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絶望の サイキック

福部誌是

復讐の物語

『?????』


「随分と周りくどい事をするんだな」

そう言って近づいてくるのは赤色のチャイナ服を着たガタイのいい男性である。


「・・・やぁ、ここに来るのはだいぶ久しぶりじゃないか」

その者の声はどこか機械的でもあり、それでも人間味を感じさせる神秘的な声であると言える。

なにも声だけではない。

彼が話している人物は彼が話をしているにも関わらず彼の方を向かない。


「・・・・・・どこまでがお前の計算・・・・・・掌握出来ていることなんだ?」

「・・・・・・」

「答えられないのか?」

と彼はその者に問う。


「・・・・・・そうだね。・・・・・・全て私の計算通りさ」

その者は笑みを浮かべて言う。
 

「・・・・・・なるほどな。やはり俺には貴様が理解出来ない。その自信は彼の存在か?彼は一体何者だ」


「・・・・・・『害』だよ。全てに対しての、ね」

その者は少しの間を置いてから再び口を開く。


「さぁ、歯車を回そうではないか。絶望という名の歯車を!!」

その者は静かに両手を広げて言葉を発する。


「               」




   


『日本・愛知県・名古屋』


右京うきょう晃司こうじは全身を黒の衣服で纏っている。更にその上から黒いコートを羽織っている。ツンツンヘアーの茶髪。年齢は20代後半。

彼は近くの机に歩み寄って拳銃を手に取る。拳銃の色もまた漆黒色である。

腰のホルスターにその拳銃を射し込む。彼はこれからとある『任務』に向かう。

その為の装備を揃えていたのだ。

『任務』と言っても今回は捜索に近い感じにはなるとは思うが

(街から人が一人残らず消える⋯⋯そんな事が一晩で可能なのは異能者の力としか思えない。)

机の上に散らばる数多くの銃弾をまとめ上げる。


「・・・・・・今から向かうんですね」

と彼に話し掛ける男性はサラッとした綺麗な黒髪を肩近くまで伸ばしている長髪男である。一見女にしか見えないが男である。なんでも、家の風習で幼い時から女性の様に育てられてきたとか。

彼は晃司が居る部屋の壁に背中を預けて話しかけてくる。

戸浦とうらか」

「はい。そうですよー」

とニッコリ笑って壁から離れる。

「・・・・・・今回の招集はかかってないはずだが?」


「暇潰してすよー。どうせ外に出ても奴らに会えるわけないし」


「・・・・・・今回は俺の班が担当する。お前は邪魔をするなよ」

と晃司は彼に対して鋭い視線を送る。


「分かってますよー。それが『上』からの命令ですし。それに、貴方には逆らえませんし」

と彼は笑顔でそう放つ。



彼らが居る部屋に通ずる廊下を勢いよく走る音が響いてくる。小刻みなリズムが鳴り響き、彼らは廊下の方に視線を送った。


「隊長!」

と勢いよく走り込んで来たのは10代後半に見える若々しい青年。

赤茶色の短い髪。服装はスーツ。彼の名前は浜野六佐はまのりくさ

彼は部屋に入り次第、敬礼の姿勢で次の言葉を口にした。

「準備が整いました!」


「・・・分かった。直ぐに行く」

と晃司は六佐に向かって返事をし、外に向かう為に体の向きを変えた。

「行ってらっしゃーい」

戸浦は笑顔を崩すこと無く、部屋から外に向かう彼らの背中に手を振る。





少し長い廊下を晃司と六佐は共に歩きながら外に向かう。

「なんの話をされてたんですか?」

と六佐は晃司に対して尋ねる。

「いや、別に大した話はしていない」

と晃司は返す。

(正直いって奴はあまり好かない。裏が見えないというか)

常に笑顔で接してくる『戸浦』は基本人当たりがよく、誰でも気軽に接する。

だが、晃司はそんな彼が苦手だ。

晃司は人と接する事が得意という訳ではないが、それを除いたとしても彼と接するには少し一種の戸惑いを感じてしまう。

理由と聞かれると特に思い当たるものはないのだが⋯⋯


彼らは廊下の先にある小さな部屋に辿り着き、その部屋の奥にある扉を開く。

外から太陽光が漏れだし、彼らを包んだ。





   



『ある小さな街』


その街に黒く、車体が低い車が数台到着する。


車の扉が開き、数人の黒服と言っても過言ではない男女が車から降りる。

その内の2人は晃司と六佐。


「隊長。ここが例の・・・、」

と少し高めのテンションで話しかけてきたのは白い髪を頭の後ろで網目状に2つに縛る女性。

名前は白華しらはな舞香まいか。年齢は19歳。

服装はバトルスーツを着ている。上が黒で下は青色のパンツ。

1つ問題なのは胸元が大きく開いている事だ。

彼女曰く元からそういうデザインらしいのだが・・・


「そうだ。一晩で住人が全て消えたという・・・・・・」

という晃司の言葉に六佐は唾を飲み込む。

(まぁ、たしかに異様な空気が漂っている気がする)

と今までの経験からこの街には『何かがある』という推測を心の中で立てる。

「これから調査を行う。白華と浜野は俺と一緒に来い。それ以外の者はいつものペアで各自散らばれ!」


という晃司の命令に「はーい」と元気よく返事をする舞香。それ以外の者は「了解」と言い残してその場から駆け足で離れていく。





彼らはある組織の人間だ。

組織名『マジックハント』

異能の者達に何らかの恨みがある者達によって構成された組織。あるカリキュラムを経て試験に合格した者だけが所属を許される。

その存在は一般人には知られていない。

彼らの仕事は単純である。

ハント。狩る事だ。

異能の力を持つ者を。科学の叡智と技術が組み合わさった科学武器で


要は人殺しである。







どのくらい時間が経過しただろうか


晃司はある家の中を調べていた。

今までなんの証拠も見つかっていない。

部屋の中は綺麗に片付けられている。なんの痕跡も残っていない。

この家には誰が居たという痕跡がない。確かに存在していた筈の者が居たという痕跡が残っていないのだ。

(可笑しすぎる。この状況は変だ。いくら異能の力といってもこれ程の事が出来るとは思えない。例えば、力を使って街中の人間を殺す事は可能だろう。そして、その遺体を消す事も。だが、家具などを残し人が居たという痕跡と気配を消す事が可能なのだろうか?)

そんな規模が大きい力は今のところ報告されていない。


(存在その者を消す力?いや、戸籍は残っているのだ。・・・・・・まだ、俺達の知らない力が存在する。その事は確かだ)


「隊長。隣の家もダメでした」

と家の扉をから六佐が入ってきてその事を告げる。

「・・・分かった」

と言って晃司は家を後にする。






「・・・雲行きが怪しくなってきましたね」

と外に居た舞香が呟く。

晃司は空を見上げて

「そうだな」と返す。


雨が今にでも降り出しそうな天候。




ピロン

と晃司のズボンのポケットに入っている通信機器が通知を知らせる。

晃司はそれを取り出す。フラットな形状の端末を耳に当てる。

「俺だ」と答えた晃司に対して通話相手が何かを話す。


それを聞いた晃司の表情が一変する。

「高校?分かった。直ぐに向かう」

晃司は通話を終えて端末をしまい込む。

「近くの高校で大量の死体が見つかったらしい」

と晃司が伝えると案の定、彼等も驚きの表情に変わる。

「急ぐぞ!」

と言って走り出す彼の後ろを
「はーい」「了解」とそれぞれの返事をして後に続く。









高校の中はワイヤーが張り巡らされていた。

ワイヤーの至る所は赤色に染まっていた。
そして各所で死体が散らばり、教室では山状に死体が積み重なっていた。


それをみた六佐はその場で嘔吐。他の者もそれぞれの反応を見せた。

舞香と晃司だけは目を見開きそれを無言でただ眺めていた。


(惨い。人のやることでは無い)



血液が飛び散った窓、床、壁

荒らされた教室。所々割れた床とボロボロに穴が空いた床。




「・・・異能者ですね」


と舞香は冷たい声でやっと沈黙を破る。

「・・・ああ」

と晃司も掠れた唇を開いて声を出す。


いつの間にか雨が降り出しており、窓には多くの水滴が付着する。


(ワイヤーか・・・、)



晃司は早足で教室を出て行く。


(学校の生徒、教師その全てを殺す程の能力。それに死体を山積みにしている事から犯人は殺しを楽しんでいる。意図的か、単なる遊びか)


晃司は校舎の玄関で外を眺めながら煙草に火を付けて口に運ぶ。指でタバコを外してから煙を吐く。


(・・・それにしても、何故学校だけ遺体を残した?俺達に対する挑戦か?それとも犯人は複数犯?)


などと考えながら雨で視界が悪い中、晃司の眼は確かに『それ』を捉えた。



煙草を地面に落とし、靴で力強くタバコを踏んで日を消した後雨の中地面を蹴って走り出す。







それを校舎の窓から見ていた舞香は

「あ、晃司さんが走っていくよ」

とその場にいる人に告げる。

「何かあったんだろ。俺達はこの後始末が先だ。というか、隊長って呼べよ。任務中だろ」

と六佐は言葉を返す。


「あ、またやっちゃった」

舞香は口に手を当てる素振りをする。

そして、窓から離れて仕事に戻る。

この死体が誰かに当てはまればいいんだけど、それを判別する事が難しい死体もある。

でも、出来るだけの事はしなければならない。先ずは死体の数がこの学校の全生徒、全教師の数と当てはまるかどうか

その為に数を数えなければならない。

「あーあ、せっかくバトルスーツ着てきたのに意味ないじゃーん。もっとこういうのを期待してたのに」

と言いながら舞香は空気を殴るモーションをする。シャドーボクシングだ。


「そんなのある訳ないだろ。数日前に異変に気付いた捜査員がこの街に来てるんだから。敵が潜んでいるならその捜査員は殺されてるよ」

と六佐は冷たく返す。

「えーつまんなーい」

と舞香は頬を膨らませる。


   


「う、ぐっ」

少年は教室の床に頭を擦り付けて喘ぎ声を発する。

教室いや、その校舎で発せられる音は彼の苦しむ声と細いワイヤーを伝って床に落ちる血のポタ、ポタという音だけだった。


親友に続いて幼馴染の少女を含め居場所だった全てを失った。

その全てとは本当に彼の全てで、もう失うものは自分しか残っていないと言っても過言ではない。

全てを失い、彼の心は折れた


いつの間にか窓からオレンジ色の光が差し込まれている。

時間の経過など知る由もない彼は教室に蹲ったまま動かない。


そのまま彼は深い眠りに落ちた





























────そして、彼の世界は音もなく崩れ去る















眠りから覚めたのは2日後だった。少年はよろめきながら教室を後にする。

馴染み深い門を抜けて道沿いに歩いていく。彼の瞳に光は写っていない。魂が抜けたような状態で歩き続けて道沿いにあるコンビニに入る。

自動ドアが勝手に開いて彼はそのまま奥に進む。

棚からおにぎりを2つ手に取って財布を取り出す。

誰もいないカウンターにお金をきっちり出してコンビニから出た。

そのままの足取りで家まで帰る。

扉を開けた後、鍵を閉めないまま彼は床に崩れる。

溢れる涙を止めることもできず、彼はおにぎりの袋を破き出す。

そして、おにぎりを口に運んだ。

途端、吐き気が波のように押し寄せる。


口を塞ぎ込み、おにぎりをその場に捨てた少年は手を口に当ててトイレに駆け込んだ。



便器に頭から突っ込んで胃の中のものと一緒に吐き出す。

汚物には米が混ざり、なんとも言えない異臭が漂う。

1回吐いただけでは治まらず、何度も吐き続ける。まるで、胃が身体の中から飛び出てくるのではないかと錯覚させられるほど吐いた少年は水を流した後、キッチンの水で口の中を洗う。


そして、床の上に転がるおにぎりを見詰める。

そのおにぎりをゴミ箱に捨てて2つ目のおにぎりの袋を破いてかぶりついた。

2回目の吐き気に見舞われ、彼はトイレに駆け込む。

そして、何度も吐き戻した後トイレの水を流す。

再び涙が込み上げる。

口をゆすいだ後、冷蔵庫の中のお茶を口に含んだ。

どうやらお茶は大丈夫らしい。

2個目のおにぎりもゴミ箱に捨てた後、彼は家を出た。

そして歩き出した。

どの道をどう歩いてきたか分からない。


彼は歩き続けた。

ゆっくりと


(・・・・・・だれ、か・・・・・・いない、のか?)


そのまま夜になるまで歩き続けた。





次の日、彼は公園のベンチの上で目が覚めた。

ゆっくりと身体を起こして歩みを始める。重くなった思考、身体。

それでも彼は歩みを止めることなく歩き続ける。


限りなくゼロに近い希望を求めて



それから数日は何も食べず、睡眠もせずに歩き続けた。


唇が乾き、割れ始める。


親友の家の窓を割って中に入る。そして、何かを探す素振りをして数分後、家を出る。


そのまま幼馴染の少女の家に向かった。

家の中で色々何かを探す。

恐らく母親の姉の家の住所が書いてあるメモを見つけた。


家を出た後、更に街を歩き続けた。




その日の夜

彼は自宅の床に座り込む。

部屋の電気は付けていないから、辺りは真っ暗だ。


ツカサ、ナズナ、おばさん、おじさん、先生・・・・・・

お世話になった人たちを思い出して少年は復讐を静かに決めた。


折れて折れてそれでも、探した希望は見つからず、彼に残された道は数少ない。


自殺を考えた時もあった。


それでも、彼は残された。



残された意味



今考えても答えは出ない。

せめて、仇はとる


光が消失した少年の眼光に更に闇が落ちる。



壊れ、崩れた心をどうにか保ち、形を為す。


   
   


「ちょっと待て!」

そう言って晃司は少年を止める。

乱れた息を整いながら彼を見詰める。

黒髪の少年。顔はよく見えない。黒い服、下はジーパン。上から紺色のパーカーを着ているが、前のファスナーは閉じていない。

だが、晃司の呼び掛けに反応して歩みを止めてくれたことから敵意は無さそうだ。


「いったいここで何をしている?」

と晃司は問いかける。

「・・・・・・」

「君はこの街の住人なのか?」

「・・・・貴方は何者なんですか?」

と晃司の問いに少年は問いで返した。


(どうする?素直に名乗っていいのか?体格から察するに高校生だろうか?・・・まさか、さっきの高校の、生き残りか?)

と少し躊躇ってから

「俺はこういった事件を調査している者だ」

と晃司は答える。

雨の中少年はこちらを振り向くことなく次の質問をしてきた

「こういった?まさか超能力を知っているんですか?」


「・・・・・・っ!」

晃司は少年の言葉に驚く。

(目の前の少年は知っているのか?)

晃司は腰のホルスターから拳銃を取り出しトリガーに指をかけて銃口を少年に向ける。

「答えろ!貴様は異能者か?」

「・・・異能?超能力の事ですか?」


「そうだ」

「撃ったら判断出来るんじゃないですか?」


「いや。貴様は超能力者だ。普通なら銃を向けられて平然と会話が出来るはずがない」


晃司はトリガーを引く。ドン!という音と共に銃弾が発射される。

だが、銃弾は少年に届く前にボロボロに崩れ落ちた。


「・・・・・・っ?!」

と驚きを隠せないでいる晃司。銃弾がボロボロに崩れる瞬間、少年は初めてこちらを見た。

色鮮やかな紫紺色の右眼。

明らかな異能の力を目の当たりにする。

晃司は紫紺の瞳に目と心を奪われる。

動けない。言葉を発することすら出来ない。それ程までに美しい。


だが、彼の能力により晃司は自分が持っている銃までもがボロボロに崩れる様を見た。

気づいた時には銃口は存在せず、数秒で晃司の拳銃は消失した。


「・・・もう、いいですか?」

と少年────テルヤは目の前の男性に対して確認をとる。

そして、男性の答えを待つこと無く歩き出した。

雨の中、晃司はその寂しそうな背中を見つめ続けた。






   


帰りの車の中で晃司は雨に降られる外の景色を呆然と眺めていた。

「どうしたんですか?」

と舞香が顔を覗かせながら聞いてくる。

「・・・白華は悪意の無い異能者がいると思うか?」


「え?」

晃司の問いに舞香は固まる。

当然だ。

(俺達は今まで異能者は殺すべき『敵』だとずっと思ってきたのだから。そう信じて殺してきたのだから)

今まで多くの異能者と闘ってきた晃司にとっても異例のことであった。


敵意のない異能者


(一体アイツは何者だったんだ?)

と答えの出ない謎に頭を悩ませ続けた。




   


雨の中、テルヤは歩き続けた。あの街から出てどのくらいが経過したのだろうか?



ずぶ濡れになりながら、重さを増していく衣服に耐えながら彼は進む。



青色の髪の男を求めて





ここから始まる。


────の復讐の物語

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