ウィザードオブバージン
先生からの呼び出し
「疲れた......」
魔法実技の授業を終え、俺は自分の席に座った。
「いやぁ、藤嶋くんの教え方が上手だったから助かったよ!」
西宮が笑顔でお礼を述べた。表情から察するに心の底から感謝しているように思える。
俺は西宮にサイコキネシスのレクチャーを行い、なんとか少しだけテニスボールを浮かせられるくらいまで上達させることができた。
個人的に西宮にはそれなりに魔法を扱う才能があると思う。
「そんなことはない。西宮、お前は充分に魔法の才能があると思うぞ」
すると、西宮の顔を赤らめた。
「あ、ありがとう......」
西宮は銀色の綺麗な髪を触りながら照れた様子を見せた。
何だこいつ。可愛いぞ。男なのに。
「実技で困った時、また藤嶋くんに教えてもらってもいいかな?」
「ああ、俺で良ければ」
「ありがとう! これからもよろしくね!」
「ああ。こっちこそよろしくな」
もう少しで次の授業が始まるので、西宮は自分の席に戻っていった。
その直後に、鈴鐘が自分の席に戻ってきた。
さっきの実技で疲れたのか、顔に少し汗をかいている。
「あなた、随分サイコキネシスを上手く扱えるのね」
鈴鐘さん、言葉に棘が感じられますよ。
「俺なんかより、佐々木の方が全然上手いと思うぞ」
「そう。なら私は論外ってことね」
黒く綺麗な髪をいじりながら皮肉を言ってきた。
「たまたま上手くできただけだ。鈴鐘ならきっと俺より上手くサイコキネシスを扱えるようになると思うぞ」
「気を使ってる言ってるつもりでしょうけど......必ずそうなって見せるわ」
鈴鐘の方をみると、強い情熱が感じられた。
ハリーポッターを見て魔法使いになりたくなった奴とは思えないくらいの野心である。
ハリーポッター以外にも何か魔法使いになりたい理由があるのだろうか? 気になるが散策するのは野暮だな。
「そうか。なら、俺も頑張らないとな」
ふんと鼻を鳴らし、鈴鐘は前を向いた。
授業を終え、ホームルームの時間となった。
「みんなお疲れ様。明日も実技の授業があるから覚悟しておけよ。それと部活に入りたいものは入部届けを私のところまで取りにくるように」
部活か。
魔法を学ぶためのこの高校にも、普通の高校と同様に部活がある。
部活の種類は一般的な高校と同じである。
しかし、魔法を使った競技の部活も存在する。
今のところ、俺は部活に入る気はない。
入るとしても、まったりとした文科系の部活に入るつもりである。
「あと藤原は放課後、私のところにくるように。それでは解散!」
藤原って俺のことだろうか?
「先生にお呼ばれね。藤原くん」
バカにしたように鈴鐘が言った。
「なぁ、鈴鐘。お前は何か部活に入るのか?」
俺は鈴鐘に部活のことを訊いてみることにした。
「あなたに言う必要はないわ」
「確かにな。あんまり言いたくない感じか?」
すると、鈴鐘が呆れたような顔になった。
「そういうわけではないけれど......」
鈴鐘はやれやれという顔をした。
「なら教えてくれないか?」
「私は文芸部に入部するつもりよ」
なんのひねりもない、予想通りだった。いつも本読んでたしな。
「なるほどいいな、文芸部。俺も入部しようかな」
俺は無表情でそう言った。すると、鈴鐘は不快そうな顔をした。
「あなたも入部するの? 私に好意を持ってるのかしら?」
「自意識過剰だぞ、それは。特にやりたい部活もないから言ってみただけだ」
「そう。随分腑抜けた考えね。軽蔑するわ。そんな甘い考えで部活をするなんて、部活の人たちに迷惑だと思わないの?」
まぁ、確かにそうかもしれないがーーなんとなく部活をしてみたい奴だっているだろう。
そういった価値観の違いがいわゆるブラック部活を生み出すと偉い人が言っていた。
「そうかもしれないな。それで、入部届を貰いにいくのか?」
「ええ。勿論」
そんなわけで、俺と鈴鐘は一緒に職員室へ向かうことにした。
「どうしてあなたと一緒に職員室に行くことになったのかしら......」
「先生に会うという共通の目的があるんだから一緒に行ってもかまわないだろう」
俺は冷静な口調で言った。
「藤原くんは先生にお呼ばれされていなものね」
無表情で鈴鐘は言い放った。このままでは俺のあだ名が藤原になりそうだ。
「藤嶋だし......」
俺と鈴鐘は職員室の前に到着した。
「失礼します」
さきに鈴鐘は職員室に入った。
「失礼します」
後ろについていくように俺も職員室に入った。
マリー先生は何やらキーボードでせわしくパソコンに入力している。
「お疲れ様です」「お疲れ様です」
俺は鈴鐘とほぼ同時のタイミングでマリー先生に挨拶をした。
「おお、お前ら。二人してどうした? もしかして付き合ってんのか?」
茶化すようにマリー先生は言ってきた。
「笑えない冗談ですね。私は入部届けをもらいにきただけです」
「そうかそうか。これ入部届けだ。これを記入して顧問の先生に渡してくれ」
マリー先生は入部届けを鈴鐘に差し出した。
「それで、藤原。ちょっと私についてきてくれるか?」
「いいですけど、その前に俺は藤原ではなく藤嶋です」
すると、マリー先生はバツの悪そうな顔をした。
「す、すまない。藤嶋。それじゃ、ちょっとこっちに来てくれ」
先生は俺を職員室の外に誘導した。
鈴鐘も一緒に職員室の外に出た。
「悪いが鈴鐘は帰ってもらっていいか? 二人だけで話したいことなんだ」
なんだそれ。ちょっと怖いぞ。
鈴鐘は不思議そうな顔をした。
「分かりました。それでは先生、さようなら」
鈴鐘はその場から離れた。
マリー先生は鈴鐘が遠くに行くのを確認すると口を開いた。
「それじゃ、藤嶋。行くぞ」
「え......行くってどこにですか?」
マリー先生は俺の肩に手を触れた。
「ワープ」
マリー先生がそう唱えると、俺とマリー先生の立っている場所に魔法陣が発生し、気がつくと屋上らしきところに移動していた。
「さっきのは......瞬間移動の魔法ですか?」
「ああ、そうだ」
マリー先生は微笑んだ。
俺のバニッシュと似ているが、瞬間移動できる距離が全然違う。さすがはマリー先生と言ったところか。
すると突然、マリー先生は険しい表情になった。
「それで、藤嶋。お前に訊きたいことがあるんだが?」
魔法実技の授業を終え、俺は自分の席に座った。
「いやぁ、藤嶋くんの教え方が上手だったから助かったよ!」
西宮が笑顔でお礼を述べた。表情から察するに心の底から感謝しているように思える。
俺は西宮にサイコキネシスのレクチャーを行い、なんとか少しだけテニスボールを浮かせられるくらいまで上達させることができた。
個人的に西宮にはそれなりに魔法を扱う才能があると思う。
「そんなことはない。西宮、お前は充分に魔法の才能があると思うぞ」
すると、西宮の顔を赤らめた。
「あ、ありがとう......」
西宮は銀色の綺麗な髪を触りながら照れた様子を見せた。
何だこいつ。可愛いぞ。男なのに。
「実技で困った時、また藤嶋くんに教えてもらってもいいかな?」
「ああ、俺で良ければ」
「ありがとう! これからもよろしくね!」
「ああ。こっちこそよろしくな」
もう少しで次の授業が始まるので、西宮は自分の席に戻っていった。
その直後に、鈴鐘が自分の席に戻ってきた。
さっきの実技で疲れたのか、顔に少し汗をかいている。
「あなた、随分サイコキネシスを上手く扱えるのね」
鈴鐘さん、言葉に棘が感じられますよ。
「俺なんかより、佐々木の方が全然上手いと思うぞ」
「そう。なら私は論外ってことね」
黒く綺麗な髪をいじりながら皮肉を言ってきた。
「たまたま上手くできただけだ。鈴鐘ならきっと俺より上手くサイコキネシスを扱えるようになると思うぞ」
「気を使ってる言ってるつもりでしょうけど......必ずそうなって見せるわ」
鈴鐘の方をみると、強い情熱が感じられた。
ハリーポッターを見て魔法使いになりたくなった奴とは思えないくらいの野心である。
ハリーポッター以外にも何か魔法使いになりたい理由があるのだろうか? 気になるが散策するのは野暮だな。
「そうか。なら、俺も頑張らないとな」
ふんと鼻を鳴らし、鈴鐘は前を向いた。
授業を終え、ホームルームの時間となった。
「みんなお疲れ様。明日も実技の授業があるから覚悟しておけよ。それと部活に入りたいものは入部届けを私のところまで取りにくるように」
部活か。
魔法を学ぶためのこの高校にも、普通の高校と同様に部活がある。
部活の種類は一般的な高校と同じである。
しかし、魔法を使った競技の部活も存在する。
今のところ、俺は部活に入る気はない。
入るとしても、まったりとした文科系の部活に入るつもりである。
「あと藤原は放課後、私のところにくるように。それでは解散!」
藤原って俺のことだろうか?
「先生にお呼ばれね。藤原くん」
バカにしたように鈴鐘が言った。
「なぁ、鈴鐘。お前は何か部活に入るのか?」
俺は鈴鐘に部活のことを訊いてみることにした。
「あなたに言う必要はないわ」
「確かにな。あんまり言いたくない感じか?」
すると、鈴鐘が呆れたような顔になった。
「そういうわけではないけれど......」
鈴鐘はやれやれという顔をした。
「なら教えてくれないか?」
「私は文芸部に入部するつもりよ」
なんのひねりもない、予想通りだった。いつも本読んでたしな。
「なるほどいいな、文芸部。俺も入部しようかな」
俺は無表情でそう言った。すると、鈴鐘は不快そうな顔をした。
「あなたも入部するの? 私に好意を持ってるのかしら?」
「自意識過剰だぞ、それは。特にやりたい部活もないから言ってみただけだ」
「そう。随分腑抜けた考えね。軽蔑するわ。そんな甘い考えで部活をするなんて、部活の人たちに迷惑だと思わないの?」
まぁ、確かにそうかもしれないがーーなんとなく部活をしてみたい奴だっているだろう。
そういった価値観の違いがいわゆるブラック部活を生み出すと偉い人が言っていた。
「そうかもしれないな。それで、入部届を貰いにいくのか?」
「ええ。勿論」
そんなわけで、俺と鈴鐘は一緒に職員室へ向かうことにした。
「どうしてあなたと一緒に職員室に行くことになったのかしら......」
「先生に会うという共通の目的があるんだから一緒に行ってもかまわないだろう」
俺は冷静な口調で言った。
「藤原くんは先生にお呼ばれされていなものね」
無表情で鈴鐘は言い放った。このままでは俺のあだ名が藤原になりそうだ。
「藤嶋だし......」
俺と鈴鐘は職員室の前に到着した。
「失礼します」
さきに鈴鐘は職員室に入った。
「失礼します」
後ろについていくように俺も職員室に入った。
マリー先生は何やらキーボードでせわしくパソコンに入力している。
「お疲れ様です」「お疲れ様です」
俺は鈴鐘とほぼ同時のタイミングでマリー先生に挨拶をした。
「おお、お前ら。二人してどうした? もしかして付き合ってんのか?」
茶化すようにマリー先生は言ってきた。
「笑えない冗談ですね。私は入部届けをもらいにきただけです」
「そうかそうか。これ入部届けだ。これを記入して顧問の先生に渡してくれ」
マリー先生は入部届けを鈴鐘に差し出した。
「それで、藤原。ちょっと私についてきてくれるか?」
「いいですけど、その前に俺は藤原ではなく藤嶋です」
すると、マリー先生はバツの悪そうな顔をした。
「す、すまない。藤嶋。それじゃ、ちょっとこっちに来てくれ」
先生は俺を職員室の外に誘導した。
鈴鐘も一緒に職員室の外に出た。
「悪いが鈴鐘は帰ってもらっていいか? 二人だけで話したいことなんだ」
なんだそれ。ちょっと怖いぞ。
鈴鐘は不思議そうな顔をした。
「分かりました。それでは先生、さようなら」
鈴鐘はその場から離れた。
マリー先生は鈴鐘が遠くに行くのを確認すると口を開いた。
「それじゃ、藤嶋。行くぞ」
「え......行くってどこにですか?」
マリー先生は俺の肩に手を触れた。
「ワープ」
マリー先生がそう唱えると、俺とマリー先生の立っている場所に魔法陣が発生し、気がつくと屋上らしきところに移動していた。
「さっきのは......瞬間移動の魔法ですか?」
「ああ、そうだ」
マリー先生は微笑んだ。
俺のバニッシュと似ているが、瞬間移動できる距離が全然違う。さすがはマリー先生と言ったところか。
すると突然、マリー先生は険しい表情になった。
「それで、藤嶋。お前に訊きたいことがあるんだが?」
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