青い記憶

【第7話】再び…

毎日、4時になると私は私の記憶の中の世界へと入ってしまう。
それまでの間はほとんど人と会話をしない。
話しかけられたら答える程度だ。

「桃菜。ごはん」
お母さんはそうとだけ言うとリビングへいってしまった。
返事はしなかった。

まださっきの光景が頭にチラついては手が震える。
食欲は沸かず結局私が部屋を出ることは無かった。

お母さんは何も言ってこなかった。
いつからだろう。お母さんと話さなくなったのは。


やっぱ中学の時か。


気づいた時にはゆっくりと涙が頬を伝っていた。
心細い。
自分が壊れてしまいそうだと感じる。
自分で自分の手を握る。

ふと、私の手を握った青とその優しい笑顔が思い出された。

「会いたいな」
独りでそう呟く。

何言ってんだろ私。

きっと疲れている。

寝よう。
電気を消して目を瞑る。

まぶたの裏には友達との出来事を嬉しそうに母親に語る少女の姿が映っていた。





次の日学校行くと私の上靴がなくなっていた。

頭が真っ白になった。
自然と足が震えていることに気づいた。

震える足で教室に着く。
周りの目線がさっと逸れた。

教室に入ると窓の前に両足揃えて置いてある私の上靴が目に飛び込んだ。
感情が薄れていくのを感じた。

無気力に靴を拾い履いた。
振り返ると大場さんが寂しそうな顔でこちらを見ていた。

「おっはよ~!…どったの?未来」
高原さんが来ると私からさっと目を逸らした。
「んーん!なんでもない」
笑顔になった大場さんをみると高原さんも笑った。

2人が教室を出ていくというなんでもない光景を私は何も考えず眺めていた。

「見て」という声が耳に入ってくる。
「また澄ました顔してる」
「ほんとだ~。私は周りと違いますよ感がヤバくない?」
「わかる~!ちょっと顔が良いからって調子乗ってるよね」

きっと、自分のことを言っているであろう4人組の話が私の耳に入り込んでくる。

涙は出ない。
ただ、小刻みに手が震える。

あまり何も感じなかった。

ただ、私の頭には一言浮かんだだけだった、




「また始まった」

心が乾いていくのを感じた。

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