Little Red Riding Hood

闇狐

二章「林檎畑にて(2)」

??「お嬢ちゃん、そいつはいけねぇ」

「!‥‥誰!?」

赤ずきんは背後からただならぬ恐怖を感じ、一歩後に下がると同時に腰に身に付けている投げナイフを一本手に取り、声のする方へ全身の力を込め、投げ放った。

グサッ

投げナイフは惜しくもその正体不明の物体を掠め、赤ずきんの背後にはある林檎の樹とは別の樹木に突き刺さった。

??「何すんでぇお嬢ちゃん!?  危ねぇじゃないの!?」

「私に近づかないで!」

少しの間、赤ずきんは混乱が止まなかった。
心臓が鼓動を打ち、全身のありとあらゆる血管、毛細血管に血が流れ込んだ。

やっとの事、呼吸を安定させて例の物体の方向に焦点を合わせると‥‥

「アハハ‥‥悪かった。急に驚かせた俺が悪かったよお嬢ちゃん」

茂みに尻餅をついた大男。優に190cmは超えているであろう。

「貴方は‥‥」

「俺?  俺はミントン、ミントン・バルトロメ。この林檎畑の経営者だ」

「経営者‥‥にしては随分物騒な物を持っているわね。鉈何か持って‥‥」

「鉈?  ああ、これか。まあこれには訳があってだな、最近、世の中も物騒だろ?  俺の住んでる村じゃあ、肉親が二人も神隠しに遭ってるんだ」

「ちょっ、肉親って‥‥眷属が急に失踪する緊急事態なのによく貴方そんなヘラヘラしてられるわね。 貴方の方が物騒だわ。あぁ鳥肌‥‥」

ミントンは相変わらずその様相を変えずにヘラついている。

「まあ、此処で立ち話も何だし、お嬢ちゃん、俺ん家にでも来ないか?  今だったらミルクココアとビーフジャーキーが付いてるぜ!」

しかし、赤ずきんは頑なに拒んだ。

「嫌よ!  貴方みたいな小汚い豚みたいな屑の所に何か行きたくない。どうせ私を監禁して強姦する積もりでしょ!?」

「おいおい勘弁してくれよ‥‥。俺にそんな下心は無いよ、お嬢ちゃん」

「‥‥ならば私の家に来て貰うわ。彼処だったらお婆さんも居るし、それに落ち着く‥‥」

「‥‥分かったよ‥‥‥」

「さあ、先頭は貴方が歩きなさい。私が後から指示するから」

赤ずきんはミントンの背中に投げナイフを突き付けながら草木が鬱蒼と生い茂る林檎畑を抜け出した。

『林檎畑にて』【完】

【続く】

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