異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
殺戮、そして火種
その一瞬の間に起こった事に理解が追いついていない少女を横に、男は店内に残っていた奴隷達を次々と店主同様首を刎ねて行く。
彼女らは悲鳴を上げる最中や逃げようと背を向けた途端に倒れていく。
逆に腰を抜かして怯えている子は狙われていない。
少女もまた、その凄惨な光景に動けないでいた。
「(一体....一体なんなの?)」
男がなんの目的があるのか?何故皆を殺しているのか?フェーネを求めていたという事はやはり貴族の差し金か?
自身でそれの回答を求める事は出来ず、ただただ疑問だけが湧き出てくる。
そうこうしているうちに結局全員殺し終えた様で、黒刃ナイフの血を拭っている。
「.....」
「安心しろ。貴様の能力は見込まれている。殺しはせんが、暴れるようなら....分かるな?」
フード越しで見えないがこちらを睨んでいるらしく、脅しとばかりに黒刃ナイフをチラつかせる。
少女は数秒考え込んでから、倒れ伏す店主を見下ろす。
「ごめん....」
小声で彼女に謝罪をし、男の方へと歩み寄る。
彼は最期に店の中を見回してから扉へと向かう。
そうして彼は少女にさっさと出るように促す。彼女もそれに従いそそくさと外に出る。
少女が店を出た瞬間、男が店内に何かを投げ入れたのを見逃さなかった。
それが過去に盗みをしていた時に身につけた洞察力が衰えていないが故であった。
しかしそれがなんなのかまでは捉えきれなかったため、確認しようと動いたがそれよりも先に男によって扉を閉められてしまった。
「ど──」
「......」
直ぐに言葉を投げかけようとしたが、彼の目を見てそれが止まる。
フード越しから覗いた彼の真っ赤な瞳に呑まれ黙らされた。
それは店主の店の奴隷達を殺し、恐怖に囚われていたはずの自分が思わず綺麗だなっと思えてしまう程、綺麗だった。
彼女が黙ったのが果たして彼の瞳に魅入られたからなのか、それとも彼の放つ殺気に怖気づいたためなのか。
それは少女自身にも判別出来ていない事だった。
黙った少女が動こうとしない事を確認した男は、スタスタと歩き始めた。
少女も後に続こうとして立ち止まる。
「......」
そうして振り返って扉の取っ手を凝視するが、やがてそれを止めて男の後を追う。
彼女が彼の後に続いてから数分後に先程までいた店が火事になったのを知ったのは、店が燃え尽きる少し前の時だった。
また、その時間差から扉を閉じられた際に投げ入れられたのが、火種であった事を察した。
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