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絶望の サイキック

福部誌是

変わり始めた心

女性のバラバラ死体が発見された日の朝、テルヤは病院に来ていた。

紅輝のお見舞いにちょっとした焼き菓子を購入して病室の扉を叩いた。

中から彼の声が聞こえてそれに応えるように扉を開いた。

引き戸を横にスライドさせると中には紅輝とは別に知らない顔が2つあった。

1人は黒髪に丸眼鏡の少年、もう1人は鮮やかな緑色の棘頭の少年で2人共高校の制服らしきものを来ていた。

テルヤは咄嗟に頭を下げて病室の中へと入った。

この病室には紅輝が1人入院しているだけの個別病室で2人の少年も紅輝のお見舞いと思われる。

「おう、テルヤ」

テルヤに気付いた紅輝が軽く手を上げる。

「初めましてテルヤさん。俺は岩月透と言います」

緑色の棘頭の少年がそう名乗った。

「僕は山内葵です」

丸眼鏡の少年が丁寧に頭を下げてきたのでそれに応えるようにテルヤも頭を下げた。

「錦 輝夜です。よろしくお願いします」


「じゃあ、僕達はこれで」

2人は名乗った後に頭を下げて病室を出ていった。

彼らが出て行ったのを見送ってから紅輝に近付く。

「あの2人は友達なんだ。透は能力者で皆に気付かれないように高校に通ってる」

その言葉に感心して「へぇー」という声が漏れてしまった。

「アイツの見る世界は美しいんだ」

目を細めてそう呟いた。


「あぁ、これ」

そう言って焼き菓子の入った紙袋を差し出す。

「サンキュー」

そう言って受け取った紅輝は傍にある机の上に丁寧に置いた。

「それで、調子はどうなんだ?」

紅輝が聞いてきたのは戦闘訓練のことだろう。

「俺には才能ないよ。てんでダメだ」

顔を曇らせた後に苦笑いで答えた。

「⋯⋯テルヤって最近変わったよな」

「え?」

 思わず声が出てしまった。

「なんか、明るくなった気がするぜ」

「そうかな」

「あぁ」

照れ隠しに頭をかきながら視線を外す。

その後も話を続けて、気付いたら30分近くが経過していた。

「俺、そろそろ行かないと」

「おう、がんばれよ」 

紅輝は笑顔でテルヤを送り出した。




   


病院を出た後、アジトに向かい戦闘訓練に励んだ。

「うわぁっ!」

数メートル後方に吹き飛ばされて地面に倒れ込む。

クルさんの力強い蹴りが腹に命中したせいで嘔吐感に襲われるが、なんとか持ち堪えて起き上がり歯を食いしばってクルさんに向かってく。

情けなく、弱い

弱々しいパンチも蹴りも全てを払われて返り討ちに合う。

数時間が経過して、休憩の時間になった。

痣に消毒液を染み込ませたガーゼを当てられ、涙目になりながら刺激に耐える。

「こら、逃げようとしないで」

歓菜はテルヤの身体をがっしりと掴みガーゼを肌に当てていく。

「お前はセンスがないな。こういうのには向いてないかもな」

包み隠すことなく、クルさんが率直に現実を告げる。


「そんな事ないですよ。頑張ればきっと」

そう言いかけた歓菜を遮るようにしてクルさんが言葉を重ねる。

「この調子なら歓菜より強くなれるのは数十年後だ」

女の子よりも弱い

そう告げられてテルヤは視線を落とす。

「これでよく今まで生き残れたな」

(そう。運が良かっただけなのだ。俺が今まで生き残れたのはきっと)

最初の殺人鬼の時も『茨使い』の時も

運が良くて生き残れたに過ぎない。


それでも、今より少しでも強くなりたいのだ


誰よりも優しく接してくれ、本性をさらけ出させてくれた須棟さんのために

仲間だと認めてくれる紅輝と歓菜のために

少しでも役に立ちたい。

ルーズボイスの時のように何も出来なくて情けない姿は嫌だから


「もう一度お願いします」

そう言って立ち上がる。

「おぉ」

少し驚いたように、けど少し嬉しそうに彼は頷く。

そして再び戦闘訓練が始まった。

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