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絶望の サイキック

福部誌是

加速する絶望

その日の夜

テルヤは数人のメンバーと共にパトロールを行っていた。

どうしてもパトロールと言うと警察っぽく聞こえてしまう。

夜の街を徘徊して超能力者が暴れていないかというのを確かめる。

それを当番制で行うのだという。

一緒にいるメンバーはテルヤを入れて6人。全員の名前を覚えているわけではないが、ルーズボイスの事件の前に紹介された人達だ。

正直名前などほとんど覚えておらず、顔や声の特徴をうっすらと覚えていただけで、この人見た事あるな程度である。


ほぼ1日中クルさんと歓菜の戦闘訓練に付き合わされて身体の至る所が痛い。

身も心もボロボロの状態で多少の眠気と戦闘しながらのパトロールとなる。

正直に言うとすごく面倒臭くて、眠いので帰りたいが、他からの信頼もあるのでここで頑張らなければならない。


「錦君、結構疲れてるね。大丈夫?」

そう気を配ってくれたのは綺麗な青髪の女の子だ。

テルヤの右隣を歩いていて顔を覗かせてくる。

「うん。大丈夫だよ。ありがとう」


「無理しないでね」

優しそうな彼女の隣で何故かニヤニヤ笑っている金髪のポニーテールの少女。

彼女はテルヤには聞こえない声で青髪の少女の身体に肘を当てながら

「もっとアピール!」

と小声で叫んでいる。

「なんだ?あれ」

とその様子を後ろで確認した少しやんちゃそうな少年が声を上げる。

「なんでも、一目惚れだとか」
 
そう答えたのは黒眼鏡の少年。

彼は眼鏡のズレを直すかのように右手の中指をレンズの間のフレーム部分に当てて少し上に動かす。

「みんな、緊張感が抜けてるぞ」 

そう注意するのはリーダー風の青年である。

「すみませーん」

と誠意のない声で答える金髪のポニーテール少女。

きっとこんなやり取りが毎日なんだろう。

本来ならこの空間の中に易々と入っていけるものでは無い。


だが、みんなとてもいい人でテルヤを歓迎してくれている。

(どうやらこれから先、この人たちと一緒に行動する事になりそうなので早めに信頼される仲間になりたいものだ。)

そう考えながら、また彼らの名前を覚えながらパトロールを行う。

パトロールと言っても夜の街を歩くだけと言っても等しいのだが⋯⋯


「しっかし、こんな仕事本当に意味があるんですかね?」

やんちゃそうな少年が口を開く。

「大切なのは意味があるかないかではないと思うよ」

リーダー風の青年は爽やかにそう言った。

「リーダーが決めた事だし、しっかりやらないと」

青髪の少女が口を開く。彼女の言うリーダーとはここにいるリーダー風の青年の事ではなく、桜井桃李さんの事だ。


「うーん、毎回やる必要はないと思うけどなぁ」

やんちゃそうな少年は止めること無く愚痴をこぼす。

「まぁ、そう言わない」

そう注意するのは金髪のポニーテール少女。

やんちゃそうな少年は顔を渋めながら、何かを思い出したかのように今度はテルヤに標的を変えて興奮気味に質問をした。


「なあ!やっぱり、マツユキは強かったか?」

その言葉であの狂気の男の姿が鮮明に思い出される。

銀色の長い髪。ギョロッとした両眼。歪な笑い方。

死ぬ瞬間の親友

あの日の夜の出来事が昨日の事のように思い出され、気分が悪くなる。

立ちくらみと眩暈により、その場で膝を曲げて姿勢を低くした。

「⋯⋯っ、ちょっと、やめなよ」

それを見た青髪の少女がやんちゃそうな少年に注意をする。

「わ、悪ぃ」

落ち込む少年に対してテルヤは呼吸を整えてゆっくり立ち上がる。

そして、「大丈夫だよ」とニッコリ笑ってみせた。

「本当に大丈夫か?体調が悪いなら休んても構わないぞ」

リーダー風の青年が気にかけてくれる。

「大丈夫です」

正直、キツイがそれでも継続することを選んだ。色んな感情が芽生えたが、須棟さんに、紅輝に、歓菜に、いろんな人に背中を押してもらった。

だから、恩返しがしたい。どんな小さな事でもいいから役に立ちたいのだ。

「マツユキ、強かったよ」

悲しみを、辛さをグッと堪えてテルヤはそう口にした。

その言葉にそこに居る誰もが驚きを見せた。

全員がテルヤを注目した。

テルヤの言葉に込められていたのは「復讐心」ではなかった。ただ、それだけに反応したのだ。「復讐心」が存在していないことに驚いたのだ。

テルヤたちはパトロールを続けた。


「そこのお兄さん方、アルドアージュって知ってますか」

不意に背後からそう声をかけられた。

「へ?」

黒眼鏡の少年が声を漏らし、6人全員が振り返る。

その男は一見どこにでも居そうな不良という感じだった。

髪型全体をワックスで立たせている。

黒の半袖シャツに黒のジーパン。服装は普通だが、耳と唇にリング型のピアスをしている。

20代半ばぐらいの歳に見えるその男はテルヤの目には「あの男」のように映った。

「マツユキ」

あの夜の狂人と同じような雰囲気を纏ってそこに立っていた。

「ア?なんだ?てめぇ」

やんちゃそうな少年が男に突っかかる。

「いやぁ、光栄ですよ。アルドアージュの皆さん」

男は笑顔で腕をやんちゃそうな少年の腹の真ん中に突き刺した。

ズブッと鈍い音にやんちゃそうな少年の背中から赤黒いものが飛び散る。

それは少年の身体を貫通していた。一見するとやんちゃそうな少年の背中から男の手が生えているように見える。

「ごふっ⋯⋯、」

やんちゃそうな少年は口からも大量の血を吐き出す。

テルヤはその光景をただ見ている事しか出来なかった。

「⋯⋯、」

「えっ、」

などと各々が独自の反応を示すが、どれもが驚きと絶望に塗れていた。

男は口角を上げると腕を振り払ってやんちゃそうな少年を投げ飛ばした。

やんちゃそうな少年は抵抗する事もなく地面に落ちて転がる。

ドスッという音が響く。もう彼が起き上がることは無い。

「あっ、」

みっともなく、惨めに声を漏らす。

恐怖一色に表情を歪めて

「ぁ、あっ、」

ニヒッと男がやらい声を歯の隙間から発声させる。

「さぁ、殺ろうか」

男は高らかに手を広げてそう言い放つ。それが開始のゴングとなったのか、眼鏡の少年が走り出す。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

何処から取り出したのか、右手には鉄パイプが握られている。

それを振りかぶって男に迫る。

「お前達は逃げろ!」

リーダー風の青年が女性陣に忠告をする。

青髪の少女はどうしたらいいのかその場に座り込んで動けないでいる。

涙目になってその場に蹲る。

金髪のポニーテール少女は「ふざけないで!私もやるわ!」と怒って両手を伸ばして、掌を男に向ける。


「いいねぇ!」

男は余裕で眼鏡の少年が振り回す鉄パイプを避ける。

「くっ、俺も⋯⋯、」

右眼に力を入れて能力を発現させようとするが、どうしても力が使えない。

「っ、なんでっ!」

右手を右眼の周りな宛てがう。

いつまで経っても右眼が変色しない。力が使えない。『粉』が出ない。

「ど、どうしてっ!」

眼前では戦闘が続けられている。

金髪のポニーテール少女が両手から稲妻を繰り出す。青白い閃光と共に稲妻が走って男を攻撃しようと襲う。

が、その稲妻をも軽々と避ける男。

「ハッ、発電能力者かよ」

眼鏡の少年の鉄パイプと4本の稲妻を避ける。

「くっ、当たらない」

金髪のポニーテール少女が焦る中、リーダー風の青年が陰から男に近付いた。

拳を握り締めて勢い良く突っ込んだ。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

背後から迫るリーダー風の青年の拳を片手で反らして振り向きざまに腕を伸ばしてリーダー風の青年の首に手刀のような形で一撃を与えた。


素早い動きで目で追うことは出来なかったが、男は刃物を使った素振りは見せなかった。

だが、リーダー風の青年の首から上が消えた。否、正確には頭が地面に転げ落ちた。

一瞬、肉と骨の断面が見えた気がするが、直ぐに溢れ出す血液によって見えなくなる。

赤黒く、飛び散る血液を垂れ流したまま頭を失った胴体はバランスを崩してその場に崩れる。

頭をは地面を少し転がった後、その場に静止して動く事を止める。

地面に血液が広がっていく。

「────────── っ!」

誰かが青年の名前を叫んだ。だが、その音は掻き消えてテルヤの耳には届かなかった。

驚きと衝撃に絶望して思考が纏まらない。


「ぁ、ぁ、あっ⋯⋯」

「ぅ、ぅっ、」

青髪の少女もその場から動けないでいる。

テルヤは少しずつ後ずさってから足を取られて尻もちをつく。

指先が濡れた地面に触れる。その濡れはどんどん拡張してテルヤの掌全体を濡らすまでに至る。

見ると、その液体は青髪の少女を中心に広がっていた。

少女は涙を零しながらその場にしゃがみ込んで怖さに耐えられなくなって漏らしてしまったらしい。

「早く逃げて!」

金髪のポニーテール少女が叫びながら稲妻を放出する。

その言葉は2人に向けられたものだが、明らかに青髪の少女は恐怖によって動けないでいる。

対するテルヤも身体中が震えで立てない。力を入れてもその感覚がせず、動かせない。

歯を食いしばる。

(俺が動かなければ!彼女を抱えて逃げなければ)

バチンっと発光と共に稲妻が走って男を攻撃するが、男はそれを腕で薙ぎ払う。

眼鏡の少年も鉄パイプで応戦を続ける。

「全員、その場に止まれ!」

その叫び声が全員の耳に届いて全員が注目を向ける。

そこには両手で拳銃を握り締めて指を引き金にかけて銃口をこちら側に向ける若い男性の姿があった。  

赤茶色の短髪にスーツを着込んだ青年。

彼の名は浜野 六佐。

マジックハントの一員だ。

彼は全身を震えさせながらも照準を定めて黒色の銃を握ってその場に立つ。


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