎる。母さんがニヤニヤしてるのが少しうざい。

「あ!ねえ裕太、今日母さん着物着ていい?」

「いや、やめてほんとに。卒業式に母さんが着物着てきたせいで最後の最後にネタにされたんだからね!」

あの時は地獄だった。俺の母さん以外はスーツとかだったのに母さんだけ着物だしめっちゃ泣くしで大変だった。

「むー、仕方ない。スーツで行くか…」

むーって…年考え…げふんげふん。俺は何も思ってない。だから母さんが俺を睨んでるのはきっと何かの間違え。壁のシミの数でも数えているんだよきっと。あ、新築だからシミねーわ。

そんな現実逃避(笑)をしていたら、ウズウズしてた春が唐突に口を開いた。

「兄さん兄さん、私も行っていいですか?」

「え?いや、いいけどどうして?」

いや、くるのは構わないけどつまらないよね。

「春は大好きな裕太の晴れ姿が見たいのよ。」

あー、そういうことね。春も大概ブラコンだよね。俺以上でしょもう。もう春顔真っ赤にしてるよ。

「そそそ、そんなことないですから!あれです!来年行く予定の学校の入学式見るだけですから!!」

顔真っ赤にしながら言っても説得力ないよ。やばいかわいすぎる…ちょっとニヤケちゃったけどバレてないよね?少しごまかすために春をいじるか。ここで煽るの大切。

「春、そもそも俺の行く学校行けんの?もちろん学力的に。」

英語以外はいいけど英語が壊滅的だからねー。

「それは…大丈夫…です…多分。」

多分って…スピーキングとか春もう無理でしょ。あれ結構配点高いんだよね。

「ねえ知ってる?春、うちの入試、英語のスピーキングあるよ。しかも配点高め」

「な!うぅ…あ、兄さん、お願いします!」

ん?なんでそんな閃いた!って顔を…あー、俺と一緒に2人きりで勉強しようってことかー。ほんとこの子ブラコンすぎでしょ。俺以上じゃない?これもう。

「春はそうやって裕太と2人っきりで勉強したいだけじゃないの?2人っきりで」

「そ、そんなことないですから!あくまでも受験のためですから!別に兄さんと一緒に勉強するためじゃないですから!!というか、2人っきりを強調しないでくださいよ!!」

なんでこの世に未だにツンデレが需要あるかすごいわかるわ春見てたら。
このまま春を見てるのもいいけど、もう時間やばいんだよなぁ。

「ねぇ、時間そろそろないんだけど。父さんすごい待ってるよ。1人で。」

父さん会話に混ざれないし忘れられてるからしょぼんとしてるよ。

「やっと準備できたか?早く車乗るぞ。」

「いや、俺の準備はとっくに終わってたんだけどね。あれらがアレなだけで。」

「あれは裕太がまとめろ。」

もはやあれ扱いなんだね。いや、俺もあれ扱いしてるけどさ。

「じゃあ俺たちは先行くから。あとで裕太送ってから迎えに行くから着替えておけよ。」

「はい。いってらっしゃいです。」

春のいってらっしゃいいただきました!
でもまだ春いじってたいなぁ。ほんと春といるのは楽しいから。俺も大概シスコンだわ。あ、でも春と違って恋愛対象でみてないからね!…今のところってつけとこ。

「じゃあ、父さん帰ってくるまで私は裕太の分まで春いじってるからゆっくりしてっていいよ!」

「よろしく頼んだ!」

母さんならきっと動画を撮ってくれるだろう。こういう母さんすごいノリいいし。
さて、春のことは母さんにすべて任せて、俺は入学式で恥かかないようにしなきゃな。

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