異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

あの方、そして意欲

 
 .....よし。黙っておこう。
 今の状況だとまだ私がアズマに遭っていたことはバレていない。なので遭っていたという事実を隠していこう。
 それにしても一体彼はどういう男だったのかしら?話を聞いている感じでは、変態女の新しいオモチャってところだと思うけど。
 それにあの強烈な臭い。あれは......

「っと、彼の事を話していて思い出したわ。“赤”がハメに行ったってどういう......チッ」

 変態女が丁度良い話を始めようとしたが、途中でつまらなさそうな表情を浮かべた。あまつさえ舌打ち。
 その理由は、彼女のその行動の数十秒後に理解出来た。

「......戻った」
「「「!」」」

 部屋にある老人が入ってきた。
 さほど長くない真っ白な髪。不純な色など混ざっていない白髪。髭は生えていないが顔つきのせいか威厳の様なものを感じさせる。
 その眼光の鋭さは少々恐怖を覚える程鋭く、それでいて何処か暗く儚い。
 土色よりもさらに暗い、煙草色の瞳。
 背丈は高く、アズマよりやや高いだろう。そんな彼のガタイははっきりとは分からないが、ムキムキではないのは確か。
 そんな彼が近づいて来ていたことに気づけなかった。
 表情から察するに変態女とバジル以外は気がつけていなかった。
 それだけ彼の気配が感じ取れなかったのだ。
 ついでに老人の姿を見た途端に、オーメンは上流貴族さながらの優雅な礼をする。その彼の背後では、ずっと頭を下げ続けている“青”のボス。
 老人は私の横を通り抜け、奥の方を目指す。変態女らが座るソファーの先に、彼専用の椅子があるからだ。
 そんな彼の歩みは見事な物だ。全くブレることなく歩いているだけでなく、足音も全くしない。
 まるで滑っているかの様な洗礼された動き。
 これだけでも彼がどれ程の人物なのかが分かるだろう。
 そんな老人こそが、彼女らが言っていた「あの方」である。

「報告を」

 彼が厳かに言う。

 ______________
 __________

 ゲートを潜り、アンタレス王国に到着する。

「さて、あとは出来れば証言とかを集めたいけど...」

 元から考えていたことだが、正直厳しい。
 リリーと会って七、いや八ヶ月くらいは経つはず。それだけ前のことを憶えている人が何人いることか。
 ましてや関わったことがない少女のことを細かに憶えているだろうか?
 この世界に防犯カメラがあればと思ってしまう。
 そんなこと叶うはずないのだから、とりあえず手当たり次第聞き込むか。

「そうね。手当たり次第訊きに行きましょうか」
「見つけられるよう頑張りましょう!」
「またニ、三で分、かれる?」
「...いや考えていたんだが、今回俺は一人で訊き回ろうって。だからそっちは固まって動いて欲しい」

 その提案に皆の表情が曇る。
 理由は以前この国に来た時に起こったことがまた起こらないか心配だからだ。
 彼女らには少々不自由だろうし、正直効率は悪い。
 それでももうあんな目には遭ってほしくない。

「それじゃあ、私達はあっちから聞いて回りましょうか」

 キリがそう先導して街の右中央の方を目指す。
 皆もそれに賛同し、彼女について行く。

「....見つかると、良いな」

 っと、望みの薄いことで少し意欲が傾いてしまっているようだ。
 頑張って見つけよう!



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