少年と武士と、気になるあの子。

B&B

始まりの夜に(三)


 午後の九時近くになろうという頃、僕は祐二は、内海こと、うつみっちの三人で固まり、柔道部の副部長をやっている山田から、これから行う肝試しの説明を聞いていた。
 集まったのは男子二〇名、女子一五名の合計三五名で、今回の合宿に参加した約三割が参加したことになる。
「なんで、一グループ男子三人、女子二人を基本だけど、一グループだけは男二人女三人ってことで。目指すは合宿所裏手の山の山頂。全員が登頂したら、全員で下山と流れにしたいと思う」
 簡潔すぎる説明に、善貴はなんだか嫌な予感がしてならなかった。いくら三〇名以上の人間がいるからといって、参加生徒の三割もの人間が合宿所を抜け出して肝試しなんて、もしバレでもしたら一発だ。
 いや、はっきり言って今からでも抜けて、部屋に戻って眠りたい気持ちでいっぱいだった。これからの時期は、内申にも響かないとはいえない大切な時期のはずなのに。
「OK、山田。けど、それだったら男子四人の女子三人じゃだめなのか?」
「ちょっとでも人数少なめの方が雰囲気あるっしょ。ほんとはもっと少人数のグループの方が良いけど、時間が時間だしな」
 それもそうか、とそれ以上男子たちは山田に意見することはなかった。女子たちも同意見のようで、特に提案が上がることもなく、早速グループ分けとなった。
 善貴はそれとなく抜け出そうかと画策していたのだけど、人数でそこまで割り当てられるとなると、抜けるに抜け出せない雰囲気が着実に出来上がってしまっていた。
 こうなっては仕方ない。腹を決めて成り行きにまかせることにした。善貴は祐二と内海にも聞こえない程度の、小さなため息を漏らして視線を泳がせる。
 視線を泳がせた先で、はた、と一人の女子生徒と視線が合った。向こうもなんだか気乗りしないような面持ちで、僕と同様に、視線を虚空に彷徨わせていたのかもしれない。
 なんとなくだがその表情が明るくない。いつもそんな感じのような気がしないでもないが、明らかにその瞳は不安げだった。その女子生徒――桜庭澪は表情を強張らせ、僕と視線を交わらせている。
 ショートカットに、やや円らな瞳はくっきりとした二重瞼のせいか、くりくりとした瞳は小動物か何かを思わせる、可愛らしい感じのする子だ。真面目で、こういうイベントごとにはあまり積極的でない印象を持っていたが、どんな風の吹き回しか彼女も参加するつもりらしい。
 いや、彼女のいるグループは結構こうしたイベントごとが好きそうな感じだから、いつも一緒にいる友達の手前、無理やりにでも参加させられてしまったといったところだろうか。実際、彼女と仲の良い女生徒たちは楽しそうな表情で山田の説明を聞いていた。
 可哀相な子だな、と僕は思った。なんだってこんなイベントに参加しなくてはならないのか、その気持ちは痛いくらいに分かるからだった。僕とて、本当は部屋の布団で就寝を待つまでゆっくりと過ごしているはずだった。なのに、今こうしてこんな場所にいる。それが憂鬱でないはずがなかった。
「だけど山田、万一の時どうすんの?」
 瀬名川悠里たちが女子グループの頂点なら、そう質問をぶつけた男子たちはその女子グループを狙うべく、男子グループの頂点にいる連中だ。
 彼らの思惑などお見通しで、瀬名川悠里たちが参加するから参加する、それだけだろう。祐二の話では、僕を探しに行く前には肝試しになんて参加する気ゼロだったようだから間違いない。
「ふふふ……ご安心めされぃ」
 山田は得意げに鼻を鳴らしながら、ポケットからある物を取り出した。善貴も説明を受けている間、山田のズボンのポケットが妙に膨らんでいることはいぶかしんでいたが、そのある物とは無線機だった。
 そしてその無線機はさらに数台あり、それをグループ分けされたリーダーに渡して万一に備えるという。スマホもない以上、こういうのは当然の装備といえばそうだけれど、一体どこから入手したのか個人的に興味があったのは言うまでもない。
「これなら何かあっても問題ないだろ」
 得意げな山田に、男子グループからは良くやったという褒めの言葉が飛んだ。善貴はといえば、そんな話じゃないだろと再びため息をつき、本格的に成り行きに身を任せる覚悟を決めた。



 カサカサと夜風に靡く木々の葉枝が、なんともそれらしい雰囲気を作り出していた。肝試しなんて小学生の時以来じゃないだろうか……そんなことを考えながら、善貴は山頂へと続く山道を登っていた。
 善貴のグループは、いつものメンバーである祐二と内海たち三人と、それに桜庭澪と友人である高倉浩子たかくらひろこを合わせた五人だ。
 祐二は夜目が利くからと、さほど山道をものともしていないが、言いだしっぺの一人であるはずの内海はといえば、巨体に見合わないほどに身を縮こませて祐二を後ろをついていっている。
 だったら始めっからこんな企画するな、と心で突っ込みをいれながら、善貴は懐中電灯を持つ役としてグループの先頭に立っていた。女子の二人は何とも言えない表情で男子三人の後を着いてきていた。
 というより、そうさせているのは高倉ではなく桜庭で、高倉は山田の説明を聞いていた時からワクワクしているのを、善貴は見逃さなかった。
 けれどその彼女も、夜の山道は雰囲気があるせいで多少強張っているのかと思ったのだが、そうではなかった。それ以上に、彼女の後ろで怖がっている桜庭のため、楽しんでいるというより、落ち着かせようと宥めようとしている感じだ。
 恐らく、肝試しの話がきた時、こういうイベントごとが好きそうな高倉は即座に参加を表明したものの、苦手な桜庭は置いていかれたくがないためについてきたといったところだろう。僕は不安になって振り返ると、桜庭は完全に高倉の後ろで肩に手をやって前を向かないようにしていた。
 そんな調子で善貴たちが合宿所を出発して、すでに二〇分ほどが経過している。山田の説明では、山頂まで三〇分から四〇分程度の道なりであるそうだから、ざっと半分ほどの行程を進んだことになる。
 まるで知っているかのような山田の口ぶりに、どうやってそれを知ったのだと突っ込みを入れたくて仕方なかったが、それを言ったところで意味がないと判断し、善貴は懐中電灯を持つ者として、無駄を無くしてはるべく早く山頂に行けるように先導することだけを心がけた。
 自分たちは七グループ中、五番目だからまだ後ろに二グループいる。もし何かあっても大丈夫だろうという気持ちもあった。そうして山道を三分の一ほどきた時、何を思い出したのか祐二がふと口を開いた。
「そういやさ、昔ここいらは戦場だったらしいよ」
「戦場?」
 はて?と善貴は首をかしげた。自分が知る限り、ここらで戦があったなどというのは聞いたことがない。もちろん、戦国時代の全てを知ってるわけではなく、その辺は専門家の領分だ。
 それでも大雑把に知っているだけでも、ここらで一番近い主戦場まで、ざっと山を四つ五つは越えなくてはならない。さすがにこれだけ離れたこの場所で、そんな戦場になったような話など聞いたことが無い。
「戦場つっても、歴史に載るような大きなもんじゃなかったらしい。なんでも複数人の武士が、百人だか二百人だかの落ち武者を相手に大立ち回りしたって話」
「たかが数人でそんな規模の武士相手に立ち回れるもんか」
 僕は思わず突っ込んでしまった。祐二は何か言いたそうにしていたが、それを飲み込んで続けた。
「で、ここからさ。なんでも結局大勢の敵に囲まれた武士が怨み辛みで、その敵勢に呪いをかけて死んだって話。以来、この山じゃ夜な夜な多勢に無勢だった武士が亡霊になって徘徊してるらしい」
 肝試しというこの絶好のシチュエーションをより盛り上げようという、肝試しにうってつけのトーンで話す裕二に、僕は魂胆が見え見えの嘘をついたって無駄だぞと突っ込もうとした。
「きゃあああああああああ!」
 背後から突然の悲鳴。心臓が口から飛び出すかもしれないほどの驚きのあまり、全員がその場に身を固くさせて立ち止まった。
「ちょ、ちょっと澪!」
 このシチュエーションを楽しんでいた高倉も、さすがに突然の絶叫に驚いている。祐二も内海も、普段物静かで、まともに声すら聞いたことのない女の子の大声に驚かないはずがなく、二人もつられて驚きの声を上げていた。
 僕は声を上げることはなかった……というより、あげる事すらできず持っていた懐中電灯を落としてしまった。そりゃそうだろう。こんな人気のない夜に、多少は整備されているとはいえ、ほとんど手入れのされていない狭い山道、おまけに灯りは持っているのは懐中電灯だけというこのシチュエーション。
 加えてホラ話とはいえ、祐二の盛り上げる話とくれば、この手の話題が嫌いな人間にとって叫ばずにはいられないはずがなかった。叫んだ彼女からすれば気が気でないに違いない。
「驚かさないでよ澪! 永井も澪驚かすようなこと言うのやめな」
「ご、ごめん。まさかこんなに驚くなんて……」
 驚いていたところに叱責され、おどおどと謝る祐二をよそに、高倉はもはや泣き始めた澪を宥めるため、一向はその場で立ち止まるしかなかった。かくいう僕も、足に緊張が走ってしまっていて固くなっていることに、ようやく気づいたほどだ。
 やれやれ……下手したら今の声で、下の合宿所にいる教師たちに気付かれたかもしれないぞ。その可能性を考えると色んな意味で怖いな、などと考えていた善貴は懐中電灯を拾い上げ、向かう道の先を照らした。すると、少し行った先で道が二股になっているのが見えた。
「あれ?」
「どったの、よしき氏」
 怪訝に眉を潜ませていただろう僕に、もはや泣かせてしまった女の子のことなど気に留めることもなく問い返した。
「祐二、この道ってさ、ずっと一本道のはずだよね?」
「……のはずだけど」
 照らした先を見据えながら言う僕に、祐二もそう言いながら目をやると、僕と同じような反応をして見せた。
「なんだあれ?」
 祐二がその調子でいると、今度は内海も視線を追って二股になった山道の様子を不思議そうに見つめた。澪を宥めていた高倉もまた同様だった。
「ちょっとちょっと、これ、どういうことなの。内海君、あんた知ってるんじゃないの?」
「え? いや、確か昨日見た時はずっと一本道だったはずなんだけど……」
 内海が思わず口を滑らせた。やはり、この肝試しを企画した首謀者は内海だったのだ。けれど、内海の様子が明らかにお祭りを楽しむといったものから、真剣に困惑している様子で、二股になっている道を見て明らかに動揺の色が見える。
「山田君と一緒に山頂まで行ったんだけど、完全に一本道だったんだよ。だから肝試ししようってことになったんだけど……」
 困惑した様子の内海は、しどろもどろにそういった。そりゃぁそうだろう。内海も山田も、一応羽目を外してはいるが、安全を全く考慮しないような奴らでもないはずだ。山田についてはまだ良く分からないけれど、少なくとも内海についてはそんな奴でないことは重々承知しているつもりだ。
 しかし現実に、僕たちの誰からの目で見ても一本道であるはずという山道は、左右斜めに、綺麗に二股に分かれている。案内板もないこんな場所では、最悪遭難しないとも限らない。
 昔父が言っていたことを思い出していた善貴は、頭を抱えた。なんでも、たかが数百メートルしかないような山でも、きちんとした道がなかったり、全くの案内板もないような場所で一歩道を外し間違えたりでもすると、格段に遭難してしまう危険が高まるのだという。
 もちろん、ちょっと知識があれば対策できないこともないが、全くの素人ではその危険は十二分にあると……。そんなことを唐突に思い出す僕も僕だけれど、こういうアウトドアが好きでしょっちゅう出かけている父の格言である。
 知識とはきちんと身につけておくことで初めて活用、応用することができると何度も教わった。ましてや知らない場所である以上、その心得に従う他ない。善貴は盛大にため息をついて言った。
「仕方ない。とにかくあそこまで行こう」
 四人を促して二股までやってくると、本格的に僕らは頭を悩ませることになった。両方をライトで照らしてみると、互いとも同じような道になっていて、山頂まで行くはずの道は、なんでか、どちらもちょっといった先で一旦下ってしまっているのだ。
「内海、山頂ってどっちの方?」
「えと……多分、あっちだと思う、けど」
 なんだか自信なさげだ。こういう時はあまり信用できない。善貴はそう考えて左を、そして次に右を向いて言った。
「良し、こっちに行こう」
「え? よしき氏……」
 半ば強引にそう決めた善貴に、祐二が不安げにしている。けれど、それを気にしているわけにもいかない。
 僕はここまでの道のりにかかった時間と、山頂までにかかる時間とを逆算して、後一〇分とかからない場所にいるなら一〇分歩いて山頂に着かなければ間違った道だろ、と皆を納得させる。
 祐二も内海も、もちろん高倉も特に反論がないようなので、僕は頷いてまず右を行くことにした。一応理論的に考えてそう言いはしたものの、実際のところは五分もすれば答えが見つかるに違いないのでは?と踏んでいた。
 ここまでのところ、多少のアップダウンがあったけれど、ほとんど登り調子だった。なのでここにきて、途端に急下がっていくなどということはあまり考えにくいのだ。
 山自体の大きさもある。これがもっと大きな山なら、何十メートルかあるいは数百メートル続く下りもあるだろうが、この程度の規模の山なら大抵はすぐ行けば登りになるはずだった。だから間違っていても、すぐに引き返すことができるはずだと善貴は考えていた。
 まだ泣き止まない澪は高倉に任せて、僕たちは右の道を進んだ。下っていた道は、ちょっと進むと思っていた通り、すぐに登り調子になった。善貴の説明通りになったと男子二人が喜ぶと、その様子を見て不安げだった高倉も、ビビッてた癖にと冗談めかして言った。泣き止みつつある澪も、そんな三人に釣られて笑みを浮かべている。
 もちろん、それは善貴も同じだったけれど、昨日は一本道だったという道がなぜ今日に限って二股になっていたのだろうか、という疑問に手放しに喜べるような気分ではなかった。皆の手前ああ言ったけれど、もしかして自分はとんでもないミスをしたんじゃないか。そんな不安もないわけではなかったからだ。
 さらに進むと、道は急激に勾配がきつくなり出した。道の先は明らかに山頂へと向かっているのが良く分かる。それを見ると、ようやく善貴にも安堵の表情が浮かんだ。
 やっぱり間違っていなかった。二股になっていたのも、きっと内海と山田の見間違いだったのだと、そう結論付けようとしたときだった。
「この道なんか違う……」
 内海が一人呟いた。束の間喜んだ僕たちは、何を言ってるんだと言わんばかりに内海を、追い立てるように山頂へ続く道を強引に登りきる。すると、開けた場所で数人の見知った顔が、突然背後に現われた僕らを見て彼らは全員が全員、驚いた表情を見せていた。
「え? お前ら、なんでそんなとこから出てくんの?」
 明らかに予想外の場所から出てきたらしい僕らを、怪訝に思いながら言う山田に対して内海が事情を説明する。すると、山田とそれ以外のメンバーたちも何やらざわめき立った。
「どうしたの?」
 善貴が問いかける。すると、陸上部でエースだという伊東が事情を説明した。
「瀬名川がいない?」
 五番目として善貴たちグループは出発したわけだから、単純に計算しても前の四組、つまり二〇人がそこにいなくてはならないはずなのに、見たところ一八人しかいない。その中には確かに、自分たちよりも先に出発しているはずの瀬名川の姿が見当たらない。
 善貴はなぜか妙な胸騒ぎを覚えた。いや、別に僕が心配するところじゃないだろ。そう言い聞かせたけれど、どうにも余計に意識してしまうのか、胸騒ぎが余計に大きくなるだけだった。
「あともう一人は?」
「九鬼がいないんだ。あいつ、途中からいなくなったみたいなんだよ。ま、あいつのことはほっといても、セナちゃんのことは心配だわ」
 九鬼とはクラスでも特に目立つ存在で、普段から粗暴な態度で、人をおちょくるのは当たり前、喧嘩っ早いことでも有名な奴だった。だらしなく着た制服を教師に咎められてもその場でこそ直すが、それも一〇分としないうちにまた元に戻っているという、ある意味で自分を貫いているような輩だ。
 それだけなら良いが、九鬼は明らかに善貴たちを快く思っていないことは明白で、彼らを最下等のオタクグループとして位置づけさせたのも、他ならぬ九鬼だった。そ
 れだけに善貴も、九鬼についてはあまり快く思ってはいなかった。明るく人好きのする伊東に、ほっといてもなどと言わせる辺り、やっぱり九鬼が周囲から良く思われていないことは確実だった。
 伊東についてはむしろ、良くあんな男と同じグループで我慢できたなと、尊敬の念すらあるほどだ。
「今から他のメンバーで、セナちゃんのこと探しに行こうって話だったんだけど、そこんところに竹之内たちが来たんだよ」
 僕は伊東の説明を聞いてようやく事情が飲み込めた。内海と山田が使って登った道は一本道だっただけで、他にも別にルートがあった。どうやら何かの手違いで、僕らは本来二人が事前に調べておいたルートとは、別の道から登頂してきたということだった。
 それを今の段階になって知った山田が、そっちに行ったんではないかというところ、そのルートを使って僕らがやってきたので驚いたということだろう。けれど、だとすると少しばかしおかしな話になってくる。
「祐二、ここまで登ってくる時、人影なんて見た?」
「いんや、おれは見てないなぁ。うつみっちと高倉さんたちは見た?」
 祐二に振られて三人も首を横にした。そうなのだ。僕らが登ってきた道に、瀬名川らしい人影は見当たらなかった。
 仮に、はぐれた瀬名川が僕らを見つけたとしたら、それこそライト目当てに近づいてきただろう。そうであれば、こちらも物音に気づくはずだ。
 もちろん、山中の暗闇に紛れてそもそも見つけられなかった可能性もあるけれど、それは仕方ない。これだけ暗いと、いくらライトがあっても視界はかなり制限される。その中で人ひとり見つけるというのは、想像以上に難しいのだ。
 それに、だ。もし瀬名川が何らかの理由でグループからはぐれたとしても、後続のグループが山道をきていれば、やはり向こうも向こうで全く気づかないというのは少しおかしな話だ。
「無線は?」
「台数分あるよ。後続グループに渡した分も問題ない」
「そもそもなんで瀬名川はいなくなったんだよ。グループ行動してたんなら瀬名川と九鬼……は良いとしても、おかしくない?」
「うん……そうなんだけどさ。登ってくる時、盛り上げようと思って怪談話しながら登ってきてたんだけど、その時に、な」
 身に覚えのある話だった。祐二が突然怪談話をし始めて怖がらせようとしていたが、皆考えることは同じだということだろう。
「で、そしたらさ、どっかですげえ叫び声が聞こえてきて驚いちまったんだ、そしたら……」
 身に覚えのありすぎる話だった。それはどう考えたって……。僕は思わず桜庭澪のほうを向いてしまった。彼女も絶叫してしまった自分を恥じているのか、高倉の背後に隠れるように俯いてしまっていた。つまりはそういうことだったのだ。
 僕はため息をついて言った。
「実はここに来る途中、分かれ道があったんだ。もしかしたら瀬名川もそこにいるかも」
 なんだか釈然としないけれど、とりあえずここは人命最優先だ。山田はこの事態を後続のグループに伝えている。どうやらこのまま肝試しは中止になりそうだった。




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