青い記憶

【第6話】本当の私

まず一番はじめに目に飛び込んだのは少女の涙だった。
何かに耐えるように俯きながら、それでも涙だけは頬を伝っていた。

「ねぇ見て?泣いてる。時計壊されちゃったのがそんな悔しい?」
4人の女子生徒は嘲るように笑いながら少女をみた。

1人の女子生徒が時計を拾う。
「返して欲しかったらぁ」
そこで言葉を区切り仲間に目配せをしてから言った。
「とりあえず服脱ごっか」

私と少女は小さく悲鳴をあげた。
「早く~。投げちゃうよ?」
それを聞くと少女は下唇を噛みながらボタンに手をかけた。

「みて~ほんとにやるよ!」

ボタンを外し終わった少女はただ俯いている。
「早く」
そう言われても少女は動けないでいる。

すると、
「きゃっ!」
少女が突き飛ばされた。
「とろいんだよ」
「…ごめんなさい」
声にならない声でそう言うとワイシャツに手をかけた。

「もういいよ」
「え…?」

「土下座して」
そう言って時計を持った女子生徒は地面を指さした。
ワイシャツから手を離すと少女はゆっくりと正座の姿勢をとった。

「頭つけるの。それで謝って?いつも澄まし顔で周りのこと見下してごめんなさいって」

私は私の手が震えていることに気がついた。
そしてさらに気づいた。
助けに行かないんじゃなく行けないことに。

「すいません…でした」
かすれた声でそう言った。
4人は顔を見合わせた後、一斉に笑い出した。

すると、1人の女子生徒がポケットからカッターナイフを取り出した。
「これでこいつのスカート切ってあげよ?」
頭を地べたにつけたままの少女の肩が小刻みに揺れているのが見える。

まるで少女の身体とリンクしているように私の身体も震えていた。
直接自分に降りかかっている訳じゃないのにこわかった。

その時。
私の震える手を誰かが握った。
「見てられないよね。ごめんね。遅くなって。」
青が隣でいつもとは違う口調でそう言った。
笑顔ではないが優しい顔だった。

すると青は竹やぶから出ていって4人の方へ向かった。
「楽しい?それ」
4人は一斉に青を見た。
「誰よ。あんた」
少しバツが悪そうな声で1人が青にいう。

「大丈夫?」
青は無視をして少女に声をかけた。
今まで我慢してたのか青の顔をみると、流れる涙が大粒になった。
青は優しく頭を撫でていた。

それを見ていた4人は何かを言おうとしたが、やがて諦め時計をその場へ放り校舎の方へ去っていった。
青は1度もそちらを、見なかった。

時計は私の部屋の5分遅れた小さな時計だった。




記憶から覚めた私は部屋にずっと閉じこもっていた。
とにかく頭が痛く、身体も硬直していた。

誰かと、ましてや自分の親なんかと顔を合わせたくなかった。



だって親にだって私は愛されていないのだから。

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