異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
話し合い、そして能力
時間も手もない小僧らは何かを話し合い始めた。
作戦があっての話し合いか、はたまた時間稼ぎの話し合いのフリか。
どちらにしても結果は同じ。
それに法生司長がどっち着かずに真っ当に役職を進めるつもりでいるのなら、そう長く話してもいられん。
せいぜい後数分といった所。
その程度ではどうしようもないだろう。
そう思っていると奴らの話の中へずっと端の方で公判の行方を見ていた娘が加わる。
短く切られ、整えられていないボサボサの白に近い緑髪。艶はないが一応水浴び程度はしているのか、垢などは見られない。
発育は悪く、細く枯れ枝の様な手脚に、赤切れを起こしている手。
曇った茶色の瞳は周りに怯え泳ぎ、唇も少しカサついており震えている。
そんな彼女が加わった事で、法廷外で公判を観ている野次馬共は興味津々で彼女に注目している。
中には眉を顰めている者もいる。
様子からして、多人数に見られている事に恐怖を抱いている様に見える。
格好などはこの国では珍しくない訳ではあるが、明らかに普通の市民よりも貧相に映る。
つまり奴隷である可能性が高い。
そしてそれはこの国では珍しくない。何せ、この国の人口の約四割は占めている。
これは他国の数倍から数十倍の比率である。
しかしその大半を所有しているのが、貴族だ。
商人もある程度は所持しているが、貴族と比べると雲泥の差がある。
そんな奴隷風情が公判の法廷内にいる事はあり得ない。まず、入れる事自体がない。
あの小僧はベガの住まいを置いているはず。あの国では奴隷の売買は禁止。
むろん所持も問題だ。
隠れて持っているとしてもこの場に無意味に連れて来る必要はない。
身の回りの世話や性処理用であったとしても法廷内に入れる意味はなし。
では何のためだ?あんな娘に何が出来る?
あんな............いや、見覚えがある顔だ。以前に何かの報告書に上がっていた。
なんの報告書だったか............クソ、思い出せん!
せめて名前さえ分かれば思い出せるやもしれんが、ここからでは少し遠く、奴らの言葉も所々しか聞き取れん。
「.....から.....フェーネ.......して.....ださい」
「わか.....た......いま...」
フェーネ?小僧の話し声に耳を傾ければ、そんな言葉が聞こえた。
奴隷...公判......フェーネ............!思い出したぞ!
あの娘!『見覚えのフェーネ』か!
以前厄介な人物として貴族や商人の間で名が上がった。
そしてそれは今もその奴隷を使う商人と共に知られている。
彼女がそう呼ばれる由来は、彼女の能力が“見た事を全て投影する”能力を所持しているからだ。
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