異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
払拭、そして到来
「おおー、本当に遣り果(おお)したぞ!」
使えない部下に腹を立てていると部隊長の声が届く。
視線をそちらへと向ければ、小僧らの周りに数十の騎士達が倒れている。
負傷し、血を流している者もいるが、殆どはその様子がない。
それに小僧だけでなくあの子娘らも殆ど負傷する事なく立っている。
あれだけの人数がいて何故勝てん! 何故腕の一本や二本切り落とせていない! 何故子娘らまでほぼ無傷なのだ!
どうなっているのだ! あの部隊は!
「貴様ら! なんだその不甲斐なさは! そんな小僧一人なんとか出来んとは、騎士の名折れだぞ!」
その体たらくさに思わず叫んでしまう。
すぐに自身の過ちに気がついたが、一度言ってしまった事は取り返しがつかない。
「......不甲斐なさはごもっとも。しかし、他所の貴族様が我等の軍にとやかく言わんでくださいませ。我等が主人は“エーデン・バルサムス・ケルロン”様であって、サヘル様ではありません」
しかし私の失態を巨漢部隊長はしっかりと払拭してくれた。
「そうだな、失礼した。しかし小僧一人にやられれば、その体たらくさを貴様らの主人に報告し、なんらかの処分を与える様にする事も私は出来るので、精々そんな事は起こさない事だな」
「無論承知していますとも」
助けてはもらったが、あの小僧を殺せなければ意味はない。その事を理解させるつもりだったが、奴もそこは分かっているらしい。
流石に部隊長を任されるだけあって、少しは出来る人間の様だ。
奴は傲ってはいるが、油断をしている訳でもないらしく剣を抜き、しっかりと小僧の方を見ている。
女部隊長の方も既に剣を抜いて、構えている。
流石にあの二人の部隊長を相手にするのだから、あの小僧も終わりだろう。
何故ならあの二人は、単騎でワイバーンをも狩れる騎士なのだからな。
この情報を聞いた時は驚いたが、それぐらいの実績を持った者がいてもらわんと困る。
故に、あの小僧がいくら小賢しい手で騎士達を相手してきたとはいえ、その動きを観察され、実力も十分な二人が相手なのだ。終いに決まっている。
さて、これで公判も終わるだろう。目的であった小僧を処刑出来るのなら、終わり方に筋を通す必要もない。
それにしてもあの女、デタラメを言いおって。
法生司長が此方側だとか、小僧らは証拠を用意する暇さえないだとか言っていたが、実際は全て嘘ではないか!
お陰で此方は面倒な手を使わざるを得なかった。
幸いなのはあの女に代金は後の情報操作だけと言われたくらいで、事前に取られていない事......いや、違うのではないか?
あの女が後から代金を提示してきたのは、失敗すると分かっていたから適当な条件、しかし私に怪しまれない程度のものを提示した?
するとあの女の目的は一体──
「サヘル様!」
あの女について思案していると私の元へ一人の騎士が駆けて来る。
「声が大きいぞ。貴様、この場では私の事はあまり呼ぶなと──」
「申し訳ありません! しかし至急お伝えしなくてはならない事が!」
「......なんだ、申してみよ」
「はっ! 北部より大多数の騎士が此方に向かって来ています!」
「何......?」
「その数、およそ三百! 相手は、エーデン侯爵家の騎士です!」
「っ ︎」
その急報の内容に驚愕し、固まる。
エーデン侯爵家、だと。何故......何故『本物の』エーデン侯爵の騎士がこのタイミングで......
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