全てに飽きた俺は異世界を廻る

如月 颯

7話『まさかの初出発』

「はい、じゃあこれでチームの登録は完了しました。」

受付のお姉さんは俺達が書いた書類をしまいながら言う。

ガーネットの言っていた冒険家と同じチームになる事で受けられる補償的なものは、冒険家がチームのリーダーではいけないらしく、流れでリーダーになった。

最もまだ2人ではあるが。

登録が終わった時には、小さな手のひらサイズの機械が渡された。チームメンバーが増えたり減ったりした時などに使うらしい。


チームの登録は意外と簡単なものだった。

名前を言ってアビリティライセンス見せて、それで契約書みたいなの書いて。


とりあえずでギルドの酒場のカウンターに座った。

「これで、私たちはチームね。」

「あぁ、そうだな」

ガーネットは呑気に言ってる。

「ところで、いつこの街を出るとかは考えてるの?」

そういえば...

いつまでもこの街にいるっていうのは、冒険家としては望ましくないだろう。

しかし冒険の準備はまだ出来ていない。

前のように魔物が出るなら、もう1人ぐらいは仲間が欲しいし...

「うーん...」

「決まってないのね...」

「まぁ、そうだが」

頼んでいた飲み物が出される。

もちろんお酒ではない、ジュースのようなものだ。

「まぁ今日位はゆっくりしましょうか。」

ガーネットはグイグイ飲みながら言う。

ガーネットはまるで酒を飲んでいるみたいだ。

俺もそれをなんだコイツと思いながら、ジュースを飲む。

「あの...すいません...」

肩がトントンと叩かれる。

俺の肩を叩いた主は受付嬢だった。

「えっと...どうしましたか?」

受付嬢は申し訳無さそうにしているので、何事かと思う。

「あの...実はこれ...」

受付嬢は俺に持っていた紙を見せる。

紙には『ガーネット・スフィア殿 貴殿に責務を課す』と書かれていた。

「ふーん、だってよ」

俺はガーネットに受付嬢から紙を受け取り、見せる。

紙を見たガーネットは目の色を変えて俺から紙を奪う。

「ん? どうした?」

「い、いや何もー?」

「ふーん、で、責務だってよ。頑張れよ」

「いやいやいや、チームでしょ?手伝ってよ!!」

だよなぁ

「わかったわかった」

今日は休みたかったが仕方ない。

あれ?でも...

「チーム、組んだら責務無くなるんじゃないのか?」

受付嬢もチラ、と見ながら言う。

「あの...それは...実は今日はガーネットさんの責務がある日だったんですよ。チームを組んでも、その日に責務があるならやって頂かないと...」

「もしかしてさっきバツが悪そうにしていたのって」

「はい...ガーネットさんとても嬉しそうだったので」

なるほど。

「で、どこなの?場所は...」

「えぇっと...」

ガーネットの言った仕事内容を要約すると、この国を南に出た方にある新しく見つけられた洞窟に住んでいる新種モンスターの討伐、洞窟内の調査、だそうだ。

「なるほどねぇ...」

「と、言うことですので、送迎が着きますので、準備が出来たら仰ってください」

受付嬢は仕事に戻って行った。

「まぁ行きますか...」

「そうね...」

俺達は重い腰をあげた。

「あ、そうだ。行く前にちょっと店とか寄っていいか?」

今の俺は旅人の服状態に剣も盾もない。

「装備?まぁ必要よね、行きましょうか」

昨日門番から貰った地図を見ながら色々見て回る。

「ちなみに予算はどれほどで...?」

「おい、手をスリスリすんな」

んー、と悩みながらお手頃価格のナイフとまぁ妥協点の盾を買った。

「それしか買わないの?もしかしてお金ない...?」

「違ぇよ。色々考えてんの。」

その後、道具屋に寄って薬草から毒消しそう、というかほぼ全ての状態異常に対処できるようにした。また他にも売っていた空き瓶や縄、糸、そして爆竹的な物を買った。

「えぇっと、その本は何?」

「植物大全集だ。花や、葉、根、キノコまでほぼオールカバーだぞ」

「なんでちょっと誇らしげなのよ...」

そう。俺はコンビニに売っているちょっと癖のある本を迷わず購入するタイプだ。

しかしこの本、ナイフや盾より出費してしまった...

「かなり買ったわね...」

「あぁ、予定以上にな」

ギルドに向かう時、お金ギリギリで小さめのカバンを買った。



ギルドに着いた後、受付嬢に話して馬車に乗った。

「ある意味初責務ね。万能凡人君。」

「そうだな。最初で最後だよ」
「あと万能凡人ってやめろ」

まぁいいじゃない。そういいながらガーネットは外を見ている。


案外悪くないかもしれない。
こちらの世界は。

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