異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

焦り、そして違い

 
「そもそもなんであんなデタラメな嘘が通るのよ!」
「お姉ちゃん、今はそれを言っても仕方ないよ......」
「でも!」

 追い詰められている状況によって、サナが抱えていた感情が爆発する。
 それは総意であり、彼女の言い分は正しい。
 しかしそれを嘘と証明出来なければ、意味はない。
 嘆いている様子から相手の状況を察したへーネルはほくそ笑み、証言者達は各々違う感情が現れている。
 一人はへーネル同様東達を見て喜び、一人は騙した事へと罪悪感を抱き、一人は嘘がバレない事を神に祈っていた。
 そんな三人が一同に感じたのは、安堵であった。

「サナの気持ちも分かる。でも、今はどうするかを考えましょう?」
「でも、解決出来る案が思いつかないから困ってるんでしょ ︎」

 サナにしては久しぶりの感情任せの発言である。
 しかしそれだけ彼女も焦っているのだ。

「証言だって、私達があの場にいたのに誰も彼女がいた事に気がつけなかったのよ⁈ どう考えても嘘でしょ⁈」
「お姉ちゃん、落ち着いて。私達も近くにフェーネさんがいた事に気がつけなかったんだから、そういう事もあるよ」
「ニーナ! あんた、あんな嘘を信じているのっ⁈」
「信じてないよ! でも、魔道具でもフェーネさんの能力でも証明出来なかったんだよ? だから今は落ち着いて後一回の魔道具でどうやって切り抜けるか考えよう」
「......ごめんなさい。つい、我を忘れたわ」

 ニーナに諭され、なんとか心を落ち着かせるサナ。

「それに、しても、あん、なめちゃ、くちゃ、な言いぶ、んなのに、なんで魔道、具でしょ、う明出来な、かったん、だろ?」
「過剰に話してはいたけど、観ていたからっていうのが本当だからじゃないの?」

 ユキナの疑問にキリが自身の憶測を述べる。

「? ちょっと待ってくれ」

 しかしその会話に耳を傾けていた東が反応する。

「確かに過剰に話してはいたが、それで嘘って事になるのか? 事実を大きく言っただけなら、それが完全に嘘って事にはならなくないか?」
「......アズマさんが持ってきた真蒼偽紅の球がどの程度の嘘を見抜けるのか、にもよりますけど......」
「そもそも過剰に言うのって、嘘にならないの?」
「話の盛り方にもよるかと......アズマさんが言っているのは、色々と盛ってはいるものの話自体は変わっていないので、嘘ではない。で、合ってますか?」
「ああ。だから俺は過剰に言っている辺りは嘘とは捉えなかった。結果として、あの茶髪の証言者は初めから全部を観ていたって考えてたんだ」
「最初から......私は最後のその部分以外全てが嘘だと思っていました。なので観ていたのは最後だけ、だと」
「私もそう考えてたわ」
「私も」
「わた、しも」

 ニーナの考えにサナ、キリ、ユキナと次々に同意していく。




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