異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

違和感、そして励まし

 
 走らせた氷に巻き込まれ、身体の半分以上が氷に覆われているバキュースライム。
 その氷からスライムを取り出す。

「!」

 少し、溶けてる。
 スライムを覆っている氷が溶け始めている。熱か?
『ウォーミル』で完全に溶かし、手に持つ。触れている感じでは、熱を持っているようには思えない。
 どちらかといえば冷たい。そしてぷよぷよしている。
 地球にあったおもちゃのスライムとは全然違うな.....っと違う、違う。
 今はこっちに集中しなくては。

「これはバキュースライムと言う。立派な魔獣だ」

 そう言うとへーネルが僅かに表情を変えた。法官とサヘル、裁判長も変わりないのはやはりであり、さすがだな。
 ただまだ核心には迫らない。
 魔獣を使ったというだけでは、シラを切られて終わりだ。だからもう少し情報集めだ。

「さて、まだ聞きたいことがある。もちろん答えてもらうぞ」

 先のことがあるためか断ろうとする気配はない。
 下手に断れば、周りにいる民衆たちからさっきのバキュースライムのことを認め逃げたと言われる。
 ただ、貴族が相手なため大きく言い広められないだろうけど、心象は悪くなるだろう。
 気にしない相手なら、本当に気しない。
 しかしあの男は、奴隷を売買しているはず。つまりそれは少なからず痛手になる。

「待たせたニーナ。頼む」
「は、はい...!」

 バトンをニーナに渡す。
 しかし彼女はどこかたじろいでいるように感じる。

「え...えっと......その──」

 緊張からか言い淀む。それから周りをチラチラと見ている。
 最近はあまりなかったが、そういえば彼女は人見知りだったな。
 周りにはかなり人がいるから、緊張してしまうのも無理がな......あ、いや違う。さっき周りから獣人に対する批判の声が上がった。
 それが自身に向けられるのを恐れているのだろう。
 姉に対する批判には立ち向かおうとしていたのにな。まあ、そこが彼女の良い所なのだが。

「ニーナ。がん、ばって!」

 それを察したのか、ユキナが励ましの言葉を送る。

「周りは気にしなくは良いから」
「そうよ。アイツらが何言われてるか分かんないけど、気にしなくて良いわよ。それでも気にするなら、私が全員黙らせるから!」

 続いてキリとサナも励ます。
 サナ、気持ちは分かるけどさすがに法廷中に暴れないでくれよ。せめて、これ以上は何も言えないようにするくらいなら良いけど。

「皆さん...お姉ちゃん......うん!頑張る!」

 それに背中を押してもらえたようで、奮い立つ。
 そんな彼女からは先ほどまで怯えていた様子が消え、睨む様にサヘルの方を向く。


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