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絶望の サイキック

福部誌是

炎の少年

『名古屋』

少年───テルヤは目の前の男の背を追いながら歩いていた。

目の前の男は赤色の棘頭で、上下ジャージを着ている。この男と出会ったのは数日前。



テルヤは自分の育った街を出て、電車を乗り継ぐことで名古屋に到着した。

名古屋へ行こうとしていた目的は自分と同じ超能力者に出会う為。ならば田舎よりも都会の方が効率がいいと考えた。そこで情報を得ながら最終的にはあの『いばら使い』へと辿り着く算段だった。

最初から上手く行くとは思っていなかった。が、最初に面食らったのは名古屋という街そのものだ。

テルヤも情報機器を持っている為、情報としては知っていたが実際に見るのは初めてだった。

自分の住んでいた街より整備された交通機関、空を飛び交う羽付きの機械、歩道を行き交う円柱状の自動ロボなど


この世界は数年前に大変革の時期を迎えた。

より安全でより快適な暮らしを

というテーマを元にして大きな街ではあらゆる自動化が行われた。まさに新時代の幕開けである。


空を飛び交う羽付きの機械は主に荷物を運んでいる。人を乗せた小型飛行機械の開発も進められている。歩道を行き交う円柱状の自動ロボは清掃ロボ。


そして街の至る所に小型銃を装備した警備ロボにドローンが街の様子を観察する為に飛び交っている。



街の警備も厳しくなっている。万が一にテロや侵入者による攻撃が起こったとしても直ぐにそれを鎮圧出来るほどの整備、軍力が街の中に平然と入り込んでいる。


今までの生活からすれば異常そのものでしかない。

だが、世界の在り方としてはそれが普通なのだ。

普通とは常に変わるもの。

テルヤは街の様子に驚きながらも平然を装い数日の間、ネカフェに身を寄せて過ごした。


『あの事件』の事は世間では奇妙な出来事として扱われていた。一夜にして全ての住人が消えた奇妙な街。

そうして処理された。それから、あの街の出入りを規制する事が発表された。あの街に入った者は重たい罪を負う事になる。

それが発覚すれば数十万円の罰金相応の処罰が下されるであろう。


未だ解明出来ていない謎を数人の研究者含め企業が警察と共に調査を進めているらしい。

はたして、それが本当かどうかは知らないが・・・




夜の街は予想より明るかった。街の至る所で明かりがつき、街を清掃するために24時間休むこと無く働いている清掃ロボにも道を照らす懐中電灯が装備されているため本当に明るい。



そして数日前、テルヤは夜道の散歩をしていた。

目的は能力者に出会うため。

数日同じ事を続けていたが結果は予想通りなかなか出会うことが出来なかった。

そもそも、世界にどれくらい超能力者が存在しているのかも知らない状況でテルヤは一国家の1つの街で居るかも分からない存在を探していたのだ。

(見つけることが出来るのっていったいどのくらいの確率なのだろうか?)


などと考えて居た時、近くの公園で物音がした。

物音というには派手な音が響いていた。初めは訳も分からず身を硬直させていたが、テルヤは考え直してその公園に飛び込んだ。


そこでテルヤは目を見開き、呆然と立ちすくむ。

まるで、漫画やアニメのバトルシーンを見ているかのようだった。

薄暗い夜の公園で闘う少年が2人。

1人は上下赤と黒のジャージで掌に炎を灯して闘う少年。

もう1人はジーパンに黒のTシャツで素手で闘う少年。

だが、素手の少年は掌を炎の少年に向けると炎の少年は咄嗟に飛び退いた。そしてさっきまで立っていた場所を謎の衝撃が襲い砂埃が舞う。


炎の少年は地面を蹴って一気に距離を詰める。それに反応する素手の少年はしっかり防御の姿勢をとって攻撃を受ける。

炎の少年の繰り出した右ストレートのパンチに赤い火花が散ってその動作と共に炎が出現する。


(・・・・・・間違いない、超能力者だ)


とテルヤは心の中で呟く。

素人のテルヤの目から見ても目の前で闘う2人はしっかり鍛えられていると理解できる。

相手を前にしたときの立ち回り方、防御の姿勢、攻撃の体制、攻撃と能力の組み合わせ方、反撃のタイミング・・・・・・

そんな言葉が頭の中に不意に浮かんだ。

「・・・どうした?そんなものかァ?!」

と炎の少年が叫ぶ。

素手の少年は無言のまま攻撃と防御を繰り返す。

そうした攻防戦が数分続く。

「オラァ!」

と炎の少年の豪快なフルスイングと炎のコラボレーションが体制を崩した素手の少年の腹にヒットする。

ボゴッ!!と鈍い音が響いて腹を貫いた炎の拳はそのままの勢いで少手の青年を殴り飛ばした。

素手の少年は地面の上を何度か跳ねながら最後は起き上がることなく地面の上に転がった。


乱れた呼吸を整えている炎の少年はこちらに気付いて大きな態度でこちらを睨んできた。

「ア?テメェも奴の仲間か?」


と不意の質問にテルヤはなんと答えていいのか分からず、慌てふためきながら「いや、違います」と首を横に振りながら数歩後ずさる。


よく見ると彼の髪は赤色に染まっていた。顔立ちも綺麗で見た目からの判断は『不良』という言葉が合っている。


「・・・・・・その言葉を信じるかは俺次第だけどなぁ?で、悲鳴を上げねぇ様子から察するにただ何も知らない一般人のバカか、新人超能力者か、俺の命を狙う能力者または科学側か」

聞き慣れない単語が幾つか並んだが一言、


「・・・新人です」

とだけ答えた。これだけで信じて貰えるとは思えない。だけど、証明する事が出来ない。

その言葉を聞いた彼は

「はぁ?そんな事信じられる訳・・・・・・ん?ちょっと待て」

と言葉を言いかけている途中で何かに気付いた様子でテルヤの顔をジッと眺める。

「・・・へ?」

と訳が分からないテルヤは変な声を出してしまう。

「いいから、顔をよく見せろ!」

と言って彼はテルヤに迫ってくる。

身長はテルヤよりも少し小さいが、ジャージの上からでも分かる鍛えられた筋肉にテルヤは息を飲み込んだ。

異様に距離を詰めてくる少年。だが、ここで突き放したり、離れたら今度は食ってかかってくるだろう。


「・・・・・・お前、あの事件の」

と目の前の彼が言い放った言葉を耳にしてテルヤは驚きを隠せなくなる。


と何かを確認をし終わった後で彼は数歩後ろに退いてから「いやぁーわりぃな」と謝ってくれたが、そんなに誠意を感じる事は出来なかった。


「・・・・・・」

テルヤは目の前の少年に対して少し距離を取って警戒したい衝動に駆られた。

それが態度か表情に出たのかは分からないが

「そんなに怖がらなくても大丈夫だ。お前、アレだろ?例の神隠し事件の生き残りだろ?」


「神隠し事件?」

と聞き慣れない単語を口に出す。


「ああ。俺達の間であの事件はそう呼ばれている。おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名前は伏見ふしみ 紅輝こうき


「・・・えっと、俺はにしき 輝夜てるや


とテルヤは自己紹介をする。

「あー、確かそんな名前だった気がするぜ」

との呟きに

「俺ってそんなに有名なのか?」

と質問してしまう。

「まあな。それだけあの事件はイレギュラーなんだよ。・・・・・・おまえ、何も知らないんだな」


「・・・・・・あぁ」

とテルヤは俯いて少し考え込む。少しの沈黙の後、テルヤは決心する。

「なぁ、伏見」

「ん?」と紅輝は不思議そうな表情でこちらを見てくる。

「・・・俺に超能力の事を教えて欲しい」

と思い切って言った。

「別にいいけど、それならもっと的確な奴がいる。だから数日後に俺が所属するチームに案内してやる」

「・・・チーム?」

「あぁ。能力者達はそれぞれ組織を結成するんだ。1人で生き抜くには色々と厳しい世界だからな。そして、俺が所属するチームはこの名古屋に居る超能力者達を仕切る大組織なのだ!」

と後半興奮しながら伏見 紅輝は言う。

「・・・分かった。でも、なんで数日後?」

「いやー、俺も色々と忙しくてな。明日中に仲間に連絡を入れて確認をとるからその返事がいつ来るかによる。お前携帯もってるか?」


との説明になっとくして「あぁ」と問いに対して答える。

互いに番号を交換してその日は別れた。





数日後、テルヤは携帯で事前に決めた待ち合わせ場所に到着する。

伏見 紅輝は既に到着していて、数日前と同じ色のジャージを着ていた。

(・・・・・・こんな都会で上下ジャージだと目立つな・・・まさか、数日間同じやつを着続けてるとかじゃないよな?)

と心の中で心配になる。

伏見 紅輝はテルヤを見つけると右手を高く上げて手を振ってきた。それに応えたテルヤは駆け足で伏見に近づく。


伏見の前で静止する。そのとき、ほのかに洗剤の香りが漂ってきたので心の中で安心し、一息つく。

そんなテルヤを見て伏見は疑問そうに顔を傾ける。

「いや、なんでもない」と適当に誤魔化したテルヤを見て「じゃあ、行くか」と先に歩き出す。遅れまいとテルヤも彼の数歩後ろを歩く。


「あ、一つ言っておくとこれから向かう場所はアジトの一つだからな。少し複雑な道を通って行くぞ」

と半分後ろを向いて言う。

テルヤの緊張感を感じとったのか

「いや、疑ってるわけじゃないぞ。ただ立場的に敵が多くてな。何時何処で誰に見られているか分からないしこういう場合は慎重になる必要があるんだよ。直にお前も分かるさ」


「・・・・・・」


「あと、一つ忠告しておくぞ。お前がこの先どんな選択をとるのか知らないし、それを今ここで決めろと言うわけじゃないが、もし俺の仲間を傷付けるようならその時は手加減はしない。お前を殺すからな」

とテルヤに対して伏見は睨む。

その視線の鋭さに思わず生唾を飲み込む。

全身の毛が逆立ち、冷や汗が溢れる感じに襲われる。

ただ、一つだけ理解できる。

(今の自分では目の前の相手には勝てないという事実)

絶対な壁の差。

もし仮にここで変な気を起こせば、こちらが行動を起こす前に押さえつけられあの能力で全身を焼かれるであろう。

目の前の彼は捕食者に対して今の自分は明らかな被食者。



「それから覚悟を決めろ」


その一言で我に返ったテルヤは伏見に視線を向ける。

「お前がこれから踏み込もうとしているのはそんな世界だ。今までの常識とか通用しない。そんなものは捨てろ。超能力の世界を知る事はそういう事であり、また自分の命を危険な状態に晒す事だ。思い返すなら今だぞ」


と歩みを止めた伏見につられてテルヤも歩みを止める。


そして目を閉じる。一呼吸。しっかりと深く吸って吐き出す。

そして目を開き、

「ありがとう。でも、大丈夫だよ。覚悟は出来ている」


そう宣言する。


「そうか」

と一言伏見は笑顔で返した。


(・・・大丈夫、か。・・・心配だ。そう言って逃げ出した奴を、自分で命を絶った奴を俺は山ほど見ているから)

伏見紅輝は心の中で不安に思う。

それを声に出すこと無く


少年は進む。たとえその道の先に明るい光が待っていなくても

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