全てに飽きた俺は異世界を廻る

如月 颯

6話『こう見えて脳の処理は追いつかない』

あれから目を覚ましてボッーと天井を見上げていた。

ガーネットが起こしに来てないという事は、あいつはまだ寝てる。

仕方ないしラジオでも聞こうか、と思い体を起こすと、ポケットから何かが落ちる。

拾ってみると、アビリティライセンスだった。

「そういえば、これ、どうやって使うんだ?」

ガーネットが魔力がどうとか言ってたのを思い出す。

「魔力を流すって事か?」

自分に魔力などあるのだろうか、はっきり言って不安しかない。

アビリティライセンスを持ち、ぐっと力を入れてみる。

アビリティライセンスは光り、起動したようだ。

「こんな感じで良いのか? 」

アビリティライセンスを見ると様々に文字がひゅんひゅん移動してる。

名前、職業、個人の情報がアビリティライセンスに刻まれていく。

「すごいな、これは」

アビリティライセンスは『スキル』と表示された所が薄く光っている。

「ここを押してみろって事か? 」

軽く触れてみる。

『ここは、新たな能力、スキルなどの解放で主に使用します。』

画面上に急に表示される。

「チュートリアルかよ...」

表示を消し、スキルツリーと呼ばれるものに目を通す。

「んー、色々覚えられるみたいだな」

それはゲームで見たようなもの、そのままだった。

「色々あるな。あいつとはチームを組むんだからバランス良くしたいしなぁ」

なんてブツブツ言ってると、

「イツキー? 起きてるー?」

なんて呑気な声と一緒にドアが叩かれる。

「あぁ、起きてるぞ」

適当に返事をする。

「じゃあ、ギルドに行くために準備して、したで待ってるから。」

「あぁ。」

そういえばチームを組むための書類みたいなの出しに行くんだったけか。

大きくため息をついて準備を始める。




下につくとガーネットはしっかり待っていた。

「来たわね。ギルドに行く前に軽く朝ごはんでも食べに行きましょうか。どうせ何も食べてないんでしょ?」

その通りだ。

「あぁわかった。昨日のあの店でいいか?」

そうしましょう。なんてガーネットは言いながら歩き出す。



店に着いて、席について、2人で朝食セットとやらを頼んだ。

パンに目玉焼き、スープとサラダもついてなんと250円。

正式に言うと円ではなかった。この世界でのお金だろうから、円にするといくらなのかはわからない。

「そういえば、アビリティライセンス、登録した?」

パンを頬張りながらガーネットは俺に聞く

恐らくだが、あの文字が刻まれていくのは登録だったのだろう。

「あぁ一応な」

「そう、じゃあちょっと貸して?」

なんだ? と思いながらアビリティライセンスをガーネットに渡す。

「えぇっと、ここを押して、って、えぇ!? 」

ガーネットは驚きながら笑っている。

「ん? どうした?」

ガーネットこっちにアビリティライセンスを見せながら続ける

「アビリティライセンスは、その人のステータスも見れるんだけど、これ...」

体力や、力、知恵、俊敏性、魔力、すべてに置いてほぼ60に近い。

「これがどうしたんだ?」

「このアビリティライセンスのステータス、平均は50なのよ。イツキ、あなたやっぱり...」

ん?

「万能凡人なのね」

「おい!! やめろよ」

なんで覚えてやがんだこいつ。

「はぁ、余計な事言わなきゃ良かった」

「まぁまぁ、落ち着きなって」

ガーネットは俺のアビリティライセンスをいじりながら話す。

「ふーんやっぱ本当だったんだ」

「何がだ? 万能凡人の事か?」

軽くガーネットを睨む

「違うわよ。冒険家のスキルツリーの話よ。」

スキルツリー? 冒険家の? 

「普通だろ?」

「な訳ないじゃない。」

ガーネットは自分のアビリティライセンスを俺に見せる。

「あれ?スキルツリー、7個?」

おかしい。俺のはもっといっぱいあったはずだ。しかもガーネットのように攻撃系の魔法だけ、ではなく、戦闘から生産、生活に役立つようなものまで。

「冒険家のスキルツリーは、特別なの。スキルツリーはほとんどあるの、戦闘系、生産系、特別職関係なしにね。流石にレベルの高いものは無いけどね。」

「へぇー。」

もしかして冒険家って結構凄いのか?

「イツキ、あなたは何のスキルを取得するのよ。」

「ちょうど良かった。お前って基本魔法で戦うタイプだよな?」

「えぇ、そうだけど」

そうか、じゃあアタッカー? でもそうするとヒーラーやタンクなどがなく、バランスが悪い。

まぁもっとも2人でバランスをとるのは難しい事だが。

「ちょっと考えとく。ギルドについてからでいいだろ?」

「えぇ、まぁいいわ」

話ながら食べていた朝食セットの最後の一口を口に運ぶ。

「よし、じゃあ行くか。」

「えぇ」



俺は自分の存在意義がここにあるようでワクワクしているような、逆に不安になっているような、そんな気分で足を進める。

今日はギルドから帰ったらゆっくり寝たい。

心を落ち着かせるためにも




しかし運命とは残酷で、ここから、イツキの冒険譚は始まる。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く