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絶望の サイキック

福部誌是

日常が崩れる音

――時は数時間前まで遡る


「なぁ、輝夜。幽霊っていると思う?」


とすぐ横で話しかけてくるのは小学校からの幼馴染であり、親友である『阿ヶ部アガベ 統咲 ツカサ』。


「⋯うーん。どうだろうね?僕はあんまりそういうのを信じないタイプだからな」

と僕、『ニシキ 輝夜テルヤ』は返事をする。


「だよなー」

とツカサは両手を頭の後ろに回し少し体重を傾けながら言った。

「⋯なるほど。昨日の夜、幽霊特集番組でも観てたんだな」


と僕は返す。


「え?なんで分かったの?」

と半分程驚いてツカサはこちらを向く。

「⋯何年付き合ってると思ってるんだよ?」


「ははは。そうだよな」

とツカサは笑顔で返してくる。

僕とツカサは正反対の性格と言っても過言ではない。

ツカサは少しやんちゃで野生児。友達も多く、基本的に嫌がる人間はいない。

なんにでも興味を示し、手を出す。昆虫なども普通に触るし、休み時間は外で遊ぶ方だ。


そんなツカサに対し僕は消極的で静かな方だ。休み時間は携帯を触るか読書をするかに限られる。

高校に入って間もない頃、僕とツカサが仲がいい事にクラス中が驚いたほどに正反対なのだ。


ちなみに僕とツカサは同い年の高校2年生。今日は月曜日で今は一緒に高校までの道を歩いている。


この街は比較的に小さくて小学校、中学校共に2つしか存在していない。


高校は辛うじて3つ存在している。

⋯が、どの高校も在校生は少ない。





その後もたわいのない話を続け、共に校門をくぐった。







午前4時間の授業を終わらせて昼の休憩にはいる。

僕は小説を片手におにぎりを口に運ぶ。


「なあ、数学の宿題終わってる?」

と突然声がして振り返るとそこにはツカサが立っていた。

「あ、やばい」

と僕は本のページに栞を挟んで本を閉じた。

そして鞄の中から数学のテキストを取り出し、机の上に広げる。


「だよなー!」

とツカサは隣の空席に座り、僕の方をチラチラと見ながら手を動かす。


するとそこへ

「あー!そのやり方はためにならないよー!」

と1人の女子生徒が近付いてくる。

「ん?いいんだよ。これくらい。なんなら南沙のやつ写させてくれよ」


「いやよ!」

と彼女は頬を膨らませてそっぽを向く。


彼女の名前は『白井シライ 南沙ナズナ』。僕とツカサの幼馴染。


「しっかり身に付けないと後で後悔する事になるんだよ!」


「ふん!俺は別に成績の順位とか気にしないタイプだから」


「あーそれは今度のテスト勉強しないって言ってるようなもんだよ!」


「いや、そうだけど?それにいつも通りだしな」


「むぅ」と彼女は更に頬を膨らませる。


「まあまあ。それくらいに」と中立に入るのは⋯誰だっけな?

まあ、いつもナズナと絡んでいる女子生徒だろう。


僕は横のやり取りを無視してひたすらに手を動かす。

「あ、おい!無視すんなよ!」

とツカサに小突かれる。

「うっ!」と声を漏らし、慌ててコホンと喉を鳴らしてから


「もうすぐ休み終わっちゃうけどいいの?」

と返す。


「げっ!やっべ!」

とツカサは大慌てで宿題の方に集中する。





昼休みが終わり、数学の時間へ。僕は勉強は得意な方だけど好きではない。


だから数学も適当に先生の話を聞き流す。それでも、問題の解き方も計算方法も頭に入ってくる。


まぁ、俗に言う「勉強しなくてもそこそこの点数は取れますよ」

的な感じだ。





時間が過ぎて次の授業へ。

科目は体育。

運動はまぁ、普通だ。身体を動かすのは嫌いではないがあんまり得意ではない。

「⋯なんか、いつも⋯なんだろうな。まるで、リミッターでも付いてるかのように体が重い」

と独り呟く。

「え?なんだって?」

と隣にいたツカサが聞き返してくるが、「いや、なんでもない」


と首を振って意識をバスケットボールに集中させる。

チームメイトからのパスを受け取り、それをツカサに回す。


ツカサはボールを受け取り、流れるかのようにドリブルしてそのままシュートを決める。


それを見学していた女子生徒からの歓声にツカサは片腕を挙げて応える。




その後も授業をなんとなく受け流して帰りになる。

僕もツカサも部活動には入っていない。

ツカサは運動神経いいのになんで部活に入らなかったの?

と以前聞いたことがある。

その時、「まさか、お前俺が超暇人って思ってるんじゃないだろうな?」

と返されて「いや、まさか」と答えた。


「⋯いや、冗談だよ。そこまで忙しいって訳じゃないけどな。俺もお前もひとり暮らしだろ?高校生なのにさ。お互いに大変さが分かり合えてるって思ってたのは俺だけだったのか」


「だから、ごめんって」


「はは。少しからかい過ぎたか?」




そう。僕もツカサもひとり暮らしなのだ。ツカサは両親がいるらしいけど昔から顔を見たことがない。


なんでも、両親が共に海外に出ているそうで数年に1度くらいしか帰って来ないほど忙しいらしい。


僕の方は両親がいない。僕は言うなれば捨て子らしい。孤児院で育てられ小学生の頃に里親に引き取られたが、父親は交通事故で亡くなり、その数年後母親も病で亡くなった。


その後はナズナの両親に少しずつ助けられ、自立の術を身に付けた。


ツカサもナズナの家にお世話になっていた時期があり、その頃ぐらいから仲良くなった。





「テルヤ。ツカサ。少しいいか?」

と担任の先生に呼ばれる。僕とツカサは顔を合わせてから先生の方へ向かった。


任されたのは一言で言うと資料整理。


クラスに僕とツカサしか部活に入っていない者が居ないらしく、資料整理を頼まれた。


僕とツカサは一緒のタイミングで溜め息を吐いてから嫌々と作業を進めた。









⋯帰りの時間は9時を過ぎた。


「悪いな」と先生に飲み物を奢られ、それを鞄にしまい込んでからツカサと共に夜の道を歩き出した。


少し肌寒い空気に身震いをしつつ行きと同じ道を引き返す。



「⋯幽霊でも出ないかな」

とツカサは半分冗談で言った。


「ふ⋯本当にいたらいいのにね」


とその後の言葉をグッと飲み込んだ。


本当にそんなものが存在していたら少しは楽しくなるのかな?

平凡で平和な日常


ツカサと一緒にいる時間が決して楽しくないわけではない。

ただ⋯僕はツカサを横目で見る。


そして視線を落とす。


僕は君に嫉妬している。

僕の持っていないものを全部持っている君に


君が羨ましい


⋯僕は君のようになりたかった。


君みたいに生きたかった


だからか。少しだけ苦しい。


君の隣に居るのが


「あーあ。崩れ去ればいいのに」


⋯こんな平凡な日常





「⋯ならばその願い叶えてあげましょうか?」


と唐突に背後から不気味な声が聞こえた。


僕もツカサもその場に立ち止まり後ろを振り返る。


長い銀髪の髪が風に攫われて

その男はそこに立っていた。


黒いレインコートに身を包んだ男はニヤッと口を三日月型に曲げて革靴で足を1歩前に踏み出す。



──音がする


目の前の男は異常だ。

全身の毛が逆立ち、鳥肌立ち、汗が溢れ出る。


常軌を逸している。


存在そのものが



──崩れる音がする



「イヒヒヒヒ。そんなに怖がらなくてもいいのに」



僕とツカサは顔を見合わせて体の向きを反転させて共に走り出す。


恐怖で固まった足を全力で動かす。


そんな時に

そんな時なのに僕はツカサの優しさに触れている。


「くっ!僕の事はいいから!早く行けよ!」

と走りながら僕は叫ぶ。

ツカサは驚いたような顔でコッチを見てくる。

ツカサが本気で走れば僕と並走なんてなるはずが無い。


僕の事に気を使ってるんじゃねぇよ!


少し偽りの仮面が剥がれる。

決して人前ではさらけ出さない裏の顔




「イヒヒヒヒヒ。どうして逃げるのですか?」

急に背後に迫る狂気に僕は派手に転ぶ。


「テルヤ!」

地面の上を跳ねて何回転か回る。

そして地面の上を転がったところで静止する。

直ぐに起きようとして腕に力を入れる。


「イヒヒ。大丈夫ですかぁ?」


僕は銀髪の男の方に視線を向ける。


「⋯⋯な、なんなんだよ。お前は」

顔を歪ませ、恐怖で震える声で質問する。


すると男は立ち止まり右手に隠し持っていた紫色の長剣を取り出して答えた。

「⋯⋯そういえば、自己紹介がまだでしたね。私、ロナルド・松雪マツユキ と申します。殺し屋です。イヒヒヒヒ」



────日常の崩れる音がする


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