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絶望の サイキック

福部誌是

情報

テルヤが伏見ふしみ 紅輝こうきの背中を追い始めてからどのくらいが経過しただろうか?

かれこれ1時間以上は経過している気がする。いや、もしかしたら2時間にも及ぶかもしれない。

もう、どの道をどうやって歩いてきたか覚えていないし、自分が今歩いている薄暗い細道もどこなのか理解出来ていない。

幾つもの路地を通過し、建物の中にも数回入った。

ドアを開閉し、中に入る。奥に進んで右に曲がったり、時には階段を登ったりもした。

よく分からない通路を歩き、脚に疲労が溜まる。


「・・・・・まだ着かないのか?」

と重たくなった唇を開く。

「んー、もうちょっとだな」


(本当にもうちょっとなのか?)

と疑問に思うがあえて声に出したりはしない。

慎重になるのは分かるが、ここまで・・・・・・

いい加減に歩くのが辛くなってきたテルヤは少し歩くスピードを緩める。


今日何本目となる路地を通る。目の前の伏見の背中の向こうから光が挿し込まれる。

「ここを抜けた先だ」

と伏見も流石に疲れた様子で言う。

伏見紅輝に続いて路地を抜ける。

そこには少し開けた更地が広がっていた。そして、目の前に古くて大きな建物が建っている。

両側はアスファルトの壁に覆われ、その先にも大きな建物が存在しており、その先が封鎖されている。


「・・・・・・なに、ここ?」

とテルヤは呆然と目の前の建物を見上げて呟く。

「なにって、アジトだ」


伏見は多少のドヤ顔でそう言った後に

「ようこそ、『アルドアージュ』へ」

と発音良く組織の名前らしき単語を並べた。



   


伏見紅輝に流されるまま建物の中に入る。自動ドアが開き、薄暗い部屋の中に足を踏み入れる。

謎の空気に背中にゾクッ!と寒気が走る。

それでも、テルヤは歩みを止めること無く奥を目指す。どうやらホテルなどの広間らしいその場所には人の気配が無い。テルヤは広間の中で一旦停止し、辺りを見渡す。目の前にある大きな観葉植物。

その周りにはソファーが並べられているが使われた形跡がない。

「こっちだ」

と伏見は後ろからテルヤの前へ出てそのまま前進する。

慌てて遅れまいと伏見に続く。

広間の奥にある階段を伏見の後に続いて降りる。


「・・・・・・えっと、何処に向かってるか聞いてもいいか?」


「あぁ。地下だよ」

と伏見は階段を一段一段降りながら短く返す。



さっきまでの疲れが無くなったような錯覚に襲われる。

少し心が張り、体が固くなっているのが分かる。

それでも、伏見の背中を追う。

階段を下り、長い通路を進み奥のエレベーターに乗る。


(いや、どんだけ用心深いんだよ)

エレベーターで更に下の階に到着する。到着を知らせる音が鳴り、扉が開き眩い光が挿し込まれ目を細める。


伏見に促されエレベーターから出る。

部屋の広さに比べたら明かりは暗い方であった。

その空間はバスケットコート半分くらいの大きさで奥にはコンテナと思われるものが沢山積み重なったりしている。そのコンテナに持たれかかったり、腰を下ろしている人物が十数人。

そのほとんどがテルヤに注目する。

十数人の視線を受け止めてテルヤその場から動けなくなった。

それを察してくれたのか伏見がテルヤの前に出て

「連れてきたぜ」

と部屋に響く声量で切り出した。


須棟すとう、準備はいいか?」

とコンテナの中心、コンテナの上に腰を下ろしている銀髪の眼鏡をかけた男性が声を上げる。

「あぁ。いつでも大丈夫」

そう答えるのはテルヤから見て部屋の右奥にコンテナに背中を預け、腕を組んでいる黒髪のストレートに髪を伸ばしている女性だ。


「先ずは名前を名乗ってもらおうか」

と銀髪の眼鏡が声を張る。


 輝夜てるやだ」


テルヤの答えに銀髪眼鏡は自分の左隣に座る水色の髪を後ろで短く二つ縛りしている女の子に何かを聞くような素振りをする。女の子は頷いた後に膝の上のパソコンのキーボードを弄り出した。

(・・・・・なにしてんだ?)

と疑問を持つ。


「・・・・・よし、分かった。俺の名前は桜井さくらい 桃李とうり、この組織のリーダーを務めている」


(桜井、桃李)

と心の中で復唱する。

「リーダー!俺はこいつには害が無いと思って連れてきたんだけどな」

と伏見が桜井桃李を名乗る男性に言い放つ。

「・・・・・分かつているが、こちらでも確認をとらないとな」

桜井桃李の答えに更に疑問が増える。


(確認?今ので?一体何を?)


「・・・・・・それで、何を知りたい?」

と桜井桃李の質問に対してテルヤは一瞬躊躇う。

(何から聞けばいいんだ?)

「・・・・・・えっと」 

テルヤが迷っていると

「お前は超能力がどういったものなのか理解しているか?」

と桃李が話を進めてきた。

「・・・・・・あまり理解出来ていない。超能力というものが本当に実在し、俺が今まで見てきた世界が偽りだと気付いた。そして、超能力を使って人を殺している奴らがいる」


「・・・・・・超能力について詳しい事は分かっていない。恐らく、今現在一番謎に包まれた力だ。何故、そんな力が俺達に備わっているのか・・・・・・ある研究者は俺達の事を『選ばれた存在』と呼んでいる。『才能がある者』、『その力を扱う権利を得た者』等と。中には『超能力者』は『新人類』と決めつけている者も存在する」


テルヤは目を見開き、息を呑む。


(新、人類)

「・・・・・・人類の次の姿。今、こうしている間にも世界の何処かで研究が進んでいるだろう。・・・・・・謎に包まれた力だが、分かっている事もある」



「分かっている事?」


「あぁ、そうだ。それは力の発現の条件」

その言葉にテルヤは声を失うほどに驚く。

「異常な程の感情の高まり。それがトリガーとなって発現する。これは喜びとかよりも、悲しみ等の感情の方が強い。負の感情の高まりで発現する。理由は謎だが、目の前での知人の死や自分の命が危ない状況などで発現するケースが多い」


桃李の言葉にテルヤは唯一の親友が死んだ瞬間を思い出す。

その瞬間、右眼の奥にズキッと痛みが走る。

(ツカサの死によって引き出されたって事か)


「少しは理解出来たか?」


正直、全てを飲み込めた訳では無い。急には無理だ。普通に暮らしている人間がもしこの話を聞けば頭の可笑しい連中だと笑われるに決まってる。


「・・・・・・大体は」


「そうか。飲み込みが早いな」 

と桃李は驚いた様子もなく答えた。




「お前の事は一通り調べさせてもらった」

頭の中で今得た情報を整理していると、そんな言葉が聞こえた。

俯きかけた頭を起こし桃李を見詰める。

「リンゴ!」

と彼が名前を呼ぶと

「うん。分かった」


と水色の髪の女の子が答えた。見た目、中学生とも見て取れる女の子は目の前のパソコンを眺めながら

「錦 輝夜。16歳。高校二年生。先日の神隠し事件により能力が発現する。同じ学校のクラスメイト全員が死亡。彼のクラスメイトは中でも一番殺し方が残虐なものだった。」

と女の子は事件の詳細を一通り話した後

「一番仲の良かった人物は阿ヶ部あがべ 統咲つかさ。他には白井しらい 南沙なずな。放課後は読書などをして静かに時間を潰すタイプ。好きなものは・・・・・・」

とプライベートな事について語る。

その事に目を見開いて声を漏らす。

「リンゴ、そこまででいい」

と桃李が女の子の話を中断する。


困惑するテルヤを見て桃李が「すまなかった」と一言。


「・・・・・・いえ、大丈夫です」

歪んだ表情で返す。


「お前がどんな事件に巻き込まれたかは知らないが、お前はこれからどうしたいんだ?」


(・・・・・・これから)


桃李の言葉に自問する。

これからどうすればいいのか

一つだけ。決まっている事がある。


「・・・・・・俺は、復讐をしたいッ」


「そうか」

桃李は哀れみのような視線をテルヤに送る。

「その為に情報が欲しいッ。俺にはまだ分からないことが多いし、一人で見つけられるような相手でもない。相手が何処の誰なのかさえ分からないッ・・・・・・だから、俺はこの組織に入りたい、です」


更に表情を歪めながらテルヤは頭を下げた。自分の求めるものを口にして。


「この組織にも色んな奴がいる。行く場所を失くした者、国との戦いに備える者、戦いから逃げる者、お前の様に復讐を求める者・・・・・・組織に入りたい理由など自由だ。だが、裏切りは許さん。お前の口調や態度、性格からして今把握出来る段階ではお前は裏切る様な奴ではないと判断できる。でも、それがいつ変わるか分からん。だから、誓え。最初から裏切るならこの組織にお前の居場所はない」


「フフ、相変わらずお人好しだな」

と須棟という名の腕を組む黒髪の女性が笑みを浮かべ桃李に対して口を開く。

「・・・・・・ふん。で、どうする?」

桃李は何故か嬉しそうに鼻で笑う。


「誓いますッ!」

桃李と須棟はお互いに顔を見合わせてジェスチャーでやり取りを行う。


「・・・・・・分かった。錦 輝夜、お前をこの組織の一員として認めよう。だが、完全に気を許す訳では無い。情報は与えるが、信用が欲しければ自力で掴むんだな」


「ありがとうございます」

テルヤは頭を下げる。



「早速情報だ。お前は神隠し事件について何処まで知っている?」


「え?」

予測などしていなかった桃李の問いに反応が素で出てしまう。

「殺し屋、マツユキは知っているか?」

と桃李の更なる質問にあの殺人鬼の狂気に塗れた笑顔が脳裏を過る。

「・・・・・・はい。知っています。奴にツカサ・・・・・・親友が殺されて、能力が発現しました」


テルヤの答えにその場の者達が目を見開く。

明らかに驚いた表情でテルヤに視線が集中する。


「闘ったのか?アイツと?」

と伏見が興奮気味で聞いてくる。

「あ、うん」

と頷くと

「初見でアイツと闘って逃げ延びれたの?」

と部屋の左の方でコンテナに座る鮮やかな藍色のボブショートの少女が驚きの声を上げる。


「・・・・・・いや、能力が発動して殺してしまいました」


とテルヤの言葉に更に驚いた表情になる一同。


「・・・・・・信じられん」

とさっきの少女の足元のコンテナに体制を預ける淡い緑色の長髪男が驚いた表情で口を開く。

「・・・・・・凄っ」

と声を漏らすのは藍色のボブショートの少女の左隣に座る茶髪のポニーテールの少女。

「・・・・・・こりゃあ飛んだ逸材かもな」

と苦笑いで言うのは、須棟と呼ばれる女性の一段上のコンテナに立つ青髪の男性。


「・・・・・・確かに、マツユキがあの街に入った所は確認済みだけど出てきた所はどのカメラにも写ってなかった。その子の言うことは正しいと推測しても大丈夫だと思う」


「そうだな」

と肯定するのは須棟という名の女性。


「そうか。マツユキは死んだのか」

と桃李は安堵した様子と驚きが混ざった感じで声を出す。

何故そんな反応になるか理解出来ていないテルヤは聞きたいことを聞くために言葉にする。

「あの、能力二つ持ちって存在するんですか?」

とテルヤの問いに全員が反応する。

「・・・・・・普通は有り得ないな」

と須棟が答える。

「たった一名を除いて。アイツは異例過ぎる存在だからな。今の所、世界に一人だけ存在している。理論は謎だが、奴こそ『真の天才』と呼ばれている」 

と須棟が続ける。

超能力が個人の才能によるものだとすれば、能力の複数持ちこそ『真の天才』ということになる。

「・・・・・・それって青髪の長髪男だったりしますか?」


とテルヤの質問に「いや、確か黒だった気が」と須棟が答える。


「どうしてだ?」

と青髪の男性の問いにテルヤは答える。

「実は教室でフードを被った『荊使い』に遭遇して、そいつが青髪だったから」

「・・・・・・なるほど。教室にはワイヤーが張り巡らされていたから、同一の能力者だと思ったわけか」

と桃李が納得する。

「それは有り得ないな。能力の系統が違い過ぎるからな」

と須棟が付け加える。


ということはテルヤの街を襲ったのは複数犯という事になる。


『ワイヤー使い』と『荊使い』


「・・・・・・青色の長髪男、フード」

と呟きながらキーボードをカタカタと打つリンゴ。


「該当データ、なし」  

と落ち込んだ様子で表情を歪ませる。


「・・・・・・一つ悪い知らせをしておこう」

と桃李が切り出す。


その言葉に視線を送り、耳を傾ける。


「・・・・・・?」


「この件、神隠し事件には超能力者達にもあまり知られていない事実がある」

桃李の言葉にその場にいる全員が桃李に視線を集め、部屋の中は沈黙になり、耳を傾ける。


超能力が関わる事件は大抵の事は超能力者の耳には入る。噂や組織が会得した情報などにより情報の拡散や交換が各地で頻繁に行われているからだ。



「この件には奴ら・・・・・・『MASK』が関わっている」


桃李の放った言葉。


その聞き慣れないキーワードが耳に残る


(・・・・・・MASK?)

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