チートな俺の異世界生活

日ノ丸太郎

3話 チートな俺とゴブリン二人組

この場の空気には似合わない穏やかな風が健太達を包み込む。

「おはよう。 気分はどうかな、 先輩ゴブリン?」

先輩ゴブリンを嘲笑うかのように健太は言った。
その瞬間先輩ゴブリンの眉がピクリと動く。

「最悪の気分に決まってるだろ」

「だろうな」

先輩ゴブリンは健太を睨み付ける。その手には既に力が籠っており、今にも健太を殴りそうだ。

(チッ今すぐにでもこの人間をぶっ殺してやりたいところなんだが…このままやっても無駄死にするだけだろうからなぁ…とりあいず何で俺達を生かしたのか聞くか)

「それで、何故俺達を生かしたんだ…人間」

「それは、お前を俺の眷族にするためだ」

眷族…それを家族と呼ぶ者もいれば、はたまた奴隷や玩具と呼ぶ者もいる。

眷族化ができる者は限られていて、誰しもできるわけではない。これができる者はいずれ王になる者が多いい。まれに王にならない者もいる。

(おいおい、この人間正気か? ゴブリンである俺を眷族にしたいだと…何考えてやがる。だが、眷族にするにはかなり魔力を消費すると聞くな…よし)

先輩ゴブリンは両腕をあげる。

「わかった、なろう。お前の眷族になろう」

(もう少し嫌がると思ったのだが、まぁ楽なぶんにはいいか)

「よし、では」

健太はその場から立ち上がる。
そして先輩ゴブリンの方を指さし。

「今日からお前の名は…」

「ちょっと待ってくれ」

「ん?」

先輩ゴブリンは手を前に出し、健太の目を睨み付ける。

「何だ? やはり嫌になったか?」

先輩ゴブリンは首を振る。

「いや、そう言うわけじゃないんだが…
人間、お前って眷族作ったことあるのか?」

「ないが」

「…ならもしも、もしもだ。 もし、俺を眷族にできなかった場合、俺達を無条件に解放してくれないか?」

その瞬間健太の顔が先輩ゴブリンが目覚めた時とどうようニヤリと笑う。

「何言ってんだ…ゴブリンそんなこと」

健太がレイの前に手を出しレイがそれ以上何か言うのを止める。

「いや、いいだろう」

「ですが!  健太さん!」

「安心しろ、俺ができないはずがない」

(…この人間もしや貴族か? …いや、そんなわけないか)

「では言うぞ?」

「ああ」

先輩ゴブリンはコクリと頷く。
そして健太は勢いよく先輩ゴブリンを指さしこう言った。

「今、この時からお前の名を……豚男とする!!!」

((は?))

その名が先輩ゴブリン改め豚男の脳内で何度もリピートされたのは言うまでもないだろう。

眷族につける名とはやはり、特別なものである。 何故か、それは今後の成長に大きく関わるからだ。 例えば属性に目覚めていない今の豚男のようなやつにカガチと言う名前をつけるとする。 するとその者は火属性に目覚める確率が多く。吹雪と言う名なら、氷属性に目覚めやすいと言うことだ。

(おいおい、今のは却下だろ、取り消しだろ? 冗談だよな? 俺の聞き間違えだよな?)

すると、豚男の目の前に白く燃える板状のものが出現する。そこにはこう書いてあった。

【佐藤健太様から眷族の証として『豚男』と言う名を授かりました。 この名を受け取り
自らの名とし、健太様の眷族となりますか?】

【はい    いいえ】

(てか、おいおい嘘だろ!?  マジで出現したよ! どうゆうことだよ! ……ち、しゃーねぇはいを押すか)

豚男は右手人差し指で、はいのところに触れた。その瞬間だった。

はいに触れた人差し指から青白い炎が豚男を飲み込んだ。

「う、うわ! なんだこれ!?」

突然のことに思わず変な声で驚く豚男。

(む? どういうことだ。 まさか、豚男が焼けて焼き肉になってしまうのか? 美味しくなさそうだから誰も喰わんぞ? ドンマイ豚男ではなく。 これはなんなんだ?)

その炎は数秒で消え去った。 そして、そこには豚男と思わしき人物が立っていた。
何故思わしきなのか、それは先程のゴブリンのような濃い緑色とは違い、肌の色が肌色になり、体型も先程より大きくなった豚男擬人化(誰得)になっていたからだ。

(あー死ぬかと思ったぜ…まさか種族の追加がこんなのだとは、だがこれでコイツの眷族ってわけか)

「誰だ、お前は?」

健太は豚男を指さしそう言った。

「あ? 俺だよ。 てめぇに変な名前をつけられた、豚男だよ」

はぁと豚男は溜息をつく。

「まさか、眷族化は種族追加があるとは聞いていましたが、こうも変わるとは」

「種族追加?」

「はい、眷族化する時に名付け主の種族が名を付けられた方つまり主の眷族になったものに、主の種族が追加されるんですよ」

「つまり、俺は今ゴブリンであり人間と言うわけだ」

ゴブリンはその場に腰をおろす。

「ふむ、まぁその方がいいな、町に行っても違和感がないし」

(ん…頭が痛い。 あれ、自分は確か)

後輩ゴブリンは静かに目を開ける。 目に見えたのは
先程の森に似た木。 と言っても変わるはずもないのだが。
後輩ゴブリンは顔を右に向ける。

(肌色…人間!?)

いっきに後輩ゴブリンの意識が覚醒する。

(そうだ、俺は…)

「お、起きたな後輩」

豚男は後輩ゴブリンの方を見てそう言った。

後輩ゴブリンが起き上がる

「いや、誰すかあんた? 赤髪の野郎以外はしらない顔なんすけど…てか、何であんた先輩と顔が似てるんすか?」

「起きたようだな、ゴブリン後輩」

(この人間は誰っすか? 何故俺を生かしているんすかね?)

「俺は健太だ。 お前をおもいっきり殴ったやつ。 で、コイツは顔が似ているのではなくお前の先輩だ。 まぁ 今はもう俺の眷族となり、豚男と言う名になったけどな」

「アンタがって…そんなことはもういいっす!そんなことより、先輩がそんなことするわけないっす! 人間何かの眷族になるはずがない!」

ゴブリン(後輩)は顔を左右に振る。

「信じるかはお前に任せるが、俺は眷族になった。 お前も死にたくなきゃコイツの眷族になれ」

ゴブリン(後輩)は少し驚いたような顔をしたが、そのあと豚男をじっと見る。

「わかったす。 人間、俺も眷族にしてくれっす」

(この人は多分先輩だと思う。何となくわかる、けれど人間の眷族か…先輩、人間の眷族になるのだけはごめんだぜとか言ってたのに)

「ほぉ そうか、お前の名前はもう決めてあるし、さっそくだが言うぞ?」

健太はゴブリン(小)を指差す。

「お前の名は高太だ!」

(おい、後輩の方がましな名前なんだけど…
ち、 まぁ いいか、さすがのやつも二人目の眷族を連続で作るとなると魔力が尽きて気絶するだろ。 するよな?)

豚男と同じく、ゴブリン(後輩)改め高太ははいを押して青白い炎に包まれる。 
豚男は健太の方を見る。

(あーもう、倒れないよコイツ。マジかよ
魔力バカだなこりゃ、はぁ こんな化け物に勝てるわけないな)

「さて、あとは金髪が起きるまで待つとするか」

健太は金髪少女の方を向きながらそう言った。

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