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絶望の サイキック

福部誌是

目覚め

雲と雲の間に見え隠れする月の光が窓から入り込み薄暗い部屋の中を照らし出す。



時は現在に戻る



右眼に激痛が走り、血が1滴流れ落ちる。



それでも、テルヤは奴を睨み続けた。



「あぁ?壊すぅ?なにをぉ?」



銀髪の男はヘラヘラとした様子で立っている。



「おまえを殺す!」


殺意と怒りが混ざったかのような声で言った。



「イヒヒヒヒヒヒヒ⋯殺す?」



男はまだヘラっとしている。



それに対し更に怒りを感じる。



「イヒヒヒヒ。⋯⋯⋯おまぇが死ね!」



と笑った後に少しの沈黙を置いて男が叫び、死体から剣を抜いて右に払った。



剣の刃は決してテルヤに届く距離じゃない。


それでも嫌な感じがする。空を切るような音が響いて何かが迫ってくる。



そんな感覚に襲われ、テルヤは右に大きく飛んで転がりながら着地する。



残像を掠めて木で作られた壁が壊れ、木くずが舞う。



「あぁ?」


テルヤが避けた事に男が声を上げる。


テルヤは壊れた壁を見る。


デカい横に一直線の剣傷。



まさにそれその物が刻まれていた。



「可笑しい。なんなんだよ!」



と独り言を呟く。



「⋯⋯まさか、知ってるのか?」


と男は驚き、「いやいや」と1人で首を振る。


「そんなはずがねぇ。まさか、勘で避けたってのか?」


と1人で結論を出す。



「くっ!1人で喋ってんなよ!一体なんなんだよ!」


とテルヤは強めに言う。


男はテルヤを睨み少し黙ってから口を開いた。



「まぁ、殺す前に教えてやってもいいですよねぇ。一体何が起こってるのか理解出来ずに死ぬなんて悲しいですもんねぇ。慈悲というものですねぇ。イヒヒヒヒヒヒヒ。キミィ超能力って知ってますかぁ?」




「⋯⋯ちょ、超能力!?」



「イヒ。そうですぅ。そう簡単には理解出来ないかもですねぇ。誰もが最初はそうですからぁ。きっと」



マジで頭がイカれてる。何言ってんだよ?



「そんなものが存在すると思ってんのか?」



と問う。



「⋯⋯⋯⋯」



男はテルヤをじっと見詰めて黙り続ける。



「なんだよ?」



「⋯いや。そう言えば口調が変わってますよぉ?」



「⋯ふん!どうでもいいだろ!」



「⋯なるほど。裏の顔ってやつですねぇ。イヒヒヒヒ。質問の答えは存在するですぅ」



「はぁ?」


「イヒヒヒヒ。この世に超能力は存在する。但し、それを知っているのは全人類の数割程度」



驚いて何も出ない。『超能力』そんなものが存在するなんて



確かに、俺が知っている世界が全てでは無い。俺に万能の知識が無いようにこの世には知らない事が存在する。



例えば、あるスポーツをやっている人とやってない人。


やっている人からすればそのスポーツのルールなどを知っているのは当たり前なのだろう。



知らない事が存在するのは当たり前なのだ。


それがあるのかないのかを証明する時それが存在しないと証明するのは難しいことだ。


全てを試さないといけないから。



普段目にしているものが全てではない。



当たり前で最も恐ろしい。



「イヒヒヒヒ。理解出来ますかぁ?」



「⋯⋯⋯」


出来るわけがない



「⋯冷静ですねぇ。まぁ、死ぬ事に変わりはないんですがぁ!!」



と男は銀色の長髪を揺らして再び剣を振るった。



テルヤは目に見えない『斬撃』を何とか避ける。


「くっ!」



──俺は一矢報いる事も、逃げ延びる事も出来ないのかよ!


逃げようと背を向けたら待っているのは『死』



生きる事すら阻まれる。



だから。背を向けてはいけない。



部屋の中に剣傷が刻まれていく。



「イヒヒヒヒ。いいねぇ!もっと逃げろぉ」



──奴はこの状況を楽しんでる。どうすればいい?



迫る斬撃を避けて、避けて、避けまくる。




右眼から零れた血が横に流れて⋯⋯



右眼に更に激痛が走る。


「ぐっ」



「イヒヒヒヒ。そろそろ終わりにしますかぁ!!」


と男は剣を振るう。更に迫る斬撃をテルヤは身を低くして滑り込んで避けた。



木が割れる⋯というより斬れる音が響いて崩れる。


テルヤは右眼に手を当てながら立ち上がる。











───待ってるよ



と誰かの声がする。



男なのか女なのか分からない。


だが、その者は笑っている。


そんな情景が不意に頭に浮かんだ。







テルヤは顔を上げる。右眼の痛みが少しずつ引いていく。




テルヤの変化に気付いた銀色の長髪男は表情を変える。



「な、なんだよっ。そ、その眼はぁ!」




────少年の右眼は紫紺に輝いていた


この世のものとは思えないほど美しい紫紺の輝きを放つ眼球




変色。明らかな変色


最初はそうとしか理解出来なかった。



粉。



細かい粉がテルヤの周りに舞う。


粉が風に流され舞いながら部屋の壁に触れるとそこから腐り始める。ボロボロにそこには初めから何も無かったかのように穴が出来上がる



「な、なぁ!」



男は目の前で奇声を発する。



テルヤは理解できない。


これが何なのか全く分からない。


「ま、まさかぁ!貴様も超能力者なのかぁ!?」



男の言葉に驚き、理解する。



この力が『超能力』なのだと。




「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


テルヤは怒鳴りながら右手を男に向かって伸ばす。




「う、うぁぁぁぁ!」


と男は叫びながら何度も剣を振るった。


だが、飛ばされる斬撃は全て男に向かってゆっくりと進む粉に触れて音もなく消えていく。



男は叫び、後退りしながら動作を繰り返す。



「う、う、うううううううう」



男は涙目になり、『粉』に触れる。



髪が抜け落ちる。身は崩れていく。まるで男の身体を焼いたみたいに。


ボロボロになりながら何かを発する。そして、テルヤに向かって手を伸ばす。



『腐食』



男の剣も徐々に形がなくなっていく。



衣服を溶かし肉、骨共にくずれていく。







──そして、そこには何も存在しなくなった。





テルヤは膝を付く。そして込み上げてくるものをその場に吐き出した。




人を殺した事への重み



腐っていた



髪も眼球も皮も肉も骨も


全てが腐っていた。



気持ちが悪い。






乱れた息を整える。


そして変わり果てた親友に視線を送る。




────ツカサ




と口から零れたのは


もうこの世に存在しない親友の名だった。



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