異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
再使用、そして予想
東が再び動きだそうしたため、サヘルも含めへーネルと証言者達は身を強張らせる。
先程のフェーネの能力から何かを掴まれてしまったかと警戒する。
そんな中でサヘルは、それを阻止するために割り込もうとする。
「待っ──」
「分かりました。それでは再度魔道具の使用を許可します」
しかしその前に東の申請を法生司長が受諾する。
決断までが遅かったがための結果である。
法生司長が目配らせをすると、茶毛の元へと魔道具を持って行った法生司が再度彼女の元へとやって来る。
といっても魔道具使用後、場の流れを見て少し離れた場所にいたので、それも相まってサヘルが割り込むよりも先に魔道具は彼女の前に辿り着いてしまう。
「最後に問う。あんたは本当に被告人が今回の件で盗まれた頸鉄鎖(ペンダント)を持っていた所を見ていたのか──」
それを確認するや否や、東は問いを投げる。
「見て『いた』か『いなかった』かで答えろ」
「「「「っ」」」」
「!」
その最後の言葉に予想していた状況へと移ってしまった事に戦慄するへーネル達。
サヘルは戦慄こそしてはいないが、東に対処法を気がつかれてしまった事を意外に感じていた。
「............」
そしてこの後の結果が想像出来てしまった茶毛......ケミュンは戦慄している者の中で一番絶望もしていた。
身は震え、歯はガタガタと激しく音を鳴らし、滝の如く冷や汗が吹き出し、顔色は青ざめを通り越して白く、全身を悪寒が走る。
結果──
「!」
「「「「「「「 ︎」」」」」」」
ケミュンは逃走した。
もはやサヘル側が勝てる見込みはなく、この公判が終わればその罰として良くて奴隷、普通なら始末される。
ならば、逃げ出せる確率がゼロに等しいこの場から逃走を図る方が正解だと、本能的に判断したのだ。
「公判の最中に法廷を抜ける事は成りません!」
しかしサヘル側に組みしている門番がいる限り、それが許されるはずがない事は彼女も理解、否予想していた。
この万が一が起こる事はゼロとして考えてはいなかった。
それでもその予想が現実のものになってしまえば、本能が慄いた。だから逃げた。
「邪魔だぁぁああぁっ!」
そしてその障害たる門番を前に彼女は懐に忍ばせていた掌サイズのナイフで襲いかかる。
武装した相手に、先程までずっと怯え、周りの様子ばかりを気にしていた少女が乱暴な言葉と共に向かう。
その様にもう演技は入っていない。
「愚か者め」
「あがぁっ ︎」
しかし彼女が振りかざそうとしたナイフは、門番へと届く事はなかった。
彼女らが法廷へと入る際に同行していた男によってそれは止められた。
「......毒か」
そうなった原因を『魔眼』によって理解した東が、彼女の首筋の物体を見ながら呟く。
彼女の首には二センチばかりの針が刺さっている。
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