青い記憶

【2話】動揺

気がつくと私はベットの上にいた。
ふと、目を外にやると夕日が落ちている最中だった。

昼寝をしていたのか。

部屋に秒針の音を響かす時計はちょうど5時を指すところだった。
昔から5分遅れたままの時計の針が「5」を指したがチャイムは鳴らなかった。

「変な夢…」

まぶたの裏に焼き付いた少年の顔をかき消すように首を振り、再び目を瞑った。




「『忘れるに任せるということが結局最も美しく思い出すということなんだ』」

黒板とぶつかり合うチョークの音と教師の声が響く。
「これは川端康成の執筆した本の言葉だが。おい。三枝。これどういう意味だと思う?」

「あ、はい。えっと、忘れることを受け入れることが一番美しい思い出し方であるということだと思います」

「うん。まぁいいだろう。この人が伝えたいのは人間は忘れる動物だ。ということだ」

先生の話を聞きながら私は心にわだかまりを抱えていた。
「だから、忘れたくないような思い出もいつか、忘れることを受け入れればいつか思い出す時にそれが一番美しい形になっているということだ」

美しい記憶。それが私の心に引っかかっていた。
「じゃあ先生の失恋とかは~!?」
陽気なクラスメイトの言葉で教室が笑顔になる。
「それは忘れさせてくれよ~!」

そうなの。先生。忘れたい記憶ほど頭にこびりついて離れないの。
声に出さず私は主張していた。




「このあと、カラオケ行かない!?」
クラスの女子のリーダー格の高原結衣の声がひびく。
「いいねぇ!みんなで行こ!」
それに大場未来も加わった。

「行ける人みんな放課後集合ね!」
そう言った後、高原さんはふと、帰り支度をしていた私に気がついた。

「え?桃菜ちゃん帰っちゃうの?」
「え~行こうよ!たまには!」
周りの人達も私の方へ集まってきた。

「き、今日はっ…」
思ったよりも大きな声が出た。
「今日は。用事があるから…ごめん」
「え~またぁ~?」
高原さんは残念そうな声を上げていたが、大場さんが促すと切り替えて笑顔になっていた。

ごめんね。高原さん。良い人だって分かってるんだけど。
心の中で謝罪すると同時にこびりついた記憶が頭に浮かぶ。

「ほら、早く」
高圧的な声が脳裏に響く。


私は東京で過ごしている間。
クラスの女子からいじめを受けていた。

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