異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

音貝、そして妙案

 
 音貝の事を思い出し、騎士の一人に取りに行かせる。

「どうやら少年は貴方に逃げて欲しくなかったようですね」

 それを見届けたタイミングでウェンベルが告げる。

「知ったことか。私は撤退の指示をしたら、とっととこんな場からは離れたいのだ。それに私がピンチになった際は、汝が助けてくれるのだろう?」

 そう言って私はその場から離れる。
 小僧が何かしてくるようであれば、恐らくウェンベルが助けてくれるだろう。
 だから私は安全ではある。

「バルバ・ティンを持ったウェンベル殿程、安全で怖い相手はおらんからな」
「......それが貴方に向く、という事もお忘れのないように」
「怖い事を」

 好感を持たせるための世辞でも冗談でもないのが面倒な所だが......そうか。思いついたぞ、この面倒な状況を抜け出す方法が!

「さ、サヘル様! お持ちしました!」

 私が妙案を思いついた所で、先程音貝を取りに行かせた騎士であろう者が戻る。
 その手の上には最初に鳴らされた小さな法螺貝に似た音貝が乗っている。
 最初の物は違う部下が持っているため、この場に持って来る事は出来ない。
 そもそもの話、撤退をするという選択肢など最初は用意してはいなかった。しかし万が一を考えてと言われ、四つの音貝が用意された。
 それぞれを一つの部隊長に持たせており、その全ての音貝からは違う音色が上がる様に細工されている。

「『撤退』と報せろ」
「はっ!」

 女騎士か巨漢か、それとも別の部隊長か。誰の音貝を持ってきたのかは知らぬが、騎士はメットを少しだけ上げ音を奏でる。
 プブオォォー、プブオォォー、プブオォォー。
 三度の音を一定のリズムで鳴らす。しばらくしてから今一度同じリズムで鳴らす。
 これが撤退の合図か。確かに初めに聞いた音よりも高い。
 それを三度続け、彼は鳴らすのを止めた。

「ご苦労」
「はっ! ありがとうございます!」

 騎士は深く礼をすると周りの騎士同様、私の護衛へと移る。

「これで良いのであろう?」

 ウェンベルに確認を取れば、軽く頷いて返すのみ。
 そのいけ好かない態度もここまでだ!
 騎士達を押し退けて、私は小僧の方へと走り出す。
 小僧を殺害出来、尚且つウェンベルを足止めさせ私から引き剥がせる。
 後は屋敷に戻れさえすれば、軍を動かせる。テヲロもいる。勝った!

「!」

 そう思った矢先、急に足の力が抜けてしまいその場に転ける。
 転んだ痛みなのか右足首がやけに痛む。捻ったか?
 そう思い足を確認する。
 すると足首の辺りがスッパリと切られており、靴の穴から血が溢れ出てきている。
 それを認識した途端に痛みが激しさを増す。


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