絶望の サイキック
弱さと後悔
浜野 六佐が最後に覚えていた景色は知らない天井だった。と人の頭がいくつか見えている。
女性のような高めの声と男性のような低い声が同時に聞こえてくるが、会話の内容までは聞き取れない。
浜野 六佐の身体は仰向けになっている。地面からは少し高さがある。滑車が転がるような感覚と音が伝わってくる。
時間が経過した。
再び重たい瞼をゆっくりと開いた。先ず入ってきた情報は知らない天井。
その次に、口と鼻を覆う何か。それは、酸素マスクだった。そして、身体の痛みに気付いた。身体が何かに圧迫されている感覚にその正体が包帯である事に気が付いた。
浜野 六佐の腕には針が刺さっている。それに繋がるチューブを辿るとそこには袋が存在している。
「⋯⋯こ、こは、病院、か」
そう呟いた。
「浜野!」
その声は浜野 六佐が最も尊敬する人物のものだった。
自分の上司であり、隊長でもある彼の声を聞いて安堵する。
「た、隊長?」
隊長こと、右京 晃司は浜野 六佐が寝ているベッドの手すりを両手で掴む。
「大丈夫か?」
真剣な眼差しに浜野 六佐は半分の笑みに痛みと不安を隠して答えた。
「⋯⋯はい、大丈夫です」
「⋯⋯そうか。⋯⋯⋯⋯すまないな。俺のせいで⋯⋯、」
椅子に腰を下ろしながらそう答える隊長の温かさに眼から零れそうになるものが存在する。
「⋯⋯違います。隊長のせいじゃありません」
細く、弱い声でそう答える浜野 六佐。
「いや、俺の責任だ」
「⋯⋯⋯⋯違います。俺が弱いからなんです」
その声には悔しさが篭っていた。
ボロボロになって、命を落としそうになって戦った部下を守れなかった自分自身を激しく責める右京 晃司。
彼は両拳を握り締める。
「⋯⋯⋯⋯『腕刃』だな」
「⋯⋯⋯⋯はい」
隊長の問に浜野 六佐は短く答えた。
更に声が弱々しくなる。涙が混じったその声は徐々に嗚咽を発するようになる。
「⋯⋯⋯⋯すみません。俺が、俺がもっと強かったら」
真っ白なシーツを握り締めて、もう片方の手で両眼を覆いながら彼は呟いた。
初めてひとりで超能力者と戦って負けて、生き延びた。
その悔しさを体感する。
普段は小心者で謙虚で自分に厳しくて自分を小さく評価する彼。
その彼が初めて悔しさを露わにする。
相手の『腕刃』との戦力差はかなり大きかった。恐ろしさに打ち勝って銃口を向けて撃った。それでも、傷一つ付けられずに敗北した。
自分の弱さを、惨めさを改めて体感した。
そんな部下を目の前にして、右京  晃司は爪を皮膚にくい込ませた。
ポタッと血液が落ちる。奥歯を噛み締めて眼に殺意が篭った。
「⋯⋯⋯待ってろ」
そう言い残して背を向けた。
(⋯⋯腕刃。貴様は俺が殺すぞ)
その信念を胸に右京 晃司は病院を後にした。
女性のような高めの声と男性のような低い声が同時に聞こえてくるが、会話の内容までは聞き取れない。
浜野 六佐の身体は仰向けになっている。地面からは少し高さがある。滑車が転がるような感覚と音が伝わってくる。
時間が経過した。
再び重たい瞼をゆっくりと開いた。先ず入ってきた情報は知らない天井。
その次に、口と鼻を覆う何か。それは、酸素マスクだった。そして、身体の痛みに気付いた。身体が何かに圧迫されている感覚にその正体が包帯である事に気が付いた。
浜野 六佐の腕には針が刺さっている。それに繋がるチューブを辿るとそこには袋が存在している。
「⋯⋯こ、こは、病院、か」
そう呟いた。
「浜野!」
その声は浜野 六佐が最も尊敬する人物のものだった。
自分の上司であり、隊長でもある彼の声を聞いて安堵する。
「た、隊長?」
隊長こと、右京 晃司は浜野 六佐が寝ているベッドの手すりを両手で掴む。
「大丈夫か?」
真剣な眼差しに浜野 六佐は半分の笑みに痛みと不安を隠して答えた。
「⋯⋯はい、大丈夫です」
「⋯⋯そうか。⋯⋯⋯⋯すまないな。俺のせいで⋯⋯、」
椅子に腰を下ろしながらそう答える隊長の温かさに眼から零れそうになるものが存在する。
「⋯⋯違います。隊長のせいじゃありません」
細く、弱い声でそう答える浜野 六佐。
「いや、俺の責任だ」
「⋯⋯⋯⋯違います。俺が弱いからなんです」
その声には悔しさが篭っていた。
ボロボロになって、命を落としそうになって戦った部下を守れなかった自分自身を激しく責める右京 晃司。
彼は両拳を握り締める。
「⋯⋯⋯⋯『腕刃』だな」
「⋯⋯⋯⋯はい」
隊長の問に浜野 六佐は短く答えた。
更に声が弱々しくなる。涙が混じったその声は徐々に嗚咽を発するようになる。
「⋯⋯⋯⋯すみません。俺が、俺がもっと強かったら」
真っ白なシーツを握り締めて、もう片方の手で両眼を覆いながら彼は呟いた。
初めてひとりで超能力者と戦って負けて、生き延びた。
その悔しさを体感する。
普段は小心者で謙虚で自分に厳しくて自分を小さく評価する彼。
その彼が初めて悔しさを露わにする。
相手の『腕刃』との戦力差はかなり大きかった。恐ろしさに打ち勝って銃口を向けて撃った。それでも、傷一つ付けられずに敗北した。
自分の弱さを、惨めさを改めて体感した。
そんな部下を目の前にして、右京  晃司は爪を皮膚にくい込ませた。
ポタッと血液が落ちる。奥歯を噛み締めて眼に殺意が篭った。
「⋯⋯⋯待ってろ」
そう言い残して背を向けた。
(⋯⋯腕刃。貴様は俺が殺すぞ)
その信念を胸に右京 晃司は病院を後にした。
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