異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

獲得、そして内容

 
「えっと、ならこの場合どうなるんだ?」
「フェーネが欲しいんだろう?良いさ、持って行きな」
「.....面倒ごとに巻き込まれるのは嫌って言ってなかったか?」
「そりゃ嫌さ。ただそれは嫌なだけ。商談じゃあ、面倒事を引く事もザラさ。それをしっかり見抜けなけりゃ、相手の思う壺になっちまう」

 その言葉は少し刺さる物がある。

「本当は関わる気なんてなかったんだけど。さっきの坊やの考え、悪い事だけど嫌いじゃないよ」

 店主は人当たりの良さそうな笑みを浮かべる。
 参ったな、これは....

「はは、それはありがたい。こっちとしては喜んで」
「よし!それじゃあ、色々手続きを....っと言いたいが、もう時間もないだろ?今はフェーネを好きに使って良いから。あ、でも───」

 彼女は途中で言葉を止めて、店の方から一枚の紙を持ってきた。
 そしてその紙に何かをスラスラと書いていく。

「後で金返せって言われても困るから、これだけは書いてもらおうか」

 そう言って彼女が渡してきた紙には、返却及び後の手続きをすること。それとフェーネさんを買ったことを口外しないことという旨が書かれている。
 まあ、誓約書くらいは書かせるか。
 ちゃんと可笑しな部分がないかをもう一度調べてから、名を記入する。

「.....良し。それじゃあ、持ってって良いよ」
「ああ」

 店主に促され、フェーネさんを連れて店を出る。

「ありがとう」

 最後に振り返ってそう伝えると、彼女は笑って手を振って見送ってくれた。

 __________
 _______

 東達が店を出て行き、静まり返っている中背後から声が上がる。

「良かったの?」

 店主が振り返ればそこには灰色のカールのかかったロングヘアが背中半くらいまであり、シンプルなデザインの深緑色のチュニックと水色のジーパンを着た少女が立っている。

「何が?」
「フェーネ。あの子の能力、決行便利だったのに」
「まあ、少し惜しいと思ってるよ。でもあの子はそろそろ手放そうって思ってた所だし、丁度良いからやったのさ」
「確かに鬱陶しがられたな」

 フェーネの能力は便利だ。店を構えている身としては、必要不可欠と言っても良い程に。
 しかしそれ故にやっかみも受けていた。客からも貴族からも。
 そこへ何も知らない者が大金を出すと言うのだから乗らない手はない。
 当然ながら対策として口止めはしたが、そんなもの毛程の役にも立たない誓いだ。時期に貴族には知られる所だろう。
 そうなれば今以上に好き勝手動かれて、店としても不利益を被る。
 かと言って売らないという選択をしていてもその内消されていた。彼女とて、貴族を相手に全力で守る程彼女に価値を見出してはいない。
 所詮は良いように利用するための『道具』に過ぎなかったのだ。最も良い価値で売れる時に売るのが商人である。

「(商談じゃあ面倒事をしっかり見抜けなけりゃ、相手の思う壺。良い勉強になったか?坊や)」

 少女から視線を外し、首だけ扉の方を向いて今は居ない東に向かって彼女は悪い笑みを浮かべて囁く。



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