異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
急接近、そして大打撃
「さあ、次はどないしますん?」
モリアの声が聞こえ、視線を戻す。
すると先程から時間は全く経っていないはずなのに、小僧の傷が増えている。
奴の右脇腹から血の滲んでいるのが確認出来る。
その事に笑みを浮かべていると、今し方まで三尺は離れて小僧との距離が瞬きをする間に詰まっていた。
今までもその距離を一瞬で詰める者は何人か見てきた。
しかし今回のはそれとは次元が違う。明らかに移動した瞬間が見えなかった。
小僧も同じなのか、それとも見えてはいたのか襲撃に合わせての攻撃を躱す。
しかしそれは直撃を避けただけらしく、左二の腕部分が少し抉られている。
小僧の表情も苦痛と憎しみで歪んでいる。
何が起きたのかは分からんが、優勢ではある様子。あれならば小僧を殺すのは容易ではないのか?
しかしウェンベルは負けると言った。小僧の力量を買い被っているだけか? それとも実力を見切った上でか?
どちらにしても小僧のあの表情は愉快だ。
「面倒な能力だな。スピード加速系は」
下から剣を切り上げながら、嘆く小僧。
その攻撃を余裕で躱し、再び槍で小僧の腕や足、腹を狙って突きや薙ぎ払いを繰り出すモリア。
しかしそれを受け流し、紙一重で避け、受け止め、反撃をする。
どちらも速く、鋭い一撃を持って相手と接戦を繰り広げている。
確かに凄い戦いであるのは素人目からも分かる。
しかし先程モリアが見せた様な瞬き程の速さで接近し、攻撃を果たす技は見受けられない。
先の攻撃をあと数度も行えば、小僧を殺せるとは思うが......
小僧は加速系の能力と言った。エーデンの騎士で目立ったその手の能力者は居ない。少なくともそんな情報はなかった。
魔力不足? それとも距離的な問題か?
どちらにしても今の状況では使えないから使っていないのだろう。
「ほぉら、ほら。この程度で根ぇ上げてる場合じゃないでー」
「気にするな。この程度なら、根は上げないからよ」
「......言うねー」
小馬鹿にする調子で言っていたが、小僧は敢えて乗って返す。
それにやや表情を歪ませるモリア。
それが余程癇に障ったらしく、槍の尻を地面に突き、それを軸に回転蹴りを放つ。
しかしそれはあっさりと避けられたが、元々それが狙いだったらしくその回転の勢いを使って小僧から距離を取る。
「なら、これはどないするんです?」
「うぐっ」
そして先程とほぼ同じ距離分離れると、またあの襲撃からの攻撃が発生する。
その動きを見るのは二度目だというに全く動いた瞬間が見えなかった。
どうしても気がついた時には接近している。そして攻撃が放たれている。
今度は避ける事が出来ず、右肩を大きく抉られた。
その痛みによってか小僧の手から剣が地に落ちる。
「決定的な打撃だ。終わった」
その様子を窺っていた騎士の一人が私と同じ意見を溢す。
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