異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

期待外れ、そして少女ら

 
 東はその映像を見て、ユキナを攫ったあいつらが逃走する際に使っていた馬は、ここから調達したのだと察した。
 映像はそんな言い合いをしていた彼らの店の前を過ぎ、彼女が主人の店へと入って行く。
 そこで能力が解かれる。

「以上が事件のあった日の様子です。あれ以降は、私は店から外へ出ていませんので、恐らくもう今回の件とは関係ないと思います」

 そう彼女は言い終え、再び周りに礼をして東達の後ろへと下がる。
 彼女の今の映像が証拠となる得る事を理解出来た者は、果たして何人か。

「(小僧がフェーネを使ってまで証明したかったのは、此方側の証言者の嘘を暴く事。しかし今の内容は、肝心の部分を直接見ていなかったのとあんな場所で眠ってしまったため音さえ聞いていないという無意味なもの。これではせいぜい此方の証言が少々過剰という事、それと仲間内で追い込んでのという証言のチグハグくらいしか示せん。まさかあの娘フェーネを無策で連れて来たのか? その能力だけを頼りに)」

 フェーネの能力によって一部の状況が明らかになったが、結果的には始めとほとんど何も変わっていない。
 東達の行動と持ち寄った物からそれまりに評価を感じていただけに、その後味の悪さの違和感を払拭出来ずにいた。

「(いや、あの時小僧はあれの能力を見て驚いていた。表情が変わるのを堪えた様子だったが、それくらい見破れる。となると何故フェーネを連れて来た? いよいよ説明がつかん)」

 もうどうしようもないだろうと判断し、思考を『何故東がフェーネを連れて来たのか』という疑問にシフトする。
 事実東は今の映像からどう打開するべきなのかを探っていた。
 その焦りの様子を見れば、誰だって手がない事は明らかだった。

「アズマ、さっきキリが言った様に落ち着いて! どこかに糸口はあるはずだから!」

 そんな思考の海に浸かり始めたサヘルを余所(よそ)に、再び話し合いを始める東達。
 しかし東の焦りは彼女らも窺え、全員から冷静さが失われ始めていた。
 そんな状況の中、彼を見兼ねたサナが根拠のない励ましの言葉を投げる。
 ニーナによって大まかな状況は知れているサナ達だが、打開策が簡単に思いつく事はなく、結果として出来たのは先程と同じ行為のみ。
 しかし焦りから思考がまとまらない状況の東には、届いている様で届いていなかった。
 彼もまた思考の海に沈んでいた。

「......サナ、ニーナ。わた、しが攫わ、れたと、き、その前、後で誰か、と戦っ、た?」

 ユキナがふとそんな問いを二人に投げかける。
 ニーナもまた打開策を考えていた所だったため、その質問で何を導こうとしているのか分からなかった。
 思考を巡らせながらも彼女質問の答えを頭の奥底から探る。

「確か......してない、だよね?帰って来るの早かったし」
「えーっと、ユキナが攫われた後......私が着いた時に、アズマとキリと合流して、すぐにアズマが行っちゃったから、確かしてない......はず。そうよね、キリ?」
「ええ。東に着いて来るなって言われたから、私達はそのまま宿へ向かったの。その間に誰かに襲われる事もなかったわ」

 曖昧になりかけていた記憶を各々蘇らせて答える。


「異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く