女であり男でもある私は復讐をしていきます

わたぱち

17話 第二王子の決心



エルデ王国王家の汚点、アルザックと言えば大体の人はわかるだろう。

勿論僕はそれではない。
その馬鹿の弟のエルデ王国第二王子のクロード・ジオルド・エルデ。

それが僕だ。

兄といってもアルザックとの楽しかった兄弟としての思い出なんかひとつもなく、あいつのやらかしたことの尻拭いをすることの方が多い。
1つ年上のアルザックより、年が4歳離れていてもやさしく頼もしい実の姉のアムレット姉さんの方がずっと好きだ。

ちなみにあいつは正妃のマリアナ様から生まれた子供で、僕は側妃のビアンカ母様から生まれている。

この国の国王であり僕の父のアラン父様と僕の母ビアンカは恋愛結婚をしていて、僕も父にはよく可愛がられた。
しかし、それと反比例する様にアルザックと政略結婚のマリアナ様は見向きもされなかった。

マリアナ様はその寂しさを紛らわそうとしてか高い権力を持って召使いを貶し、僕の母に嫌がらせをし、アルザックを異常な程可愛がった。

それも原因だろう。

アルザックが王位継承権しか持っていない無能の馬鹿王子と呼ばれる様になったのは。

国王の正妃へのせめてもの償いなのか、アルザックに託した王位継承権。それと親の権力に溺れに傲慢な態度を振り撒きそのくせ勉学も魔術も学ぼうとしない。
典型的なクズだった。

流石にそれを見限った国王は王族としての心構えを持って欲しいと願い、賢く貴族としての器を持っている公爵令嬢をアルザックの婚約者とした。

その令嬢がシトラ姉様だ。

紫色の髪に空の様な青い目を持ったシトラ姉様は優しく、義理の弟である僕にも使用人にも親切だった。
実の姉のアムレット姉さんとも仲はすぐに縮まり、3人で過ごした時間はとても楽しいものだった。

そして、僕が彼女に惹かれたのが12の頃だ。

けれど、シトラ姉様はアルザックの婚約者でこの想いは伝えることなんてできなかった。
しかし、アルザックは婚約者でありながらシトラ姉様の誕生パーティーには出ないしプレゼントも渡さない。
他の女と遊んではシトラ姉様を貶す。

あんなのが婚約者なのに苛立ったが、何もできない自分にもっと苛立った。

そして月日は流れ、アムレット姉さんが卒業した国立魔術学園にシトラ姉様が入学した。
アルザックは男爵令嬢の女と光の聖女とか言うこの国の国教アルラート教の女神スラタの加護をもらったと言う女に熱中した。
男爵令嬢はともかく国で信仰されているアトラート教の四天神。
万物の根源を作ったとされている全能の神ウィーガ。
死者の世界の支配者でウィーガの妻の死と生の神デグル。
娘の愛と豊穣の神スラタ。
息子の戦いと武勇の神ルギア。
その中の1人、スラタの加護を持っているとされているノアルは僕やアムレット姉さんの権力ちからを持ってしてもどうにもできなかった。

勉学にも手をつけず、魔術や剣術の授業はサボり身分を振りかざしては時期権力者になろう者と遊び呆ける。

シトラ姉様は生徒会としての役目を果たしていると言うのに、情けない。


そんなある日のことだ。


シトラ姉様が城に遊びに来た時、いつもは真っ白なリボンで結んである髪がバレッタでとめられてたあった。

そのバレッタは美しい小さな石が散りばめられていてその真ん中に一際大きな濃い水色の宝石が埋め込まれてあて大人びた顔にとても似合っていた。
確か、その色と光沢からしてスティーア帝国原産の希少な宝石だったと思う。
あれほどの大きさのもののは僕も初めて見たものだ。

綺麗だねと褒めたら、今までに見たことのないくらい美しい顔で「大切な人がくれたの」と、教えてくれた。
誰なのかも何も教えてくれなかったが、直感で思うことはあった。


あの顔は、好きな人を思い浮かべた顔だ。


誰なのかの予想はつく。
アルザックはそんなことできるわけないし、その婚約者であるシトラ姉様にプレゼントを渡せる強者は絶対にいない。
つまり、他国の人間に絞られるわけでその中での権力者。
スティーア帝国から来た僕より2歳年上の生徒会長、ディルク様かその側近のエッテリオさんだろう。
しかしエリオットさんには恋人がいるらしいので、もう1人しかいない。

彼はエルデなんかと比べるまでもない大国の王族に次ぐ権力者だ。

アルザックに対しての罪悪感からくる喜びと、あんな顔をさせることのできる人への嫉妬と、何もできない自分への嫌悪感。

色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざったまま、僕は笑った。

「よかったね」と。

僕は、この人に恋心を抱いてはいけない。
このままいってアルザックの妻となるか、もしくは何らかの行動を起こしてその愛する人と婚約するか。
未来に隣に立つ人の候補にすら僕はなれないのだ。

だから、せめて僕は「弟」でいるのだ。
そうすれば、ずっとそばに居られるから。
恋人としてではなくても家族として。

そう決めていた。

もう、会うことすらできなくなるとも知らずに。

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