女であり男でもある私は復讐をしていきます

わたぱち

3話 神様は気まぐれ



真っ暗な暗闇の中、私の前にいるのは真っ白な神様と名乗る少年。

「えっ…と…神様…ですか…」

少年は大層美しかった。
ディルクの髪色より薄い、真っ白な絹のような髪に金色の瞳。
どこか作り物のような、綺麗な顔をしていた。

「そーそー、普通だったら君は天界に行くんだけどここに呼んじゃった」

「ちなみにここから現世に転生できるよ」と、あまりにも軽く明るく言うものだから、ある意味驚いた。

「私が…無実なのに殺され、現世に未練があるからでしょうか?」

「いや、ただの気分」

スッパリと私のことを否定すると、神様は話を続けた。

「君みたいに殺された人間は数え切れないほどいる。勿論それより酷い死に方をした人もね。だから君がかわいそうだからとかでもなんでもない」

「じゃあなんで…」

この人の言っていることを聞けば聞くほど意味がわからなくなってきた。
なんで私をここに呼んだのかが全くわからない。

「気分的にそうしたくなったんだよね」

サラリとこの人はすごいことを言っている。

「まあそう言うことだから、あともう1人ね」

そう言って自身の胸の前あたりで神様が手を叩くと、正面に綺麗な女の子が現れた。
ふわっと空中に浮いて、そこからゆっくりと床につく。
海のように青い髪。目は閉じられていてわからないがこの子もまたとてつもない美少女だろう。
「えっと…この子がどう関係するのですか?」

「この子はリリアーナ・アイラライト女名がね。この子は今、病気で死にそうなんだ。精神的にもやばいけどね、まあ詳しくは記憶見て。」

そう神様が言うと、私の頭の中に映像のようなものが流れ込んでくる。

ーーーーーーー

ある貴族に生まれた水色の髪の子は特別な体質と魔力を持っていた。

そのせいで家庭教師からは冷たく当たられ、他の令嬢や子息からは嫌味や皮肉を言われている。
親からも愛してもらえず、孤独だった。
その子は自分に自信をなくし、7歳の時に部屋に引きこもってしまった。
そして、その子はそれから15歳になり、精神的な病気にかかる。
誰かが手当てするわけでもなく、1人で寂しい部屋で今も寝ている。

ーーーーーーー
まるで1つの物語でも見ているようだった。そんな感覚で頭に流れ込んできたのだ。

「これは…」

「ここにいるリリアーナの記憶だよ」

何を考えているのか全くもって読めない顔で神様は言った。

「彼女は両性の体質と魅力魔法と光魔法の珍しい能力を3つも持っている。そのせいか気が病んだんだね。」

かわいそうに。と続けて言う神様の表情は変わらない。
怖いくらい美しい顔を保ったままだった。

しかし、私が言いたいのはそこではない。

『両性の体質』

体質者自体が珍しいのに『両性』はその中でも右に出るものはないくらい珍しい。
女にも男にもなれるその体質は、何故そうなるのか解明されてない。
そのため、「神に選ばれた者」と言う人もいれば「悪魔の子」も言う人、人によって様々だ。

このことは公にしていない様だか、あまりいい印象のない魅力魔法も付いているのだ。
気が病むのは納得できる。

しかしこの体質は…

「と、いうわけでシトラルにはリリアーナになってもらう。復讐したいでしょ?」

大きく目を見開いた。
私の考えている「復讐」が分かるとは、さすがは神様だ。

「…私は構いませんが、リリアーナ様本人はどうなのでしょう」

「起こして聞いてみる?リリアーナ、起きて」

静かに神様がリリアーナと呼ばれている彼女に声をかけると今まで寝ていた彼女が突然目を覚ました。
深いエメラルドのような緑色の大きな瞳が長い睫毛の下に見えた。
想像通り、もしくはそれ以上の美女だった。

私のことと神様のことをぼーっと見ているリリアーナ。
寝起きの様な顔でも美しい。
私が見ほれていると突然ハッとして手で頭を隠すようにして丸まりガタガタと震え始めた。

「ごめんなさい!ごめんなさい!お願いだから、殴らないでください!」

そう悲痛に叫び始めた。

「…君はリリアーナとしてこれからも生きていたい?」
 
それに特に驚く様子もなく神様はそう言う。
リリアーナよりも、その態度に私は驚いた。
その問いに、少し間が空いてから消え入りそうな声が帰ってくる。

「…もう、嫌です…この目も髪も、魔法も、気持ち悪い…」
 
そうまるで誰かに言われたことをそのまま口にしたかのように言いリリアーナは此方を見た。
怯える深い緑色の瞳にはたくさんの涙が溜まっている。

「こういうわけなんだけど、リリアーナは僕が加護を与えているんだよね。そう簡単に死ねない。でも可哀想でさ〜」

「変わってやって」とあっさり言うものだから、こんなにも私たちと彼とでは考えが違うのか。と、もう感心してしまった。
少し、悲しそうにそういう神様に私は困惑する。

「えっと…本当にいいのですか?リリアーナ様」

「どうぞ…私にはこんな力。いりません」

「はい、決まり! リリアーナはじゃあね」

そう言って神様がまた手を一回叩くと、リリアーナの体が光り始めて、いつの間にか消えていた。
光の中でかすかに「頑張って」と此方に言いながら。

「リリアーナ様はどこに…?」

「転生したよ。じゃあ次は君ね」

そう言って再び神様が手を叩く。

乾いた音はやけに頭に響いた。
ふわふわした感覚に襲われる。
すると、いつの間にか体が光り出し、どこかに溶けていく様な感じがした。

そう思っていると、神様が口を開いた。

「あ、性別を変えるには目をつぶってね」

早く言え。と思ったが口にする前に目を閉じてしまう。
暖かくとても居心地が良かったな、とぼんやりとした記憶の中で思った。



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