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絶望の サイキック

福部誌是

ルーズボイス

名古屋の女子高に通うギャル風の少女は薄暗い路地を後ろを気にしながら必死に走っていた


恐怖に顔を引き攣らせて、ひたすら走る。数分前まで手にしていたはずの鞄も携帯も今は持っていない。


上手く呼吸出来ないのは走っているからか、恐怖によるものか・・・・・・

どちらにせよ彼女は普段通りの呼吸が出来ない状態で走り続ける。だが、彼女を襲う異変はそれだけではない。

なんと、声が出ないのだ。

喉の奥から助けを求めて叫ぶ。だが、音は消失する。涙目になりながら彼女は路地を駆けていく。

(どうして、声が出ないのよ)


何度も声を出そうと頑張るが声が出ない。

よくテレビなどで観る声が出ない症状。病気だっただろうか?

あれとは異なるもの。身体には異変がない。声が出ないという事実以外は



声が出せないことによる恐怖と背後から迫っているはずの恐怖に心が押し潰されそうになる。


とりあえず、この人気のない路地から出て人通りのある道に出ればいいのだ。

そうすれば声が出なくても助けてくれる人がいるだろう。

救いを求めて走り続ける少女。

「────── !」


喉の奥から叫んだ音は消失していく。

涙が横に流れていく。

(嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ)


怖いから後ろを振り向く事は出来ない。でも、迫ってきている気がする。

足音が反射して聞こえてくる。

いる。直ぐ後ろに奴はいる。

その事実が少女の身体を縛って自由を奪う。


それでも、負けずと脚を前に出す。

(この角を曲がれば)

「・・・・・・っ、がっ!」

この角を曲がれば大通りまで数十メートルの直進だ。と思い、恐怖が活力へと変化したその時、少女の声が戻る。

暗闇の中を走る少女に光が差し込まれる


・・・筈だった。

曲がり角を曲がろうとした時、脚に何かが引っかかって転んでしまう。

(痛っ、っ!)


「ざぁんねーん。あともう少しだったのにね」

と上から男の声が聞こえた。

聞こ覚えのある嫌な声。

少女はうつ伏せになっているので男の顔は見えないが、声だけで人物を想像出来た。

とは言っても素顔を見た事はないのだが


男はニット帽にサングラスをしてダボッとした黒いコートを着ていた。

そして、少女の声はまた出なくなっていた。

(嫌、嫌、いっ・・・・・・!)

少女は涙目になりながら前方に腕を伸ばす。その姿はまるで何かを追い求めるような姿だった。


それでも男は躊躇なく少女の身体を抱き抱えて後方へと引っ張る。

少女は精一杯抵抗したが、それは儚く散る。

男に半ば投げ飛ばされるように中を舞った少女の身体は地面の上を転がった。

(いやぁっ)

涙を垂れ流す少女の表情を見て男は歪な笑顔を見せた。

少女の上に馬乗りになった男は少女の両手を掴んで少女の頭上へと引っ張って地面へと押さえ付けた。

少女は必死に逃れようと身を捩りながら脚をバタつかせるが、男の殴打によって大人しくなる。

男は更に口角を上げて少女の制服の中へと手を伸ばした。


いやらしい手つきで胸を触られ、首と顔を汚い舌で舐め回された。

そして、スカートの中へと伸びる男の手に少女は抵抗する事も諦めて身を委ねた。





   



「対象の声を消す能力っと言ったところか」

と須棟が付け足す。

「最悪」

と何を想像したのか歓菜が身を震わせて呟いた。

「犯人の特徴とか無いんですか?」

紅輝が須棟に聞く。

「それが、いつも服装を変えてるらしくてな。共通しているとするなら、いつもサングラスをかけているらしいが・・・・・・」


「顔の特定が出来ないように工夫っか」

紅輝は何か思うものがあるのか遠くを見詰めて呟く。


「あ、あそこに路地がありますね」

とテルヤが指を指す。すると

「じゃあ、一緒に行くか」

と紅輝に肩を組まれて引っ張られる。

「ちょっ、」

「いいから、いいから」

と紅輝は笑顔でテルヤを引っ張ってそのまま路地の中へと侵入していく。

結果は何も無し


(名古屋といってもかなり広いし、路地と言っても沢山ある。この人数では限界があるに決まってる)

と心の中で呟く。

そこまで考え無しという人達ではなさそうに見えたが、どうも疑わしい。



二人の所に戻って捜索を再開させる。

疑うような眼で三人を見る。

(紅輝を除いた女性陣二人はそこまで馬鹿じゃないと思うんだけどな)

 
捜索を開始してから少なくとも二時間が経過している。要するに二時間休みなく街を歩き続けているという訳だ。


身体に疲れを感じ始めた頃、道の至る所に木が植えられていて、その周りが柵で囲まれている道に出る。

その場所では若者達が柵に姿勢を預けて携帯端末を弄っている。


「こんな所もあるんですね」

とテルヤが感心したように声を出す。

「あぁ。ここね」 

歓菜がテルヤの横に並ぶ。

「最近の流行りなんだって」

と眼を細めてその光景を見渡す。

その表情を横から見ていたテルヤの胸が少しだけドキッと高鳴った。


その時、ピロンっと須棟の端末が着信を知らせる。


須棟は端末を耳に当てて応じる。


「今は鶴舞公園の近くだが。・・・・・・・・・分かった。直ぐに向かう」

相手が誰だったのか分からないが端末を切るとこちらに向き直って一言だけ口を開いた。

「犯人の居場所が分かった。急ぐぞ!」


呆気に取られていたテルヤだけが出遅れる。

須棟は踵を返して直ぐに走り始め、それに応じて紅輝と歓菜も直ぐに動き出す。

直ぐに頭の中を整頓して走り始めるテルヤ。

(誰だったんだろう?) 

と不思議に思いながら走り続ける。

電話一本で犯人の居場所が分かるなんて信じられないが、三人の空気が先程とは大違いだ。

真面目なのだ。

肌がビリビリとその場の空気を感じる。


真剣一色になった三人の走りは少し気を緩めるだけで置いていかれる。そんなスピードだ。


何処をどう走ったのか分からないが彼女達について行くこと数分。

息を切らしてやっと犯行現場に辿り着いた。

他の三人は息を切らすどころか汗ひとつかいていない。

(どうなってるんだよ)

と呟いたテルヤは直ぐに思い直すことになる。

目の前の光景を見て頭が真っ白になった。


「フ、フッ、ンッ」

男が少女の身体を抱えて必死に腰を動かしている。少女は涙を流しながら抵抗する訳でもなく、されるがままに身を委ねている。

 テルヤは目を見開いて現状を把握しようとした。

でも、出来ない。そんな簡単に把握出来るはずが無い。

我先にと飛び出したのは紅輝だった。

叫びながら突っ込んでテルヤ達に気付くことなく夢中で腰を振り続ける男の顔面に拳をめり込ませる。


地面を弾みながら転がる男は痛みと共にテルヤ達の介入に気が付く。


「痛っ、」

須棟と歓菜は直ぐに横たわる女子高生の元へと駆け寄った。


「────────── !!」

紅輝が男に対して何かを叫び散らかしたが、その声が発せられる事はなかった。

その不可解な現象に気が付いて驚く紅輝。

それを見て笑いが込み上げてくる男は
「ははは、誰だか分からないけど、僕の邪魔をする方が悪いんだ!」
と紅輝を指して笑う。


だが、その男の行動が更に紅輝の怒りをヒートアップさせることになる。

紅輝は右拳を握り締めて顔の前に移動させる。

そして、ボウッ!と炎が吹き荒れる。

紅輝の右拳が発火したのだ。


その現象を目にした男は腰を抜かして顔を引き攣らせた。

恐らく怯えて、逃げ出すとでも思っていたようだ。


(テメェの様な腐った能力者は俺が粛清する!)

紅輝が男を睨むと

「ひぃぃぃぃぃっ!!」

と背を向けて逃げようとするが腰が抜けているせいか、上手く脚を動かせない。

紅輝は地面を蹴って男の背後に迫ると、顔面目掛けて炎の拳を繰り出した。

男はボールの様に地面の上をバウンドして転がって、そのまま壁に激突して気絶した。




数分して、その路地には規制線が張られて、一般人の立ち入りを規制された。

何台ものパトカーがサイレンを鳴らして現場に近付いてくる。

その様子を少し離れた歩道橋の上から見守る。


「これで一件落着だな」

と声が戻った紅輝が近付いてきた。

「あぁ」

今回、テルヤは何もしていない。ただ、その場にいただけ。

その事に気が付いているのか、いないのか


分からないが、紅輝はニッと笑って親指を立てた。

「お疲れ様」

と須棟と歓菜が人数分の飲み物を持って歩いてくる。

それぞれに飲み物を「奢りだ」と言って渡す。


「・・・・・・あの子、大丈夫ですかね」

と遠くに視線をやってテルヤが質問した。

「まぁ、あの子に深い傷を残したのは間違いないな」

結局、あの女子高生は誰が事件を解決したのか分からないままこれからの人生を過ごすのだろう。

あのゲスい男に身体を貪られた事実を背負って生きるしかない。


オレンジ色の光に照らされてテルヤ達はその場を後にした。




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