絶望の サイキック
枯れる涙
よくRPGゲームやアニメ、漫画などで見かける中世の長剣を実際に見る機会があるなど思いもしなかった。
「⋯⋯そういえば、自己紹介がまだでしたね。私、ロナルド・松雪マツユキ と申します。殺し屋です。イヒヒヒヒ」
と狂気まみれの男が話す。
銀色の長い前髪の間から鋭い眼光が覗く。その異様さはこの世のものでは無い。
「殺し屋」
そのキーワードに完全に身体が硬直する。
「⋯さあ!観念なさい!貴方はここで──ぐっふ!!」
と狂気に満ちた殺し屋にツカサが体当たりする。体勢が崩れた殺し屋に更に振り回した鞄を投げつける。
殺し屋はその場に後ろから倒れ込む。
「ほら!」
とツカサは僕の手を半ば強引に引っ張り上げる。
僕が立ち上がるとツカサに更に力強く手を引かれて共に走り出す。
「⋯⋯ごめん。ありがとう」
キツく当たってしまった事に対しての謝罪と助けられた事に対しての感謝を告げると「いいってことよ」とツカサは笑顔で答えた。
僕とツカサは共に走り続けた。
──どのくらい走っただろうか
かなりの時間走っていた気がするが明確な時間は分からない。
共に息切れ、疲れた身体を一生懸命に動かし続ける。
いつの間にか落とした鞄のことは忘れ、奴から逃げる為に走り続ける。
かなり距離は空いたはずなのにも関わらずベットりとした嫌な雰囲気に身を包まれるかのような感触に襲われる。
何かが風を切り裂き迫ってくる
そんな鋭い音を僕は感じ取った。
 
と、次の瞬間────
唐突だった。最初は何が起きたのか理解できなかった。
並走していた筈のツカサが急に失速した。
いや、その場に倒れ込んだ。
僕は急停止してツカサの方を振り返る。
そこには右膝を抱えて倒れ込むツカサの姿があった。
ツカサの右足は足首から先が無くなっていた。
溢れ出す流血。
「ぐっ」
と奥歯を噛み締め、目には涙を浮かべて痛みを我慢するツカサ。
少し離れた場所に切り取られた足首がある。
そう。まるで何かに切断されたかの様な傷口。
「つ、ツカサ」
僕は必死に彼の名を呼ぶ。
人の肉の断面が見える。骨の様な白い部分も見え隠れする。
「イヒヒヒヒヒヒヒ」
奇妙な笑い声が辺りを包み込む。
僕はツカサを抱き抱えて近くの廃墟の中に逃げ込んだ。
薄汚れ、人気のないその場所は普段なら誰も寄り付かない。
だが、今宵は
男子高校生2名と1人の殺人鬼が入り込む。
そっと息を殺して僕はツカサと共に狭い部屋の片隅に身を低くして隠れる。
「どーこですかぁ?」
と叫びながら建物をうろつく殺人鬼。
右手に持った長剣で辺りを切り刻んでいく。
「出てきてくださいよぉ!」
「⋯⋯」
「聞こえてますよねぇ?!」
この建物は三階建て。今僕達が隠れているのは三階の1番奥の部屋。
そして、奴はまだ二階にいる。
恐らく全ての部屋を虱潰しで探している。見つかるのは時間の問題だ。
恐怖で脚が震える。
傍で横になっているツカサは段々と息が荒くなってきている。
どうする?
飛び降りるか?
いや、でもツカサの身がもたない
そんな事で頭がいっぱいになっているうちに奴の声が階段の下で止まった。
「⋯もしかしてぇ!三階だったりしますぅ?!」
奴が階段に足をかける。ギギと古い木の音が鳴り響く。
「⋯テルヤ⋯俺を置いて⋯逃げろ」
掠れるかの様な声でツカサが呟く。
「バカ言うなよ!僕にとっての唯一無二の親友を置いていける訳ないだろ!」
声を殺し、でも感情を伝えるために喉の奥から叫ぶ。
「⋯はは。変な奴⋯⋯だな。普通は⋯⋯置いて⋯逃げるんだぞ」
とツカサはヘラっと言う。
「大丈夫。絶対何とかする」
僕はツカサの手を取って強く言う。
「みぃつけましたよ!イヒヒヒヒ」
その声に僕は振り向く。
次の瞬間僕は背中に激しい衝撃を感じる。
「ぐっ!」
僕は閉じかけた眼を開いて状況を確認する。
僕は部屋の反対側の壁に衝突していた。
「なっ!」
目の前の惨状は目を背けたくなる内容そのものだった。
ツカサの下半身は斬り飛ばされ内蔵が部屋に散らばる。
僕は眼を見開き叫んだ。
喉の奥から
腹の底から
 何と叫んだのか分からない。
────────っ!
殺し屋はそんな僕の声を聞き、口を三日月型に変え笑顔で長剣を振り上げる。
僕は必死に手を伸ばす。
届かない距離を
涙が横に流れる
薄汚れた手を
いつの間にか赤色に染まった手を
死ぬ最後の瞬間まで僕を守ってくれた親友に
────!!
鈍い音が鳴り響く。
殺し屋の剣はツカサの身体を貫通し床まで達する。
それからの記憶は曖昧だ
ただ、明らかなのは
殺人鬼は身を仰け反って天に向かって奇声を発しながら笑い
僕は泣いていた。
何も出来なかった自分を悔やみ
ただ泣いていた。
きっと、僕の涙は枯れ果てるだろう
「⋯⋯そういえば、自己紹介がまだでしたね。私、ロナルド・松雪マツユキ と申します。殺し屋です。イヒヒヒヒ」
と狂気まみれの男が話す。
銀色の長い前髪の間から鋭い眼光が覗く。その異様さはこの世のものでは無い。
「殺し屋」
そのキーワードに完全に身体が硬直する。
「⋯さあ!観念なさい!貴方はここで──ぐっふ!!」
と狂気に満ちた殺し屋にツカサが体当たりする。体勢が崩れた殺し屋に更に振り回した鞄を投げつける。
殺し屋はその場に後ろから倒れ込む。
「ほら!」
とツカサは僕の手を半ば強引に引っ張り上げる。
僕が立ち上がるとツカサに更に力強く手を引かれて共に走り出す。
「⋯⋯ごめん。ありがとう」
キツく当たってしまった事に対しての謝罪と助けられた事に対しての感謝を告げると「いいってことよ」とツカサは笑顔で答えた。
僕とツカサは共に走り続けた。
──どのくらい走っただろうか
かなりの時間走っていた気がするが明確な時間は分からない。
共に息切れ、疲れた身体を一生懸命に動かし続ける。
いつの間にか落とした鞄のことは忘れ、奴から逃げる為に走り続ける。
かなり距離は空いたはずなのにも関わらずベットりとした嫌な雰囲気に身を包まれるかのような感触に襲われる。
何かが風を切り裂き迫ってくる
そんな鋭い音を僕は感じ取った。
 
と、次の瞬間────
唐突だった。最初は何が起きたのか理解できなかった。
並走していた筈のツカサが急に失速した。
いや、その場に倒れ込んだ。
僕は急停止してツカサの方を振り返る。
そこには右膝を抱えて倒れ込むツカサの姿があった。
ツカサの右足は足首から先が無くなっていた。
溢れ出す流血。
「ぐっ」
と奥歯を噛み締め、目には涙を浮かべて痛みを我慢するツカサ。
少し離れた場所に切り取られた足首がある。
そう。まるで何かに切断されたかの様な傷口。
「つ、ツカサ」
僕は必死に彼の名を呼ぶ。
人の肉の断面が見える。骨の様な白い部分も見え隠れする。
「イヒヒヒヒヒヒヒ」
奇妙な笑い声が辺りを包み込む。
僕はツカサを抱き抱えて近くの廃墟の中に逃げ込んだ。
薄汚れ、人気のないその場所は普段なら誰も寄り付かない。
だが、今宵は
男子高校生2名と1人の殺人鬼が入り込む。
そっと息を殺して僕はツカサと共に狭い部屋の片隅に身を低くして隠れる。
「どーこですかぁ?」
と叫びながら建物をうろつく殺人鬼。
右手に持った長剣で辺りを切り刻んでいく。
「出てきてくださいよぉ!」
「⋯⋯」
「聞こえてますよねぇ?!」
この建物は三階建て。今僕達が隠れているのは三階の1番奥の部屋。
そして、奴はまだ二階にいる。
恐らく全ての部屋を虱潰しで探している。見つかるのは時間の問題だ。
恐怖で脚が震える。
傍で横になっているツカサは段々と息が荒くなってきている。
どうする?
飛び降りるか?
いや、でもツカサの身がもたない
そんな事で頭がいっぱいになっているうちに奴の声が階段の下で止まった。
「⋯もしかしてぇ!三階だったりしますぅ?!」
奴が階段に足をかける。ギギと古い木の音が鳴り響く。
「⋯テルヤ⋯俺を置いて⋯逃げろ」
掠れるかの様な声でツカサが呟く。
「バカ言うなよ!僕にとっての唯一無二の親友を置いていける訳ないだろ!」
声を殺し、でも感情を伝えるために喉の奥から叫ぶ。
「⋯はは。変な奴⋯⋯だな。普通は⋯⋯置いて⋯逃げるんだぞ」
とツカサはヘラっと言う。
「大丈夫。絶対何とかする」
僕はツカサの手を取って強く言う。
「みぃつけましたよ!イヒヒヒヒ」
その声に僕は振り向く。
次の瞬間僕は背中に激しい衝撃を感じる。
「ぐっ!」
僕は閉じかけた眼を開いて状況を確認する。
僕は部屋の反対側の壁に衝突していた。
「なっ!」
目の前の惨状は目を背けたくなる内容そのものだった。
ツカサの下半身は斬り飛ばされ内蔵が部屋に散らばる。
僕は眼を見開き叫んだ。
喉の奥から
腹の底から
 何と叫んだのか分からない。
────────っ!
殺し屋はそんな僕の声を聞き、口を三日月型に変え笑顔で長剣を振り上げる。
僕は必死に手を伸ばす。
届かない距離を
涙が横に流れる
薄汚れた手を
いつの間にか赤色に染まった手を
死ぬ最後の瞬間まで僕を守ってくれた親友に
────!!
鈍い音が鳴り響く。
殺し屋の剣はツカサの身体を貫通し床まで達する。
それからの記憶は曖昧だ
ただ、明らかなのは
殺人鬼は身を仰け反って天に向かって奇声を発しながら笑い
僕は泣いていた。
何も出来なかった自分を悔やみ
ただ泣いていた。
きっと、僕の涙は枯れ果てるだろう
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