異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
最後の証言者、そして困惑
そして最後の一人が手を挙げる。
年齢はキリと同じくらいだろうか?少々怯えた様子で、目をキョロキョロさせている少女。
栗色の髪をサイドテールにしている彼女が、最後の証言を語る。
「あの...その、わ、わた......私の兄が、へーネルさんに頼まれ、て、彼を助けに行ったんです。そ、で...それで、気になって家から覗いていたんです。そしたらそこの、そこの男と女達が、次々と切っていったんです。笑顔で!逃げようとした人を笑顔で!腕が切り落とされて、血が噴き出して......ああ、ああぁっ!みんな、みんな......お兄ちゃんも............だけど、私は確かに見た!そこの被告が、頸鉄鎖(ペンダント)を持っていた所を!だから、絶対にその人達を、そいつらを罰して下さい!」
涙を流しながら訴える少女。
その様は、先ほどのへーネルと同じではあるものの、彼女の瞳からは本当の怨念が感じられる。
これが演技と思えない。しかしこっちだって憶えがない。
「なるほど、よく分かりました......皆さん、今の話は一旦、頭の隅に置いておいて下さい。次に今回の件ですが、私達が被告人から聞いた話では“ズボンから出てきたのは指輪”との事です」
ん?待って、だってそれって......ああ、そうだ。リリーを連れて行く際に指名手配っていうのが嘘だったてだけで、リリーが盗ったとされたのは別の話だった。
あの時リリーのポッケから出てきたのは『指輪』。そして今回の件では『頸鉄鎖(ペンダント)』。
あの男に騙されたという想いから、その事実が頭から抜け落ちてしまっていた。
「それがどうした?被告がそう言おうが、それが事実であるとどう証明する?所詮そんな事は、被告が助かるための言い訳に過ぎん。助かりたいのなら、それが事実である根拠(・・)を示す事だな」
さっきの仕返しと言わんばかりだな。
「生憎と、その指輪は貴方の部下が持って行ったのでありません」
ニーナがあの時の事実を素直に告げる。
それをどう捉えたのか、サヘルと特にへーネルの口角が吊り上げる。
「しかし今の証言の中では、“今回盗まれた物が何か”は分かりません」
「......はあ?」
全員が彼女の言っている意味が理解出来ず、困惑する。
「ニーナ、それはさっき証言されたじゃないか」
俺も困惑して、彼女に尋ねる。
「ダァッ!はっはっはっ!やはり所詮は獣か。自身で聞いた事も理解出来ていないか!はっはっはっ」
「話を、理解......出来ない。くくく、同じ言語を使えても、理解出来なきゃ、意味ねーよなー!あーっ、はっはっはっはっ」
彼女の発言に、彼らは堪え切れず声を上げて笑う。
「ですから、その方が言ったは“最後に被告が持っていた”というだけです。それが今回の盗まれた物だという証明は、まだされていません」
ニーナは落ち着いた声で答える。
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